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川村猫衛門

メープルはファーストフード店で川村猫衛門と待ち合わせをして、彼から情報を聞き出してみることにした。


件の人物が誰だったのか思い出せないので、メンバーと話せば何かヒントをつかめるかもしれないと考えたのだ。


サラサラの黒髪をポニーテールにし、ぱっちりとした大きな瞳に長いまつげ、一見すると女子と思えるほどに整った顔立ちをした川村猫衛門は遅刻することなく、約束の場所へと現れた。


黒い袴に足袋という侍を彷彿とさせる恰好である。


腰には愛刀『斬心刀』を帯刀しているが、街ではコスプレとしか思われないか、警察関係者からはスター流ということで不問とされている。



「美味でござるなぁ」


感嘆符を言いながら注文したフィッシュバーガーを頬張っていく。


メープルの奢りということもあって遠慮する素振りは見せず、これまでに十個ものハンバーガーが彼の胃袋に消えた。


それでも腹が膨れる様子はなく、この調子ではどれほど食べるかわからないとメープルは気づかれないように小さく嘆息を吐いた。


川村の両側頭部から生えた白い猫耳がピクピクと動き――彼は猫と人間の半獣人とも呼べる存在である。そのため猫耳と尾を持つ――は話を切り出した。


「お主には申し訳ないが、拙者も誰かいたような気がしつつも、思い出せんでござる」


「いいのよ。あなたも同じ症状が出てると知っただけでも収穫よ」


「もう一度、写真を見せてほしいのでござる」


川村に集合写真を手渡すと、彼の猫目がまん丸に見開かれた。


「メープル殿。これは拙者の推測でござるが、我らの記憶から消えたのはひとりだけではござらんよ」


「え?」


川村が写真を指差した箇所には空いている部分が四か所あった。


ジャドウとカイザーの間。


美琴の隣ふたつ分。


ムースとメープルの間だ。


「この余白、お主は不自然だとは思わぬか」


「確かに、このスペースに人がいても不思議じゃないわね……」


当初、メープルは存在が消えたのはひとりだと思い込んでいたが、実際は四人だったのではないか。


川村の仮説に過ぎないが、信憑性しんぴょうせいは高いと感じた。


メープルは桜色の唇に細い指先を当てて思案する。


空いている箇所には意味がある。


ひょっとするとそれぞれに近しい人物の可能性も見えてきた。


メープルは食後の緑茶を飲んでまったりとした気分でいる川村にパチリとウィンクをして。


「協力ありがとう。私は他を当たってみるわね」


「武運を祈るでござる」


こうして席を立とうと腰を浮かせた時、店に設置されているテレビから中継が映し出された。


ニューヨークの青空に無数の虫の大群のようなものが発生している。


「バッタかしら……」


虫の如き大群が大写しになると、川村もメープルもあっと息を飲んだ。


それはバッタの大群ではなく、サイの頭部に筋肉質の巨躯をした宇宙人たちが空飛ぶバイクに跨り、

数えきれないほどの人数で突撃してくる光景だった。


しばらく鳴りを済ませていた宇宙の巨悪、暗黒星団の部隊が飛来してきたのだ。


わずか十秒後には中継が切れ、大惨事が起きていることが予想された。


地球の平和を守るスター流としては見過ごすわけにはいかない。


「奴ら成敗致すでござる!」


「行くわよ、川村君」


会計を済ませ外へ出ると、大空を全速力で滑空し目的地へと向かった。

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