予想当たる
改めて、この領地がどれだけ脳筋か知ってもらおうと思う。
この領地は強力な魔物が跋扈している為、国最大の広大な土地に比べて人間が住めている土地はかなり少ない。
それも、年々の変動が激しいのである。魔物の縄張り争いに人間が加わっただけの昔の開拓者の方法を今も続いている。
こんな状況な為、農家や商人も農具や商売道具より武具に金を賭けるのである。それもまだ、商人はマシな方で、農家は素手でも農業出来るという力技を代々受け継いできた。
土地を耕すのに、某漫画のある亀の修行方法のように素手で耕している始末である。収穫も手刀ならな指刀で作物を収穫している。
何が言いたいかというとうちの農家は戦闘能力が高いのである。
「コーサ様、ボーアが研究用農地に侵入した為、始末したと担当農家から知らせが来ました。」
レスの報告を薬品を混ぜながらコーサは聞いていた。
「またか、やっぱりまだこっちの縄張りという情報が行き渡っていないようだな。」
活用出来る土地が少ないため、バラカイナ草の研究用の土地を新しく開拓を騎士団達がしてくれたのだが、その情報がまだ魔物達に伝達されていないようだ。
「ここはやっぱり殺気撒きをした方が良いのではないのですか?」
「うーん、もうすぐ魔物行進が始まるから。実力者は全員そっちに行ってるから。無理だね。」
レスの意見は一番簡単で効果的な方法なのだが、魔物行進が始まる為、行う事が不可能なのである。
殺気撒きとは毎日強者がその土地で殺気を撒き続けるマーキングの事である。それにより此処は人間の土地である事を魔物に教えるのである。
これを弱者が行うと奪える土地が近くにあると魔物に教えることになる為、逆効果になる上に少し上の強者でも同じような効果になってしまう。圧倒的な強者でないと効果がない方法であるが効果は覿面である
「魔物行進ですか、今回はどれくらいになりますかね。」
「さぁな、今年のダンジョンの様子から専門家は魔物行進6、危険度は4と予想しているけどハズレる可能性が高いね。」
魔物行進はこの土地では毎年起こるダンジョンから魔物が溢れ出る現象である。
魔物行進6というのはその魔物の多さを表していて、数が多いほどその規模は大きくなる。
危険度は魔物行進内にいる平均の魔物の強さの事を言っている。
因みに魔物行進6とはニ万〜四万程度の事を指す。危険度4は冒険者ギルドで言うAランクのことである。
「今回はそれなりですね。被害が少ないといいのですが。」
「そうだね。今年は二か所から魔物行進の兆候が見られるから。まだマシだね。」
東西南北にダンジョンがある土地である為、最大四か所から一切に魔物行進が起こったり、順々に起こったりするが、今回はまだ二か所からしか魔物行進の兆候が出ていない。
その為、まだ住民は余裕を感じていた。
「今年は間に合わないけど、二年後にはバラカイナ草の量産を進めたいね。」
「流石にそれは…………」
レスはコーサの頭脳を持ってしても無理だろうと思ったが、すでに最初の難関であるバラカイナ草の発芽をクリアをしていたことから。本当に実現させるのではないかと言う期待があった。
「まぁ、此処までは来れた人はいるみたいだけどね。」
過去の天才達もバラカイナ草の発芽に行き着いた者たちは存在したが、その後の成長が不可能だった。
何故か、知らないが枯れてしまうのである。
「此処から先はトライアンドエラーを繰り返して試しまくるしかない。」
バラカイナ草があればポーションの大量生産は可能になる。
今、巷に出回っている量産型のポーションはバラカイナ草を使ったポーションより圧倒的に劣っている代わりに生育が簡単な薬草を使っている。
コーサがこれに成功すれば一気に領内が潤うのである。
「コーサ様、当主様から自分用のポーションが欲しいとの事なのですが、どうしますか?」
「それ、ベロニカ姉さんからも言われたよ。まぁ母さんは今回の魔物行進と出産時期が被っているからね。出産後にさっさと行けるように欲しいんだろうね。」
コーサが前に使っていたポーションは自分の事を調べ尽くすことによって自分の回復能力を上げまくる物である。
その為、他人用を作るのはかなりしんどいのである。
「一応、そっちの方も進めているけど、あの人達は僕を過労死させるつもりかな?」
バラカイナ草の研究に他人用のポーション作りと大物が続く為、身体はともかく、子供の心に疲労が溜まっていた。
「そんなつもりはないと思いますが。」
「それはそうでしょう。この程度で死ぬ程柔じゃない事はわかっているよ。」
この程度の疲労で楽に死ねる身体ではない事がコーサにも分かっている為、息抜きをしないと目的が変わりそうなので少し身体を動かすことにした。
「レス、少し運動するから。相手をお願いね。」
「…………コーサ様の相手ですか?ベロニカ様に頼んだ方が良いのでは?」
自分では力不足だと思っているレスはコーサに提案する。
「嫌だよ。ベロニカ姉さん、いつも本気で倒しにくるからね。あの人に軽い運動を知らないようだ。」
前の試合を思い出して当分ベロニカと戦うのは嫌なのか、苦笑いを浮かべていた。
「だから、さっさと行くよ。」
「はい。」