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エレメンターズ  作者: 至田真一
大地揺るがす大巨獣
92/202

大巨獣の背中の町

「こちらが空から見たギガンドスの全体像です」


 先ほど、リューラに抱えられ上空から見たクロエは紙に全体像を書き写し、町の宿でその全体像を見る。

 体が岩で出来た四足歩行の魔物。その背中に、今俺達がいるドゥーの町がある。

 ちなみにギガンドスは一時間程経つと、土の中に潜った。


「世界一巨大な魔物って聞いたけど……こんなに大きいなんて」

「皇蟲や魔海龍も十分大きかったけどね」


 ドゥーの町の二倍……いや、三倍はあるな。もしかしたらそれ以上……。


「しかし、この町がギガンドスの背中にあるとはな」

「正確にな、背中の約71パーセントにこの町があります」


 予想以上の大きさにあまり言葉が出ないが、どうしても気になる事がある。


「なぁジーリュ。今ギガンドスは封印されているって事で良いんだよな?」


 これまでの封印獣と違って、ギガンドスは自由に動いてる気がするし。


「うむ。ギガンドスは封印されている状態じゃ。こやつは大きすぎるせいで、他の封印獣と違い力を押さえられておるのじゃ。よって、現在ギガンドスは一日の殆どを地面の中で寝て過ごし、昼の12時から一時までの一時間の間だけ地上に出る」

「起きる五分前と再び眠る五分前に知らせる鐘が鳴るのよ」


 あの鐘の音はそういうことか。

 だから町の人は慣れていたのか。


「でもよくこの町の人達はここに住めるよね」

「ギガンドスのお陰か、この町には魔物が近寄らないのじゃ。そう言う意味では、安全なのかも知れんな」

「度胸あるな、この町の連中は。つーか、下手したら俺等、こんなバカデケェ怪物と戦わねぇといけねぇのか?」


 ウィドの言葉を聞いて俺は少し不安になる。

 ゲームだったらどんなに大きな敵にも攻撃は通じてるけど、これは現実。こんな大きな魔物に攻撃なんて通じるのか?


「倒す方法は一つだけある。遥か昔、ある一つの巨大なダンジョンがあった。そのダンジョンにある日、巨大な魔石が生まれ、魔石の魔力でダンジョンに命が宿り、周囲の土や岩を吸収し体を造り、生まれたのがギガンドスじゃ」

「魔石……まるでゴーレムですね」

「そうじゃ。ギガンドスは世界最大のゴーレムとも言えるのう」

「つまり、その魔石を破壊すればギガンドスを倒せるって事?」


 俺の問いにジーリュは「うむ」と答える。

 倒せる方法は分かっても、こんな大きい魔物の体内の魔石をどうやって破壊するんだよ?


――――――――――――――――――――


「あの町か?」


 ドゥーの町の近くまでやってきた遊大とジョルクスは、盛り上がった大地の上にあるドゥーの町に目を向ける。


「じゃあ行くか」

「待て!」


 町の入り口に行こうとする遊大をジョルクスは止める。


「な、何だよ?」

「よく見ろ。入り口の門を」


 ジョルクスに言われ遊大は目を凝らして門を見ると、入り口の衛兵と一緒に、獣のエレメンターのビトがいた。


「あいつは、確か光野の仲間の……」

「奴は獣のエレメンターだ。嗅覚が鋭いから透明化や変身の魔法は臭いで見抜かれる。仕方ない、他に中に入れる場所が無いか探すぞ。ここが最後の封印獣だ。気を抜くなよ?」

「分かってる。元の世界に帰るためなら、何だってやってやる」


 そんな遊大を見たジョルクスはニヤッと笑う。


(まだ信じてるのか。そんな魔法、無いというのに)


――――――――――――――――――――


 町長から協力を得た俺達は荒井とジョルクスを探すため町の見回りをしている。


「分かっていても、魔物の背中を歩いてるって思うと緊張するな」

「そうね。ギガンドスがここまで大きいなんて予想出来なかったわ」

「出来れば戦いたくない相手だ。絶対に封印を解かれないようにしないとな」

「ええ」


 俺とレインは町の中を見渡し怪しい人がいないか探す。

 ジョルクスは透明化魔法と変身魔法を使えるから、目を凝らしてよく見ないと。

 町の入り口にビトがいるから、もし荒井達が町の中に入るときは気付くはずだけど、ジーリュが町の入り口から入るとは限らないと言ってたからな。絶対に見つけないと。


――――――――――――――――――――


 荒井とジョルクスを探している楓華、玲、林子は町の路地裏を歩いていた。


「やっぱり隠れるんならこういう所でしょ」

「まぁ、よく悪い人が身を隠すイメージがあるわな」


 そんな事を話しながら路地裏を歩いていると、ゴトッと音が鳴り三人は振り向くと、一箱の木箱が落ちただけだった。


「なんだ、ビックリした」


 三人は再び歩き出すが、先ほどから浮かない表情の林子に楓華と玲は少し心配になる。


「林先生どうしたの? 浮かない顔してるけど」

「はい……荒井君の事を考えてました。私の生徒が罪を犯したと思うと……」

「そないに心配せんでもかまへんよ。ジーリュさんもなるべく罪を軽くしてくれる頼んでみるって言うとったやないですか」

「……そうですよね。そうです、荒井君を止めてきっちり事情を聴きませんと」


 いつもの様な調子に戻った林子を見て楓華と玲は安心したように笑うとそのまま路地裏を見回る。


――――――――――――――――――――


「危なかった。危うく見つかる所だった」


 透明化の魔法が解けて姿を見せた遊大はホッと安堵の息を吐く。

 うっかり木箱を落としてしまった時は冷や汗を掻いたが、どうにか見つからずに済んだ。


「それで、今回はどうやって封印を解くんだ? また偉い人に変装か?」

「いや。確か今回の封印の宝玉は、地下にある普通の鉄の扉の中にあるはずだ。わざわざ権力者に化ける必要はない」

「じゃあどうするんだ?」

「そうだな……」


 ジョルクスはしばらく方法を考えると、何か思いついたのか口元がニヤリと笑う。


――――――――――――――――――――


 その日の夜。エレメンターが泊ってる宿で見回りのメンバーが交代したのを遊大とジョルクスは建物の陰から確認した。


「一番面倒な獣のエレメンターは宿か。これは好都合」


 ジョルクスと遊大は封印の宝玉がある方角へ向かう。


「まさかこのまま壊しに行くのか? 警備は厳重だと思うんだが」

「んな訳無いだろ。とにかく近くまで移動しろ」


 遊大は言われるがまま、封印の宝玉がある場所へ向かう。

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