アイアンメイデン
すみません。
体調が悪く投稿が遅れました。
次からはいつも通り18時投稿します。
「大変です!コーサ様!」
「どうしたんだ?そんなに慌てて?」
レスがノックもせず扉を開けてきた事も気にせずにコーサは尋ねた。
「今!執事長から連絡があったんですが!商人達から苦情が来ています!」
研究は心配しているんじゃないか?!や偽物を売ったな?!という苦情が殺到していた。
「それはもしかして育ってきっても種が出来ないという話ではないか?」
「知っていたのですか?!」
コーサの言う通りレスが執事長に言われた苦情原因はそれだった。
この大問題をコーサに一刻も早く伝えなければと慌ててきたのである。
「当たり前だ。そう言う種を渡したんだからな。」
「どう言う事ですか?」
コーサがバラカイナ草を研究するにあたって農家などで調べた結果、この世界にF1品種がない事を知った。
そして、これを利用しようと思った。
「僕が商人達に売った種を僕はB1品種と名付けた。」
「B1品種ですか?」
バラカイナ草第一世代
訳してB1
これの特徴は前世のF1品種とは違って交雑種というわけではない点である。
前世とは違う魔力と魔法で動物で言う去勢を施した種である。その為、F1品種と違って種が出来るわけもないのである。
「言ったでしょう。種と肥料を買い続けてもらうと。」
「確かにそう言ってましたね。」
レスはコーサがバラカイナ草の種を売る時に商人にバラカイナ草の育て方のマニュアルと注意点を懇切丁寧に説明していた事を思い出した。
全てを話すつもりがないと言いながらレスは全て話しているのではと言う疑問があった。
「商人達から買った領主や商人はあの後自分達で育てて種を売ろうと思ったんだろうけど、そんな事を許すわけないだろう。」
コーサは立ち上がると部屋の外に出て行った。それにレスも着いて行った。
「実はね。その事で僕に刺客が差し向けられたんだ。」
「刺客?!」
レスはその事に驚いていた。
そんな事をすれば戦闘好きな我が領が黙っているはずがない事を他貴族は知っているはずだからだ。
「まぁ、刺客といっても僕の暗殺ではなく研究資料を奪って成果を自分のものにしようとしていた。馬鹿な貴族からの刺客だったけどね。」
「それはご愁傷様です。」
レスはコーサが何よりも自分の研究が大事である事を知っている上、その努力も知っている。
だから、それを盗もうなんて考えをする貴族どもを皆殺しにしたいと思っていると同時に実行犯である刺客を可哀想に思った。
「着いたよ。」
「此処は確かコーサ様の第二ラボですか?」
コーサは今回の功績を認められて新しく研究ラボを一つ屋敷内に増やしていた。
此処は元々、一時的に捕虜を捕らえておく留置所だった地下室だ。
「さぁ、入って。」
「良いんですか?」
「もちろん。」
そこはまだ誰も入室の許可がされていない場所だった為、レスは外で待っていようと思っていたのだが、コーサに初めて第二ラボの入室を許可される人になった事に感激していた。
「それでは失礼します。っ!」
レスが感じたのはいつもコーサの自室から漂う薬品の匂いではなかった。
これは強烈な血の匂いだった。
「コーサ様………これは?」
「あぁ、そう言えば第二ラボで何しているか言ってなかったね。」
コーサが背後と似つかわしくない笑顔でこう言った。
「人体実験だよ。」
第二ラボからは凄まじい悲鳴と恐怖が渦巻いていた。
「母さん達には言っているんだけね。結構、刺客が来るんだよ。だから、それをただ殺すんじゃなくて有効活用しようと思ったんだよね。」
コーサはB1品種の事をもっと知られれば去勢前のバラカイナ草を求めて刺客や密猟者達がやって来ると予想していた。
そして、そんな奴らを処刑ではなくもっと他の事に役立てるにはどうしたら良いかと思って気がついた。
この世界なら人体実験も可能である上に咎められる法律もないと言う事に。
勿論、罪もない人を人体実験したらそれは罰せられる行いだが犯罪者にはそれは適応されない。
「コーサ様?これはなんですか?」
レスはコーサが刺客達を人体実験している事は分かった。その事に関しては別にどうでも良かった。刺客達もそれだけの罪を犯したのだから。
でも、この血の匂いが充満している事に疑問を持った。
そして、部屋のど真ん中に鎮座する物に目が入った。
「これは鉄の処女だよ。」
「鉄の処女ですか?これは何をする物ですか?」
明らかに異質な存在な上に部屋にある他の拷問器具と違って全く知らない物だった。
「これはね。こうやって外に開くんだよ。」
鉄の処女のなかは針だらけだった。
でも、その針の配置は致命傷にならない場所ばかりで誰が見ても拷問用だと分かるようになっていた。
コーサがレスに説明していると、ドサッと誰かが倒れる音がした。
「あれ?この人は?」
「?レスの知り合いでも居た?」
レスの反応に自分の刺客にレスの知り合いでも居たのかと怪しんだ。
「い、いえ、私の直接の知り合いではないのですが………」
「なに?」
コーサの雰囲気が変わった事を察知して素早く弁明しようとしたレスだったが、なんとも言いにくそうにしていた。その様子にコーサは少しイラッときて強めに言った。
「っ!この者は私の後輩の恋人だったと記憶しています。」
レスは自分を慕ってくれている後輩メイドの一人がこの倒れた人物を恋人と嬉しそうに紹介してくれた事を思い出していた。
「ふーん、通りでその人一番早く侵入してきたわけだね。命令を受けた時にはすでにこの街に居たんだ。」
倒れた人物はこのラボの被験体第一号だった。
それは誰よりも早く刺客としてこの屋敷に潜入してきた事を指す。
コーサは前々からおかしいな?と思っていたが、屋敷のメイドが恋人ならある程度屋敷の内部を知っていてもおかしくない。
「まぁ、そう言う事ならそのメイドには早く伝えないとね。」
「はい、私の方から伝えておきます。」
あの笑顔を曇らせるのは嫌だが、長引かせても何か変わるわけもないので、レスはこの後、後輩メイドに伝えた。




