対決、魔蟲軍団③
「再生器官か……。なぁジーリュ、何処にあるか知らないって言ってたけど、あるかも知れないって箇所はあるか?」
『む~……再生器官がある魔物の殆どは再生器官が近いほど再生の速度が速い。それを頼りに探すしかないのう』
「ちょっと心もとない気がするけど、それしかないか」
ジーリュとの通信を切ると、全員分の通話機は出来ているから、皆に通話を入れた。
「皆聞こえる!?」
『勇也か!? 何だ!?』
「皇蟲の再生について何だけど……」
俺は皆に皇蟲の再生器官について話した。
『つまり、再生器官を破壊すれば、奴は再生出来なくなるということか』
「多分な。とにかく、アイツを攻撃しまくって、再生が速い所を見つけるんだ! その辺りに再生器官があるはず!」
『へっ。攻撃しまくりゃあ良いのか。楽だな』
『軽い気持ちで行くな。相手は封印獣だぞ』
『分かってらぁ!』
ウィドの気合の入った声が聞こえる。
他の皆は話を聞き、地球組とレイフ、ビトは残っている蟲を討伐した後合流し、俺達は皇蟲と戦い再生器官を探して破壊する。
「さて、あんな長い体から探すのは一苦労だな。再生器官もどのぐらいの大きさなのか分からないし」
「今は攻撃あるのみだね」
「ああ!」
俺とレインが乗っているライトドラゴンは皇蟲へ向かって飛ぶと、皇蟲と戦っているリューラ、エン、ウィドと合流した。
「来たかお前等!」
「戦況は?」
「見りゃあ分かるだろ、苦戦中だ、うおっ!?」
皇蟲が消化液を吐きエンが乗ったフェニックスが避けると、俺達の方にも飛んできてライトドラゴンが躱す。
リューラ、青龍、フェニックスが火を吐き、エンがフレイムソードから火を放つと、皇蟲は鎌と鋏で火を防ぎ弾き返すと尻尾を伸ばした。
リューラとエンが避けると、ウィドが風を纏わせたハリケーンブーメランを投げて尻尾を切り落とした。
……けど、切られた尻尾の断面が膨れ上がり、ゆっくりと再生し、ウィドは舌打ちする。
「なんか、鎌や鋏の再生に比べると遅いような」
「そうね。多分、再生器官から離れてるからじゃない?」
「尻尾から離れてると言うと、やっぱり顔の辺りか?」
皇蟲の顔の方を向くと、屋根の上に立っているフィーズがフリーズボウで放った氷の矢を皇蟲は鎌で弾くと消化液を吐き、フィーズはアイスベアーに乗って避ける。
その隙に、アルツのアースハンマーと、スチアの巨大化させた鉄の拳で右前脚の鎌を破壊すると皇蟲が睨み、ライデンが雷を纏わせたサンダーランスで左前脚の鎌を突き抜いた。
その直後、エンが火を纏わせたフレイムソードとリューラの刀で両前脚の鋏を斬り落とした。
皇蟲が声を上げると、ライトドラゴンに正面に行くように指示し、光で刀身を伸ばしたライトカリバーで額の辺りを斬りつけた。
「どうだ!?」
緑色の血が飛び散り斬った所を見ると、傷が塞がっていき、斬り落とされた鎌と鋏も再生していく。
狙いが外れ歯を食いしばると、俺は塞がっていく傷の中に、青くて丸い物体の様な物が見えたが、傷が塞がりそれは見えなくなった。
「ねえ勇也。今一瞬見えた青いのって……」
「ああ。間違いない、あれが再生器官だ!」
皇蟲の再生器官を見つけた俺は、通話機で皆に知らせた。
「皆聞こえる!? 再生器官を見つけた、額の辺りだ!」
『額か……分かった』
通話を切り、俺達は皇蟲に向かった。
皇蟲は再生した鎌と鋏、口からの消化液で攻撃してきた。
消化液をフィーズが冷気で凍らせていき、皇蟲の口元を凍らせた。
氷を振り払おうと皇蟲が顔を横に振ると、その隙にレイン、リューラ、エン、ウィドが鎌と鋏を斬り落とすと、視界を封じる為光の玉を投げつけると、皇蟲の顔の前で弾けるように発光し皇蟲が怯んだ。
「今だ!」
ライトドラゴンに指示し、皇蟲の目の前まで近づくとライトカリバーの刀身に光のエレメントを纏わせる。
丁度鎌と鋏が再生したが、俺は光で刀身を伸ばしたライトカリバーを皇蟲の額、再生器官に向けて突き刺した。
「キィィィィィィィィィィィ!!」
ライトカリバーを額から抜くと、皇蟲は空を見て苦しむように声を上げる。
再生器官に当たったのか分からないけど、額の傷が塞がらないから当たったんだな。
「皆! 再生器官は破壊した! もう奴は再生出来ないはずだ!」
「おっし! んじゃあ……」
「後は攻めるだけだ!!」
気合十分のエンとウィドが一足先に向かい、続いてリューラにミスク、フィーズ、アルツ、スチアも皇蟲へ向かう。
「おーい、勇也!」
声を掛けられ振る向くと、厚達地球組が駆け寄ってきて、レイフとビトも一緒にいた。
「こっちは残った蟲を全部倒したよ!」
「分かった! こっちも再生器官を破壊したからもう少しだ!」
厚達は頷くと皇蟲の方へ向かい、俺も皇蟲へ向かった。
皇蟲が右前脚の鎌を振り下ろすと、エンが乗ったフェニックスは躱し、エンが火を纏ったフレイムソードで鎌を斬り落とした。
斬り落とした後エンは前脚の断面を注視すると、鎌は再生してこない。
「ホントに再生しねぇ。こりゃあ戦いやすい!」
エンに向かって皇蟲が左前脚の鋏を伸ばすと、リューラが刀で斬り落とし、ウィドのスカイイーグルの背に乗ったアルツが飛び下りると、アースハンマーで地面に叩きつける。
残った鎌と鋏を、スチアの鉄の拳とライデンのサンダーランスで破壊し、全ての鎌と鋏を破壊した。
皇蟲の顔にミスクの蹴り、ビトのツメ、美奈の魔法、厚の剣、大貴の拳、氷室の弓が命中すると、卵が付いた尻尾の針を地面に向けて飛ばした。
「産ませるわけねぇだろ!」
エンが火の玉、リューラが口からの火を放つと、卵は燃えて塵になり、ウィドが風の斬撃を纏ったハリケーンブーメランで尻尾を切り落とした。
怒った皇蟲は消化液を吐こうとすると、レインが勢いよく放った水で怯むと、レイフが地面から蔦を幾つか伸ばして皇蟲の顎に巻き付けて塞ぐ。
「勇也! 今よ!」
レインの言葉に俺は頷き、俺はライトドラゴンに指示し近づく。
ライトカリバーに光を纏わせ、皇蟲が顎を開いて蔦を切ると、俺はライトカリバーを振り下ろした。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
伸びた刀身が皇蟲の顔に命中すると、皇蟲の顔を真っ二つに斬り、緑色の血が噴水の様に上がると、皇蟲はゆっくりと倒れ、六つの眼から光が消えた。
そして皇蟲の体はドロドロに溶けていった。
「おーい、お主等!」
町の入り口を守っていたジーリュ、ヒレア、小森先生が駆けつけ、溶けていく皇蟲に目を向ける。
「よくやったお主等。よくぞ四体目の封印獣を倒した」
「何とかね。再生器官に気付かなかったら勝てなかったよ」
「痛ででで……やっぱエレメントラインは疲れる」
エレメントラインの反動で、俺達は地面に座り込む。
「全員にエレメントラインが発現したか。これは良い事じゃ」
「そうね」
俺達全員にエレメントラインが発現したことに、ジーリュとヒレアは喜ぶ。
ともかくこれで封印獣はあと一体、ギガンドスだけだ。
……そう言えば、ジョルクスと荒井の事も皆に言わないとな。




