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薬効

「この程度でバテましたか?ベロニカ姉さん。」


「はぁ、はぁ、舐めるなよ。まだまだこれからだ!」


 ベロニカはそう言うとコーサに拳を繰り出すが、最初から分かっていたコーサは余裕で避けて連撃に備えて距離もとっていた。


「逃げてないで…かかってきなさいよ!」


 避けて攻撃してこないコーサに違和感を感じたベロニカは挑発しながら言った。


「そんな事言ってカウンター狙いでしょう。僕が攻撃したらカウンターされるのは見えていますから。ベロニカ姉さんが疲れ果てるまで何もしませんよ。」


 身体能力と戦闘センスにおいてコーサより圧倒的なポテンシャルを持っているベロニカにこちらから仕掛けるのは愚策でしかなかった。

 コーサはベロニカに身体能力で唯一優っている持久力を活かして長期戦に持ち込む気でいた。


「アンタ、男らしくかかってきなさいよ!」


「男だから。何も考えず力だけで突貫すると思ったら間違いですよ。僕は騎士の人達とは違って脳筋ではないので。」


 観戦していたストロンガー家に仕える騎士達としては両者を応援したくあったが、今の発言でどうにかしてベロニカが勝って欲しいと思っていた。

 

「そんな事言っていたら騎士達から嫌われるわよ。」


「別に脳筋が悪いなんて言いませんよ。でも、弱い脳筋は簡単に死にます。そのおかげで強い脳筋が残る篩に今まではなっていましたが、これからはそれではダメになってきます。」


 コーサにはこれまでの手法では家の未来はないと考えている。


「そのために僕はこの薬を作りました。まだ弱い脳筋を再起不能や成長不足にしない為の薬。」


 コーサは懐から瓶を取り出してベロニカに見せた。


「それが筋肉維持薬ってわけ。」


「はい、そうですが、これだけならまだ力不足です。この地は戦いが溢れています。なので、騎士や領民には死ぬまで戦ってもらわないといけません。」


「ブラックな事を言うのね。コーサ。」


 あまりにもドス黒い事を平然と言う弟に頼もしさすらベロニカは感じていた。


「さぁ、お話はこれくらいにして試合を続けましょうか。」


「そうね。アンタの作戦も分かっているわ。でもね、私がアンタの想定通り行く雑魚だとは思わないことね!」


 ベロニカは初志貫徹のコーサに近づいて蹴りを繰り出した。これまでの戦闘でコーサに自分のフェイントは効かないと分かっているので、最短距離でコーサに当たるように蹴った。


「猪みたいに正面からしか来ても当たりませんよ。」


「そんな事分かってるよ!ただの蹴りならな!」


「っ!」


 コーサはベロニカが言っていることは分からなかったが、生物の持つ生存本能である危機察知が言っていた。

 「この場から逃げろ」

 連撃の態勢ではなかった事から最低限の動作で避けようと思っていたコーサの身体を本能が無理矢理大きく退かせた。


「ちっ!危険を察したか。」


「ぐばっ!」


 コーサが避けた瞬間にさっきまでコーサが居た場所にベロニカの蹴りが空ぶった。

 その瞬間、コーサと蹴りの直線距離に居た観戦していた騎士が吹っ飛んだ。


「危ないですね。なんですか?今の魔法…………ではないですね。」


「当たり前でしょう。魔法は原則10歳からがストロンガー家のルール。私がそれより先に受ける理由はないからな。」


「なら……」


 ベロニカは続けざまに蹴りを繰り出してきたコーサが避けるのものおかまないなしに全力で蹴った。

 コーサは今度は大きく避けずに紙一重で避けれるように横に避けた。


「やっぱりそうですか。」


「あら、思ったよりバレるのが早かったわね。」


 避けたはずのコーサの頬から一筋の血が流れていた。


「ホント、8歳の子供がして良い脚力じゃないですよ。空気を蹴ってぶつけるなんて化け物ですか?ベロニカ姉さん。」


「2回でそれに気づけるアンタも十分おかしいでしょう。それも攻撃範囲が増している私の蹴りを一回で計算して避けるなんて。」


「当たってますよ。この血が見えませんか?」


 頬に流れる血をベロニカに指で指しながら言った。


「そんなのアンタの技量不足で起きた失態でしょう。私の功績じゃないわ。」

 確かに、今のはコーサがワンテンポ避けるのが遅れた事によるミスであり、ベロニカの技によるものではない。


「頑固ですね。素直に一度も傷つけられなかった僕に攻撃を当てれて喜んでくださいよ。」


「えぇ、その時は子供らしく喜ぶはアンタにこの蹴りをクリーンヒットさせた時にね。」


 そう言ったベロニカは今度はさっきの蹴りの感覚で思いっきり地面を蹴った。


「はやっ!」


「分かってきたわ。この力(蹴り)の使い方が!」


 今度はさっきより軽めの蹴りを連発させてコーサにお見舞いした。

 コーサは予想外のベロニカの早さに避けることは叶わずに防御に移行した。


「痛っ!」


 グギッとベロニカの連撃を受け止めた両腕から嫌な音がした。


「うまく出来なかったわね。」


 ベロニカは全力で蹴りを連発しようとしていたのだが、自分自身もさっきの加速は予想外だったようで蹴りにあまり力が乗せれなかったが不満な様だ。


「これ完全に折れてるんですけど、上手く出来なくてこれですか。ベロニカ姉さんは僕を殺す気ですか?」


「何言ってるのよ。私達がこの程度で死ぬ体じゃない事は実験に使っているアンタが一番知っているでしょう。」


「まぁ、そうですよね。」


 コーサは懐からさっきとは違う瓶を取り出すと折れた腕に中身の液体を振りかけた。

 すると、バキボキと言いながら次の瞬間腕が元通りに戻っていた。


「アンタのそのポーションの方がおかしいと思うわ。」


「そんなに欲しそうに見てもこれは僕専用ですから。ベロニカ姉さんが使っても意味はないですよ。」


 コーサはから瓶のラベルをベロニカに見せながら言った


「さて、今日は僕の負けでいいですから。終わりますよ。」


「はぁ!?!なんでよ!今からが良いところじゃない!!」


 コーサと戦ってみてより自分の力を使いこなすコツが掴んでこれたのに突然終わりと告げられてベロニカは不満そうであった。


「………ベロニカ姉さん。今回、なんで僕達が試合しているのか忘れてますね。」


「………戦う為でしょう?」


 何を当然の事をと言いたげなベロニカの態度にコーサは呆れていた。


「今回の試合は僕が治験している筋肉維持薬の効果を確認するのが目的です。その目的は達成されました。よってこれ以上するのは無意味です。」


 コーサはそう言い切ると訓練場を出て行った。


「ぐぅぅぅぅ!ふん!」


 ベロニカも正論でコーサを負かされて内心どころか体全体でブチギレていた。

 その証拠にスタンピングされた地面が陥没している上に街では軽い地震があったと騒ぎになった。

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