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性転換薬

「どうしてなの?!!」


 私、ラッナは仕える主人であるアイシャ様の荒れ具合を見ていた。


「どうしました?姫よ。」


「また、また断られたのよ。」


「あぁ、コーサ様への婚約ですか。」


 泣きながら机に突っ伏しているアイシャが苦しそうに言った。

 それだけでラッナは自分の主人が何を指しているのか分かった。アイシャ、この一ヶ月で50回目の失敗である。

 自分の主人ながらラッナはアイシャが行っている熱烈な恋文を送りつけまくっている行為を呆れていた。


「何、その目は、私の好意に呆れているの、恋も知らないあなたにとやかく言われたくないのだけど。」


「失礼な姫ですね。恋くらい知っていますよ。」


「…………本当に?」


「えぇ、少なくても姫の行いが重く忌避するものだという事くらい分かります。」


 ラッナのどストレートな物言いにコイツは本当にあのラッナ?って疑問に思うと同時に私と同じでコーサに出会って価値観が変わったとのだと結論づけた。


「それにコーサ様が何故姫の愛を受け入れないのかも私には分かります。」


「……………貴方に何が分かると言うの?」


 コーサの実験体として少し前まで1日の大半を寝て苦しんでいたラッナがずっと交渉や食事と充実したコミュケーションをコーサと行っていた自分よりコーサの事が理解出来ている訳がないとアイシャは確信していたが、一応、聞いてみる事にした。


「コーサ様の専属メイドからの情報です。」


「詳しく聞こうじゃないか。」


 コーサの専属メイド、レスはコーサが赤ん坊の頃からコーサに仕えているコーサの事を一番理解している使用人と言っても過言ではない人物からの情報。

 ラッナが話すことの価値は金がゴミに感じるほどの価値が高騰したのである。


「コーサ様には女性説と言うものが領民の間で流れているようです。」


「何よ、その荒唐無稽な話は。」


 どれだけ大事なものかと思えばただの愚かな領民の愚かな説であった。

 ラッナの話は信頼と共にアイシャの中で暴落した。


「そんな事あるはずがないでしょう。そもそも隠す理由がありません。」


 ラッナの話した説は根本からおかしいのだ。

 コーサは確かに美少女に見えるほどの中性的な容姿に歌姫すら霞む中性声である。

 領民が女性と疑いたくなる事は理解できるが、そもそもコーサが男性と偽る必要性がなかった。

 性別を偽る理由として実例としてもある話がある。

 それは子供がその人しかいない上に当主には男性である必要があった為、一生を男装で暮らしたと言う話である。

 それが一番、理由として考えられる当主になるには男性である事が条件に含まれているだが、ストロンガー家には男性、女性と言う性別で当主を限定するしきたりはない。

 それにコーサは当主になりたいとは考えたこともない上に姉であるベロニカを支える事を力を注いでいた。

 だから、今回の婚姻は成功するとアイシャは考えていた。


「なので、コーサ様が男性である必要はないのです。この説は間違っています。」


 アイシャは確信を持ってこの説は間違っていると言えた。

 でも、それはラッナのある言葉によって否定された。


「ですが、それならアイシャ様の愛を拒む理由が説明つくはずです。」


「はっ!まさか!」


 その瞬間、アイシャにある可能性が生まれた。


「そうです。コーサ様は男色です。」


「そ、そんな………」


 アイシャの顔には絶望に塗りつぶされていた。


「だから、世界樹を求めていた本当の理由は。」


「はい、完璧な性転換薬を作るためでしょう。」


 この世界にある性転換薬は一時的なもので飲み続けないと身体を維持できない。

 性転換薬は身体の変化と薬が体に残留する時間には大差あり、残留する時間が3日と長い為、体を維持するために飲み続けたら最悪死に至ってしまうのである。

 そこで古代に作成されたと言われる完璧な性転換薬は一回の使用で一生効果を持つと言う代物である。


「ならそんな説が出ているのは……」


「はい、性転換薬を使った後のためでしょう。」


 噂が本当だったなら領民も驚きはするだろうが、受け入れるのも早いだろうと言う考えだろうとアイシャ達は考察した。


「それなら私も男になるしか…………」


 コーサが女になると言うなら自分は男となりコーサを妻として迎えるしかない。

 そう決心したアイシャは早速、今書いている恋文を改訂して早くこの覚悟を送らなければとペンをはしらせるのをラッナが止めた。


「待ってください。姫。」


「なんですか、この覚悟を見せればコーサ様は私の愛を!受け止めてくれるはずです!」


 既に自分が夫となり、コーサが妻となる未来を思い浮かべて興奮しているアイシャは妄想に包まれながらそれを止めるラッナを押し退けて伝書鳥の足に恋文をくくり付けて見送った。


「はぁ、やってしまった………」


「なん、なんですか。さっきから。」


 さっきから慌てているラッナの様子がアイシャには意味不明だった。


「アイシャ様、さっきまで私たちが話していたのは考察です。」


「そうね。」


「それも物的証拠のない妄想に近い考察です。つまり、この考察が間違っている場合、アイシャ様はコーサ様に振られまくったせいで妄想に取り憑かれて暴走している痛い人になります。」


 それを聞いたアイシャは愕然としてその場に仰向けに倒れた。

 そして、すぐ起き上がり鳥が飛び去った方角に叫んだ。


「カッムバーク!!!!!」


 伝書鳥を戻るように命令する暗号の言葉なのだが、既に鳥はアイシャの声が届かない遥か上空に飛び去っていた。

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