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俺が気絶している間
武田は、魔物を刈り尽くし。王都に帰った。
スゴかったらしい。
「いててて」
「起きたよ!」
「「「サイトウさん!」」」
俺が、面倒をみて、みられた関係の若い冒険者たちが看病してくれた。
「すまねえ。俺、あんな強い奴に絡むところを、助けてくれたんだな。感謝するぜ。兄貴と呼ばせてくれ」
ゴランだ。武田の銃撃をみて、腰を抜かしたらしい。
兄貴と言っても、ヒゲモジャで、俺よりも年上だろう。
「俺、今年24歳だ」
「うっせー、何でだよ!」
それから、一年後、残念ながら、王国中に武田君、敗北の報が届いた。
武田君は、一人、車で逃げ出し。城に帰らず野良勇者になったそうだ。
まあ、俺には関係ないね。仕事をするだけだ。
いや、一応、対銃戦闘を考えるか。
「ゴラン、奴隷市場・・・に案内してくれ」
「兄貴!性処理奴隷か?見に行こうぜ」
「違うわ!」
奴隷、この世界では、奴隷がいる。
日本人の俺からしたら、奴隷は倫理的にアウトだ。しかも、一人を、一生面倒を見なくてはならない。
あったな。ローマ人の奴隷の躾け方を解説した本が、妙に現代社会でも通じるとか話題になったな。嫌な話だ。
モチベーションを高め。如何に働かせるか。
俺の考えた対銃戦闘は、最悪の場合を想定している。
そう、奴隷を盾に、銃弾を防ぐ方法だ。隷属の首輪で、主人に逆らえないそうだ。
もし、戦うとしたら、数十人を並べて、武田君の心を削る。なんて、外道の作戦を思い付く。
俺が魔王軍なら、絶対に、死霊を使う。
俺がこの世界で、奴隷を買わないのは、いくつか理由がある。
復刻版ルーツというアメリカのテレビドラマを見た。
黒人が、自分のルーツを調べて、本を出版したら、ベストセラーになった。1970年代にドラマになったが、更に時代考証を近年の研究成果に合わせて、新しくしたドラマだ。
ポリコレ意識が今よりも薄い時代に作られた。
あれは、いろいろ衝撃だ。
解放奴隷が、奴隷を所持していたり。
黒人の奴隷メイドが、主人の皿に、虫を盛る。
その光景を目の当たりにした解放奴隷が、
『なんと、勇敢なご婦人だ』と恋に落ちる。
それほど、奴隷の恨みは深いのだ。
現代日本人の感覚では、分からないことがある。
まあ、いいか。
「競りは終わった。売れ残りだ。あんたら、冒険者かい?」
「!」
うわ。あの目と同じだ。
奴隷を見て、驚愕した。ただ、見ている。そう表現しか出来なかった。
過去、体験したのだ。
☆回想
ある発展途上国に、仕事で滞在したことがある。現地の人と仲良くなった。
ある日、娘を紹介された。
『どうだい。私の娘だ。もうすぐ16歳だ。妻にしてくれ』
『嘘だろ。どう見ても、もっと下だろ。それに俺は国に帰る身だ』
『ゲンチツマでもいいぞ』
現地妻、何故、その日本語を知っている?その娘は、ただ、ジィとみていた。笑うでもなく、ただ、凝視だ。
これからの人生どうなるか。他人に委ねるしかない身上がヒシヒシ伝わってきた。
即答で断った。
その後、その子はどうなったか分からない。
娘も嘘かもしれない。
分かっていたけど、奴隷を戦闘で使うのはやめよう。
・・・・・・
「兄貴、どうしたんで」
「いや、もういいや。楽しんでくれ」
「買えないから、俺もいいや」
「なんでえ、冷やかしかよ」
しばらくして、貴族がやって来た。
騎士団長だと言う。
金ピカの鎧だ。
「サトーはいるか?」
「いねえよ」
名前を間違えている。
構わずに、口上を述べやがる。
「お前は、一応、タケダ殿の敗北を予見した。だから、助言をすることを許す」
「はあ、状況が分からなければ、助言は出来ないよ」
やっぱり来たか。
何でも、武田は城に戻らずに、野良勇者になって、盗賊団50余りの用心棒になった。
王都から、馬車で20日ほど離れたドク伯爵領を占拠した。
なるほど、腐っても軍隊だ。作戦を立てるために、情報を集めているのか。
「敗北はしたが、銃は有用な兵器だ」
あ、武田を城に囲って、銃だけを出してもらうのね。そして、子供を作るように、女をあてがって、
まるで、奴隷じゃないか?
これは、流れは止められないな。
「じゃあ、条件がある。金をくれ」
「き、貴様、栄光あるホラムド陛下の覚えめでたくなる機会だぞ!」
「金で、俺の助言じゃなくすることが出来るじゃん」
チャリン♩
金貨の入った袋を投げて来た。
まあ、いいか。
「武田と銃を持った50人を倒すには、不意を突くしかないよ。おだてて、仲良くしたいと言って、高級な酒をドンドン運ばせて、宴会を始めたら、チャンスだ。寝静まったら、外に配置した兵に、武田君以外を殺せば?犠牲は最小限ですむと思うよ。見張りに酒を勧めることも忘れずに」
「チィ、損したわ。魔族に負けたのだ。我らだって出来る」
とブツブツ言って、去った。
その後、騎士団敗北の報が届く。
「何でも、昼間に襲ったそうよ」
「密集隊形に、銃弾が降り注いで・・・」
「怖いわ」
この国の一個軍、2000人が、全滅したそうだ。
武田君の懸賞金はあがる。
2000名で突撃、それりゃ、負けるよ。
次に来たのは、高位冒険者たちだ。
今度は、領主依頼だ。
領地奪還をしたら、報奨金が出る。
令嬢と結婚し、婿になれるそうだ。
これまた、いけ好かない冒険者が来た。
「A級魔法剣士のロバーツだ。不意を突くんだって、まあ、蛮族相手だから、それにするよ。くだらないアイデアだが、何かアドバイスをくれ」
チャリン♩
古今東西調べて見ると、同じ民族だと、正々堂々が良い。異民族相手だと、卑怯な手を使っても良い感じだ。
ヤマトタケルが、クマソを倒すときに、女装して侵入し、酒に酔わせて、討ち取った神話がある。当時、九州は、機内から見て、異民族だったのだろうな。
やはり、俺たち日本人は、野蛮人扱いか。しょうがない。
まあ、それはいい。
「今は、やめておいた方が良いよ。騎士団の襲撃で、警戒をしているだろう。例えば、一人気の利いた奴がいれば、連射が出来て、大損害が出るよ」
「なら、夜襲だ!」
「やめておけ、絶対に失敗する!夜襲って、松明をたくだろう」
「当たり前だが」
「夜襲って、この世界の夜襲は、松明をたいて、鬨の声を上げて、驚かせるのだろう。
それじゃ、不意を突くことにならない」
「馬鹿か?こちらも見えないだろう?」
「向こうは暗視眼鏡を持っている可能性がある。なら、せめて、夜でも目を慣らす方法があるよ。それは、金貨50枚で訓練してあげるよ」
「金が勿体ない!」
と助言をしたが、当ギルド中の高位冒険者を連れて、討伐に向かった。
「兄貴、お別れだ」
「ゴラン・・・」
奴も、一緒に、出征した。
近代戦は、勿論、松明をたかない。
暗視眼鏡が普及する前の古い夜戦では、地に伏せ。山の稜線を見て、暗闇に慣れる。
これは、大規模な夜戦が行われるようになってから、生まれた技法だ。
冒険者クランも失敗した報が届く。
そして、もう、ドグ伯爵領は、王国内で治外法権状態になった。
農民達は、税率8割を取られ、女は、白昼堂々陵辱され、地獄のようになった。
俺、知らんがな。召喚したのはそっちの責任だろう。助言を聞かなかったくせに、
王国軍は、魔王軍と一触即発の状態だ。全軍を討伐に向けることは出来ない。
武田とその一党の討伐には懸賞金がかかり。武田を生きたまま捕らえたら、金貨一万枚(10億円)まで膨れ上がった。これ、大型ドラゴンと同じだよ。
死んだら、金貨1000枚だ。
それでも良い金額だ。
俺は、自分の仕事をするだけだ。
文字の教本や、計算の方法を書いた本を作って、コピーをして売っている。
冒険者の若い子たちは、読み書き計算が出来るようになった。
だから、需要を外に求めたのだ。
コピーの技能が貴重で、商業ギルドの契約書の副本作成の依頼などが来るようになった。
まだ、この国の印刷は、未発達だ。魔道士が、城でやっているくらいだ。
何とか暮らしていける。それも、平和だったらだ。
コピーのレベルも上がった。3Dとか出来ないかな。
ピコン♩
新たなスキルが授かった。
「あれ、このスキルは・・・」
トントン!
「入るね」
と言った矢先、宿にゾロゾロと女の子たちが入って来た。
皆、若い。各冒険者パーティーの華だ。選抜されて来たな。
何かある。
最後までお読み頂き有難うございました。