夜の町の見回り
「ふむ……」
レリードの町の町長である小太りした赤い髪の男、レシィ町長は俺達の話を聞き顎に手を当てている。
「父からこの町に恐ろしい魔物が封印されているとは聞かされたが、父の代や祖父の代でも特に何もなかったからあまり重要視してなかったのだが、同じような魔物が復活したと新聞で目にし、ここも復活するのではないかと思っていた時に君達が来た」
「では、復活の阻止を手伝ってくれるか?」
「勿論だ。町を壊されるわけにはいかないからな」
レシィ町長は頷き、俺達と協力してくれた。
「それで、封印の宝玉は何処に?」
「町の中央に建っている時計塔の地下だ。普段は地下への階段は隠されていて、更に部屋の入り口には結界魔法が掛けられている。簡単に部屋には入れない」
二重に守ってるのか。
それなら簡単には封印は解かれなさそう。
「では、一度見に行ってみるかのう」
――――――――――――――――――――
俺達は町の中央に聳え立つ時計塔にやって来ると中に入った。
一階は上に登る階段があるだけで他は特に何もない。
「確か壁の隅にあるって言ってたっけ」
「そうじゃな。確か一つだけ出っ張っている部分があると」
壁に目を向けていると、壁を解析していたクロエが出っ張りを見つけた。
「皆さん。見つけました」
クロエが壁を指差すと、その先には他に比べて三センチ程出ている部分があった。
「これを押せば入り口が出るのか?」
「恐らくそうじゃろうが……」
「気になんのなら押してみればいいじゃねぇか」
そう言うとエンが出っ張りを押した。
すると壁の一部が下がり、壁の向こう側に階段が現れた。
「ちょっと。入り口が出たから良かったけど、もうちょっと考えて行動してよ」
「良いじゃねぇか。正解だったんだからよぉ」
「兄妹喧嘩してないで行こうよ」
階段を下りて地下に行ってみると、魔方陣が張られたドアがあった。
その魔方陣にヒレアは手を触れてみる。
「かなり高度な結界魔法ね。私でも解除が難しい程だわ」
「ふむ。それならジョルクスでも解除は困難のはず。簡単には入れんじゃろうが、油断は出来ん。町の見回りはするべきじゃろう」
「本を持った男を探せば良いのか?」
「いや、ジョルクスは透明化の魔法を使えるはずじゃ。姿を消す事ぐらい出来るじゃろ」
確かに、ドゴン火山でも透明になってた。
「ジョルクスと共にいる男がどんな奴かは分からぬが、怪しい者は注意した方が良いじゃろう。もう町に来ているかは分からぬが、昼間と夜の二組に分かれて町を見まわろう」
「じゃあ俺は夜に――」
「お主は昼間じゃ、ライデン。ワシ等は遊びに来たのではないんじゃぞ。そういう店には入ってはいかんぞ。分かったな?」
「ジーリュ、俺を見て言わないで」
「では、町の衛兵と共に見回りに行こう。まだ来ておらんかも知れんから町の入り口も見ておこう」
ジーリュの言葉に俺達は頷く。
「見回りも大事ですけど、いかがわしいお店には入ってはいけませんよ?」
「分かってるので俺見ながら言わないで下さい」
そんなに俺って信用無いの? なんかショックなんだけど。
「勇也よりライデンの方が心配じゃない?」
「入んないって! 流石に俺でも時と場合を考える!」
「現在のマスターの心拍数や体温などから、下心がある時と同じと推測します」
「ほら」
女子達はライデンを冷たい目で見る。
ライデンよりは信用があるのかな?
「まぁとにかく、見回りに行くぞ」
――――――――――――――――――――
「よし。通って良いぞ」
身体診査を終え衛兵から許可を貰うと、町の中に入った遊大は路地裏に入り、透明魔法で消えていたジョルクスが姿を見せた。
「すでに診査が始まっているか。随分警戒してるな」
「ん? あれは……」
遊大の視線の先には、美奈、厚、大貴の三人が歩いていた。
「火之浦達!? って事は、光野達はもう来てるのか!?」
「エレメンターか。どうりで衛兵が多い気がしたはずだ」
「どうするんだ? もう一体の方に行くか?」
「いや、目的は復活させた封印獣を倒させることだ。ギガンドスは倒すのが非常に厄介でな、封印獣の中で一番強いと言っても過言じゃねぇ」
ジョルクスの言葉に遊大は唾を飲む。
「今は皇蟲を復活させることを優先する。まずは封印の宝玉の場所を見つけるぞ」
「ん? 知らないのか? これまでの三体は知ってたじゃないか」
「皇蟲とギガンドスは知らねぇんだ。だからあの三体を先に復活させたのさ。いいから早く探すぞ」
「ああ」
――――――――――――――――――――
日が沈み、空が暗くなってくるのに対して、町の明かりは増えどんどん明るくなっていく。
「夜の町だけあるわね。凄い明るくなってきてる」
「ああ。人通りも増えてきてる。……あと呼び込みも」
町中を歩く人も増えると同時に、店への呼び込みをしてくる人も増えてきている。
すると、露出が多かったり若干透けている服を着た女性達が俺の元に来た。
「お兄さんなんか疲れてない? 私達の店で休んでいかない?」
「可愛い子がいっぱいの癒し空間よ」
「い、いや大丈夫で――」
女性達に迫られていると、レインが俺の腕にギュッと抱き付き、速足で俺を引っ張りその場から離れる。
「勇也……?」
「大丈夫だよ。俺はレイン一筋だから」
「ふふ……」
レインが頬を赤らめて微笑むと、二人のホスト風の男がレインに近寄ってきた。
「お嬢さん。俺達の店に寄ってかない?」
「楽しい夜になるよ」
レインが困っていると、俺はレインの肩に手を乗せて引き寄せる。
「俺の彼女に何か用ですか?」
圧を掛けて言うと、男達は顔を引きつかせて去っていく。
レインは俺に目を向けると嬉しそうに寄り掛かる。
「なんか、早く終わらせてレリードから離れたくなってきた」
「私も」




