攻防一体の型
敵は浮遊バイクに乗って攻めてくる。
バイクは小回りが利くので攻撃がヒットしづらく速度も相当なものがあり、暴走族なだけはありバイクの扱いに長けている。片手を離したままで運転し、光線銃を向けてきたではないか。
一斉に放たれる光の帯を川村は斬心刀で弾き続けるのだが、人数が圧倒的なために攻撃が止まることはない。
四方八方から撃たれ続けるうちに、川村にも疲労が蓄積してきた。
光線が川村の右肩やわき腹を貫き、流血させていく。
このまま防戦していても、いずれは力尽きる。
ならばどうするか。
攻防一体の型を使うしかない。
川村は一旦刀を鞘に納めて目を閉じた。
サイ暴走族の一体が嘲笑して言った。
「神様にでもお祈りしてるのか」
「ご名答。お主らの魂が天に還るように」
「ふざけやがってえええっ」
激高し光線の引き金を引いた途端、彼らの命は切れた。
川村はその場で猛回転して竜巻を引き起こし、光線を全て吹き飛ばした。
一瞬の隙を突き、斬撃。
川村ほどの手練れになれば、わずかな間でも数十人は切り伏せることができる。
バイクごと切断され、光となって消滅していくサイ軍団。
まだ迫りくる者たちに刃の先端を向けて言った。
「お主ら、まだ続けるつもりか」
「当たり前よ。俺たち暗黒星団が地球を支配するまでなあッ」
ウィーリーで突撃してくる一体を刃で受け止める。
刃とバイクのタイヤが激突し摩擦熱が発生したが、川村は難なく切り捨てた。
「のう。メープル殿、さきほどから疑問に思っていたのでござるが」
戦いながら、川村が問いかけた。
メープルは突撃してきた族の首元にラリアートを叩きつけ、吹き飛ばす。
「何故にお主は得意のフルートを使わぬ」
「とっておきはもう少し温存しておきたかったのだけれど、仕方ないわね。
今、披露してあげるわよ」
メープルはフッと笑って懐から愛用の得物である『魔笛』を取り出した。
「サイの暴走族さんたち。素敵な音色はいかがかしら?」