恐怖の演奏会!メープルの魔笛をお聴きあれ!
メープルの持つ銀の横笛『魔笛』は聴いたものを自由に操る効果を持つ。
耳栓などをしても脳に直接影響するので意味はない。
音波攻撃であるため範囲は広大で、防ぐ術はない。
美琴もかつてこの笛の音に散々に苦しめられたことがある。
淡い金髪をなびかせ、フルートを口に含み、美しい音色を奏でる。
おおよそ戦場にそぐわない光景に見えるが、奏でられた途端、サイたちに異変が起きた。自らの意思に関係なくバイクが暴走をはじめ、あちらこちらで衝突、同士討ちがはじまった。
衝突するたび花火のように爆発していくサイたち。
攻撃対象であるメープルには全く近づくことはできず、自滅していく。
何百ものサイ型宇宙人たちが目の前で消滅していく様に、川村は圧倒されていた。
目を見開き呆然とする他はない。
かつて、スター流を震撼させた少女。
両想いの掟にただひとり抗い続け、蛇蝎のごとく流派を嫌い続けたメープル。
その彼女が今、スター流のために戦ってくれている。
演奏が終了し、廃墟と化した街を眺めてから、メープルは振り返った。
金の髪が夕日に照らされ、眩いばかりに輝いている。
「とりあえず、少しは落ち着いたみたいね。一旦は帰るとしましょう」