川村の暴走剣技
アメリカのニューヨークではアメリカを担当するロディが二挺拳銃を武器にサイ軍団に抵抗していたが、いかんせん、武器が古い。
いかに早撃ちといえど、サイ暴走族の装甲は固く、弾が効かない。
装填して撃ちまくるロディだが、暴走族はバイクのまま猛突進し、ビルにたたきつけられてしまう。
ビルの壁とバイクにサンドイッチされて、ロディはボロ切れのように地面に落下し、動かなくなってしまった。
倒れたロディのもとへ川村が駆け付け介抱するが、ロディは意識を失っていた。
川村は唇をかみしめ言った。
「いつぞやお主に助けられたことがあった。その借りを返すでござる!」
斬心刀を鞘から引き抜き、力強く構える。眉間に皺を寄せ、猫目をランランと輝かせた姿は妖猫そのものだ。
小さな牙の生えた口と真っ赤な舌をのぞかせ、サイ宇宙人たちに「シャーッ」と威嚇する。完全に本気モードだ。
突撃してきたクロサイ宇宙人の首を斬心刀で刎ね、返す刀で別のサイの胴を横一文字、続いて跳躍し、一刀両断してしまった。
装甲が強固といえども川村の斬心刀の前では薄いチーズも同然だ。
旋回し、数体のサイ族の首を斬り落とし、向かってきた連中も一太刀で倒してのける。
目にも止まらぬ本気の斬撃に、メープルは喉を鳴らし、汗を流していた。
先ほどの美味しそうにハンバーガーを食べていた姿からは想像もできぬ豹変ぶり。
仮にも幕末の世に人斬りを夜ごとに繰り返し『猫獣人』『白猫侍』と戦慄させたことだけはある。
ビルの壁を伝って駆け抜け、サイの背に右袈裟斬りを浴びせた。
幾度もサイを切り捨て着物や肌が返り血で朱に染まっていく。
妖しい殺気である。
「川村君、落ち着きなさい」
川村のただならぬ様子に怯えの色はありながらも、適格に指示を飛ばす。
怒りに乗っ取られてしまえば判断能力を失い、敗北に直結する。
殺気立った目で一瞥した川村だが「フーッ、フーッ」と荒い呼吸を繰り返し、どうにか平静に戻ることができた。
「すまぬ、メープル殿」
「いいのよ。それより今からは光の刃でお願いできるかしら?」
「心得たでござる!」
川村は分銅の一撃を背面飛びでかわし、落下しながら太刀を構えて斬撃を撃つ。
斬撃波は強襲するサイ軍団に波のように広がっていき、一瞬で彼らの姿は黄色い粒子となって消滅した。
斬心刀に斬れぬものはない。
微妙な調節によって切れ味を変化させ、無敵の剣技が生まれる。
サイ軍団の肉体を切断し、魂を天へと送ったのである。
チャキンと金属音を鳴らし、愛刃を収納した。
深く呼吸を吐き出し、額の汗をぬぐってメープルにふり返る。
「どうにか終わったようでござるな。さて、ロディ殿を早く運び込まねば」
「まだ、終わりじゃないわよ」
メープルが真剣な眼差しで指さす先には、大空から開かれた異空間から無数の暴走族軍団が現れていた。