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報酬と望み

「コーサ様、件のダークエルフが着きました。」


「うん、分かった。すぐに連れてきて。」


 あれから、一ヶ月が経って、やっとダークエルフが来た。

 その間にエレスカビだけではなく、エルフの身体をじっくり調べていた。

 あとはダークエルフの血を調べるだけである。


「おっはー、お坊ちゃん。あなたの待ち望んだダークエルフちゃんだぞ!」


「………………無礼者ですね。始末しますか、コーサ様。」


 明らかに貴族対する態度ではないダークエルフに自分の主人が舐められているの感じたレスは、血があれば良いなら殺しても良いだろうと考えた。


「やめろ。レス。お前では返り討ちだ。」


 上手く隠してはいるが、コーサからしたら明らかに強者だと分かる風格をしていた。

 どう足掻いてもレスでは勝負にすらならない事は分かった。


「へぇーこれでも気配などを消すのは得意なんだけどな〜」


 若干13歳の子供に見破られるとは思っていなかったのか、ダークエルフは軽口は叩いていても内心は驚いていた。


「取り敢えず、今回貴殿に来てもらったのは他でもない。僕の研究に協力して欲しいんだ。」


「それは構わないけど、本当になんでも欲しいものはくれるの?」


 それに加えて破格の依頼料もと言うダークエルフはコーサの研究内容より報酬の方が気になる様だ。


「えぇ、僕が与えられる物ならなんでもあげますよ。」


「じゃあ、坊ちゃんと一晩とかでも良いの?」


「調子に乗るなよ。外様風情がっ!」


 ダークエルフは冗談のつもりで言ったのだが、思いの外この屋敷のタブーに触れたのか、隠れて護衛している奴らもレスと同様に殺気を溢れ出していた。


「もう、冗談よ。それに貴族なんだから。それなりに遊んでいるでしょう。」


「ふふ、そうですね。他の貴族ならそうかも知れませんが、我が家では血の気が多い人が多いので、性交より戦闘なんでそう言う話はあまり聞きませんね。」


 周りの殺気にビビることなく平然としているダークエルフは悪態をつくが、コーサはさっくり流した。


「あら?その歳で枯れているの?」


「枯れてはいませんが?貴方の身体には研究対象以外で興味は湧きませんね。」


 豊満な身体をコーサに見せつけるダークエルフだったが、コーサはバッサリと切った。


「これでも、冒険者の間では人気なのよ。」


「それは知っています。パーティメンバーと共に人気らしいね。ラナ・ウェンスキー。歳は三百とちょっと。好きな食べ物はチョコ。冒険者ランクはA。スリーサイズは………」


 コーサは調査資料を読みながら目の前にいる調査対象がいるのに堂々と読み上げていた。


「…………………ストロンガー家は諜報能力は低いと聞いただけど。」


「えぇ、ストロンガー家はね。」


 暗に自分には外部で情報を手に入れる事が出来ると言う事を言っている。


「それは脅し?」


 調査したのはラナを脅して、無理な研究の強要をさせようとしているのかとラナは考えた。


「うん?そんなつもりはないよ。これは君に病気がない事を調べるためのものだよ。協力内容は血の提供だからね。感染症とかの病気があった困るからね。」


 コーサは調査したのは薬のためである事を説明した。

 オークのクリームでも清潔な血と言う文面があったから、あらかじめに調査したのである。


「そう、それなら良いの。でも、もし脅すなら誰を相手にしているのか考える事ね。」


 明らかに雰囲気が変わったラナ。

 調査資料にはそれだけの事がが書かれている事が内容を知らないレスにも分かった。


「それじゃあ、研究を始める前に報酬を聞いていいかな?」


 時間がかかる物だったら研究が終わった後も街に残ってもらうことになるかも知れないので、先に欲しいものを聞いておく事にした。


「私、と言うより私達が欲しいのはこの街でAランク冒険者として活動出来る推薦状よ。」


 この街を中心としてある四方のダンジョンに挑もうと思っているラナ達は全てのダンジョンに入れるAランク冒険者として活動出来る証が欲しかった。


「他にない?」


「なんでも良いって言っていたじゃない。」


 貴族なら推薦状ぐらいどうって事ないと思っていたラナは断られるとは思っていなかった。


「勘違いさせて悪いけど、推薦状は後で君達が泊まっている宿に届けるよ。僕が他って言ったのは、それだけだと君の報酬にならないって事だよ。」


 つまり、報酬にしては安すぎると言う事である。


「それなら、また今度で良い?他のパーティメンバーと相談したいから。」


「それは良いけど、出来ればパーティメンバーと相談しないで欲しいね。」


 コーサとしては今、欲しいものがないなら考える時間なんて与えて良かったのだが。


「僕が与えたいのは君への報酬であって、君のパーティへの報酬じゃないんだ。出来れば、君個人が欲しいものがいいね。」


 褒美はその人への褒美であるべきであるが、モットーのコーサにとって最初からパーティ相談のラナの考えは好きではなかった。


「わたしはあまり物欲がないのよ〜だから、こんな時は他の子に聞いてるのー。」


 ラナはなんでもない様に言っているが、コーサには何かは掛かっていた。


「まぁ、良いです。それなら今から採血………」


「大変です!コーサ様!!」


 勢いよく開けられた扉からメイドが慌ててやって来た。


「…………………どうかしたのか?」


「ヒッ!そ、それが……」


 ギリ実験の邪魔にはならなかったが、これからと言うところを邪魔されたコーサはメイドに対して軽く圧をかけて言った。それにビビったメイドは泣きそうになりながら報告した。


「それが、ベロニカ様が!屋敷の外で待っていた冒険者様のお仲間達に勝負を仕掛けまして、外は廃墟の様になっています。」


「はぁ?!」


「…………っ!急いで止めてきます!!」


 自分の仲間が襲撃されたと聞いて驚いているるラナの横で不機嫌になった事が分かるコーサの笑みを見たレスはこの命を賭しても止めてこようと急いで外に駆け出した。

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