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姉妹喧嘩

 コーサ・ストロンガーは結構有名になった。まだ、百年問題一つでは史上的、世界的とはいけないが、国的には有名だろう。

 そろそろ、説への伏線を生み出すタイミングじゃないか。

 そこである自分の失態を広めた。


「ベロニカお姉様。」


「なに?」


「あのーカップがどころかテーブルまでヒビ入ってきているのですが。」


 ベロニカの機嫌は誰が見ても分かるくらい最低レベルで悪かった。

 その証拠にダダ漏れの魔力が周りを破壊していた。


「悪いわね。マリア。今の私機嫌悪いの。」


 知っているとマリアはベロニカの丸わかりの内情を言われても困ると思った。

 そして、なんで機嫌が悪いのかも分かっていた。


「それにしてもあのコーサお兄様が油断から背中に大怪我を負わされたって本当ですか?」


「知らないわよ!本人が言っているだから!!本当なんでしょう!!」


 ベロニカの怒りの理由はこれだった。

 ベロニカの目標はあの処女雪のような傷の無い身体に自分が初めてを喰らわせる。それがベロニカの目標だった。

 その時を想像して絶頂していたのに横から誰も知らない雑魚に奪われたのだ。すぐにでもコーサを含めてぶち殺したい想いだった。


「うーん。やっぱり私、お兄様の背中見てきます!」


 気になり過ぎたマリアは真相を確かめようと思ってこの場から離れようとした。別に今のベロニカが怖すぎてこの場から逃げたいと思っているわけではない。


「やめなさい。コーサは傷を一生の恥と戒めとして残すそうだけど、それを見られる事を許しているわけではないわ。」


 コーサは背中を見た者を徹底的に記憶を消すように拷問を罰する事も言っていた。勿論、戦闘など衣服が壊れて不可抗力で見られる事に罰する事はない。風呂場や着替えなど不可抗力関係ないのに見た者を罰するのだった。

 因みに、被害者はレスを含めたメイドが三名程居たそうな。


「それなら、模擬戦でコーサお兄様を脱がせばいいんじゃないですか?」


「マリアには無理。」


 名案と言う風にマリアが得意げに言った案をベロニカがバッサリ切った。

 今度はマリアが不機嫌になった。


「自分が出来ないからって私も不可能扱いしないでください。」


「あぁ?!」


 2人の圧に押されて側に控えていたメイド達がプルプル震えていた。

 失禁しないだけ胆力がある方である。


「そんな大口叩くならまず私を倒してからにしてくれる?」


「望むところです。」


 そう2人が言い終わると空気が静まり返りお茶を飲み出した。

 既に涙目なメイド達は一刻も早くこの場から逃げたかった。この静かな空気は嵐の前の静けさだと言うことが分かっていたからである。


「「ふぅ…………死ねぇ!!」」


 飲み終えカップが置かれる音をゴングの代わりにして2人の姉妹喧嘩が始まった。


「甘い!」


 鞭でベロニカの繰り出した蹴りを巻きつけて防いだマリアはベロニカをこちらに引き寄せようとしたが、それを片脚で踏ん張って逆にこっちに引き寄せた。


「甘いのはお姉様の方です!!」


 鞭ごと引き寄せられたマリアは体勢が崩れたまま蹴りをベロニカにお見舞いした。


「貴方の蹴りが私に通用するわけないでしょう。」


「グハッ!」


 それを片手で受け止めたベロニカはマリアの足をガッチリ掴んでテーブルにぶつけた。

 何処でも戦闘が起きていいように全ての家具を頑丈さを主観に置いた仕様なのに意図も容易く壊しマリアの体を床に叩きつけたのだから。その威力は凄まじい者だった。


「別に私1人で勝つつもりは端からありません。」


「うん?」


「ガゥ!!」


 叩きつけられながら逆にその態勢を固定するマリアを不思議に思ったが、気配を消しながら常にマリアのそばに居たポチがマリアの合図なしにベロニカに噛み付いた。


「ただの番犬風情が私に牙を突き立ててるんじゃないわよ!!」


「キャウン!」


 ポチの牙はベロニカの肩を噛みちぎろうとしたが薄皮すら傷つけることも出来ていなかった。

 そのポチの頭を掴んで壁まで投げ飛ばした。


「ポチ!」


「アンタもさっさと寝てなさい!」


「グッゥゥゥゥ!!!」


 マリアは投げ飛ばされたポチに意識が一瞬向けてしまった。

 ベロニカはその一瞬を見逃さなかった。マリアを叩き続けている腕の力をより力を加えてマリアを潰す勢いで床に押さえていた。


「まだ!」


「あっ?!」


「えっ?」


 マリアは鞭を使って被害がこっちに来ないように2人の背後に避難していたメイドがケーキ切り分け用に持っていたナイフを鞭で取って背後から攻撃してきた。


「無駄!」


「クッ!このっ!」


 ナイフを片手で弾いたベロニカだったが、少しマリアを押さえている腕の力を弱めてしまった。マリアはその隙に逃れようとしたが、そんな事をベロニカは許しはしなかった。

 マリアは鞭でガラ空きのベロニカの首を絞めようとしたが、ベロニカは鞭が首に巻き付いた瞬間片手で引きちぎった。


「なっ!うそ……」


「何、驚いているのよ。私がこの程度の鞭を壊さない力しかないと思っていたの?」


 マリアの鞭はカメレオン型の魔物の中でも舌の伸縮性がトップクラスのゼツオンの舌を加工して造られた逸品なのである。

 そんな代物を力だけで引きちぎったベロニカを純粋に驚いていた。


「そもそも、自分の才能を完璧に活かせていないマリアが自分の才能を活かして進化させてきた私に勝てるわけないでしょう。」


 ベロニカの力に驚いているマリアにやる気を失せたベロニカはマリアを離して言った。


「分かったらさっさと力を付けることね。その程度じゃ、私のストレス発散にもならないわよ。」


「バレてましたか。」


 部屋を出て行ったベロニカにマリアは自分がしていたことが全てバレていた事を知った。

 この姉妹喧嘩は当分メイド達の話の種になった。

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