難関のダンジョン②
「……戻って来ちゃったわね」
「そうだな……」
「どうしましょうか?」
最初の部屋に戻ってきてしまった俺とレインとレイフは困惑し、俺は部屋の中を見渡す。
出てきた通路は入った通路と別だけど途中で誰にも会わなかった。つまり繋がってるわけじゃない。
やっぱり構造が変わってこの部屋に戻されたんだな。
「それでどうするの? 勇也」
「どうするも何も、他の皆だって頑張って進んでるはずだし、立ち止まってられないよ」
レインとレイフは頷くと、俺達は出た通路から真っすぐ先にある通路に入ると、通路の入り口が塞がってしまったが、それでも構わず先に進んだ。
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勇也達が通った通路が塞がった数秒後、別の通路から大貴、スチア、玲、クロエが出てきて部屋の中に入る。
「ん? おい、ここ最初の部屋じゃないか!?」
「ホンマや」
「戻って来ちゃったんだべか?」
大貴達は動揺すると、クロエは部屋の違和感を覚えた。
「この部屋は最初の部屋で間違いないと思いますが、一つ違う所があります」
「何だよ? 違うと所って?」
「私達が出てきて通路も含めると、通路の入り口が四つしかありません」
「ホンマや。ほな誰かが通ってそこが塞がったってことなん?」
「そう推測します」
大貴が塞がったと思われる壁を叩くが、硬く簡単には砕けそうになかった。
「ぶっ壊すのは難しそうだな」
「例え壁を壊し進めても、構造が変わる此処では追いつくのは不可能だと思われます」
「せやなぁ」
四人は結局別の通路に入って先に進むと、通路の入り口が塞がった。
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「また分かれ道かよぉ、クソォ!!」
何度目かの分かれ道でウィドはキレて声を上げると、耳を塞いでいるミスクが呆れ顔でウィドに話しかける。
「ちょっとうるさいわよウィド。ここ声が響くんだから」
「さっきから分かれ道でぐるぐる回ってんだぞ! イラついてしょうがねぇんだよ!」
ウィドが叫ぶと、ゴーレムが一体現れてウィド達に襲い掛かる。
「邪魔だぁ!!」
ウィドはエレメントラインを出して無数の風の刃を放つと、ゴーレムはバラバラに切り刻まれ倒れると、ウィドはエレメントラインを消す。
「ああ~、少しスッキリした」
「あんまりそう見えないけど。そんな目つき悪い顔してたら」
「元からこんな顔だ俺は!」
ウィドが叫ぶと、美奈は「ん~」と通路を見て考え事をしていた。
「ねぇアルツ。土のエレメントでダンジョンの構造分からない?」
「無理だな。普通のダンジョンなら分かるけど、ここはゴーレムの中だからな」
アルツでも分からない事を知ると、ウィドは頭を掻く。
「チッ。またテキトーに進むか」
「適当に進むからぐるぐる回ってるんじゃないの?」
「うるせぇ! いいから行くぞ!」
ウィドが先導し、四人は三つに分かれた通路の真ん中を進む。
通路を進んで行くと、前方に下に下がる階段があった。
「階段? こんな所に?」
「階段なんて初めて見たな。もしかしたら正解かも知んねぇな」
ウィド達は期待を膨らませ階段を下りていく。
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石の魔物との連戦で、ライデン、ビト、厚、楓華は休んでいた。
「はぁ~疲れた」
「無限に溢れる石の魔物に構造が変わるダンジョン。これは心身共に効くね」
「呑気に言ってる場合じゃないよ。ちゃんと魔石に近づけてるの? 僕達」
「分かんねぇよ。今何処らへんにいるのかも分かんないのに」
ライデンの言葉にビトは落ち込むようにため息を吐く。
五分ぐらい休み先に進みだすと左右に分かれた道に出た。
「どっち進む?」
「ん~さっきは左進んだから今度は……」
右に進もうとライデンが言おうとしたその時だった。
「うあああああああっ!?」「「きゃあああああああっ!?」」
左の道から悲鳴が聞こえ、気になった四人は左の道を進む。
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「まさか上の階層があったなんて」
通路を進んでいた俺達は、上に上る階段を見つけて上の階層にやって来た。
「もしかしたらこの階層に魔石があるのかしら?」
「分かんないけど、今の階層とさっきまでの階層のどちらかにあると考えると、魔石の元に行くのが倍大変だぞ」
「一体どちらにあるんでしょう?」
「とりあえず進んでみよう」
俺達はそのまま今いる階層を進んだ。
下の階層と同じく、石の魔物やゴーレムが現れては襲い掛かって来る。
エレメントラインですぐに倒して俺達は先に進む。
「行き止まり?」
上の階層に上ってからしばらく進むと、行き止まりに差し掛かった。
「進めませんし、戻りましょう」
「そうね」
俺達は振り返って来た道を戻ろうとすると、突然床が開いた。
「「「え?」」」
そしてそのまま下の階層に俺達は落ちた。
「うあああああああっ!?」「「きゃあああああああっ!?」」
落ちた俺達は下の階層に地面に倒れる。
「痛ってー……」
俺はゆっくり目を開けると、俺の上にレインとレイフが乗っかっていた。
多分二人は大丈夫だな。
……なんか頭に柔らかい感触があるけど、今は考えないでおこう。
「あれ? 勇也達?」
声を掛けられ顔を上げるとライデン、ビト、厚、楓華がいた。
「じゃあ三人共、上の階層から落ちてきたの?」
「ああ」
ビトに聞かれた俺は落ちてくるまでの経緯を話した。
「上にも階があるなんて、どんだけ大きいのこのダンジョン!?」
「探す範囲がこれで倍になったね。もしかしたら魔石は上にあるかも知れないし」
風間はダンジョンの大きさに嫌気がさし肩を下げ、厚は魔石があるフロアがどっちなのか考えている。
「まずはこのフロア全体を調べたいけど……」
「構造が変わるから、全体を調べるなんて無理だろ」
「それに通話機も使えないから、ここにいない皆と連絡が出来ない」
「一旦合流したくても、何処にいるか分かんないもんな」
合流しないと情報共有出来ないのに、その合流が出来ない。
どうにか皆の位置がわかる方法があれば良いんだけど。
「あぁぁぁもぉぉぉっ!! ここでジッとしてても何も起きないし、先進んじゃおう!」
「あ、ちょっ……ビト!」
床に座り込んでいたビトが立ち上がり先に進むと、俺達も後を追うように進んだ。
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「先ほど悲鳴の様な声が聞こえませんでしたか?」
「悲鳴? んなもん聞こえなかったぞ」
大貴は玲に顔を向けると、玲は顔を横に振る。
「うちは聞こえへんかったで。スチアは?」
「オラも聞こえなかっただ」
「気のせいじゃないのか?」
クロエは首を傾げ先を進む。
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上の階層に上ったリューラ、エン、フィーズはしばらくその階層を進むが、特に変わった物は何も見つけられずにいた。
「何もねぇな。魔石は此処に無いのか?」
「この階も構造が変わりますし、まだ全体を調べられていないと思いますよ」
「ああ。だが、調べ終わってない所を、構造が変わるこのダンジョンでどうやって調べるか?」
リューラが腕を組んで考え込むと、三人の足元から土煙が上がり、床が開いた。
「なっ!?」「はぁ!?」「うわっ!?」
突然の事に三人は呆気に取られ、そのまま下に落ちてしまった。




