記憶さえ戻れば……圧倒的戦力差!
にこりと微笑み武器を懐にしまうと、川村に近づいて。
「私が敵じゃなくて、よかったって思わなかった?」
「正解でござる」
「うふ。いいのよ、怒らないから。お疲れ様」
川村の頭に手をのせて軽く撫でる。
「拙者は童ではござらぬが」
ぷうっと頬を膨らませて川村が抗議をすると、メープルはクスクス笑い。
「ごめんなさいね。あなたを見ているとつい、撫でたくなっちゃって」
「拙者にもう少し上背があれば、立場が違ったかもしれないでござるな」
「それもそうね」
ふたりして吹き出し、戦闘を称えていると、美琴から念で連絡が入る。
『メープルさん、救援お願いします! こちらでは抑えきれません!』
『わかったわ。すぐ行く』
念を切って、虚空に世界各国の暗黒星団の勢力を映し出し、息を飲む。
「嘘でしょう……」
メープルたちが戦闘をしている間にサイたちは世界各地で猛威を振るい、軍隊を蹴散らし、世界の国の半分近くを制圧していた。
惨状を見て、メープルは拳を固く握って身体を震わせた。
もしも記憶にないメンバーがいたら、これほど追い詰められることはなかった。
スター流は確かに少数精鋭だが、それを補って余りある戦力があった。
だが、今はそれが半分以下になっている。
誰なのかは思い出せないが、消えたメンバーはそれほど大事な戦力なのだ。
「思い出すことができれば活路を見いだせるのに……ッ」
手がかかりが何もない以上、今ある戦力で最善を尽くすしかない。
メープルはすぐにカイザーに要請を頼んだ。
『カイザー。あなたの力が必要なの。協力していただけないかしら』
『……それほど危機的状況なのか』
『そうよ。戦力がどうしようもないほど足りないの。ごめんなさい』
メープルはいつもより低めの声で謝り、念を終了する。
「メープル殿。カイザー殿の返事はどのようなものでござったか」
「OKよ」
「……」
ふたりは肩を落として沈黙する。
カイザーにだけは頼りたくなかったのだ。