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エレメンターズ  作者: 至田真一
灼熱の大蛇
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灼熱の決着

「用意は良いですか?」

「いつでもええで」


 建物の屋根の上から、フィーズは氷の矢、玲は普通の矢をマグマオロチに向けて放った。

 マグマオロチは矢に気付き振り向くと、命中する直前にフィーズの氷の矢は融け、玲の矢は燃えて炭になった。


「あちゃ~、やっぱり効かへんか」

「本命じゃありませんからね。おっと、攻撃が来ますよ!」


 マグマオロチが火の玉を吐くのと同時に、フィーズと玲は屋根の上から下りて火の玉を回避する。

 今度は、熱が届かないギリギリの範囲からウィド、ライデン、アルツが風の刃、電撃、土の塊を飛ばしてマグマオロチに当て、三人の方を振り向いた隙に、後頭部に向けて俺はライトカリバーから放った光線を当てて怯ませる。


「今だレイン!」

「ええ!」


 レインは大海の杖から大量の水を放つとマグマオロチに命中した。


「シィィィィィィィ!!」


 大量の水を浴びたマグマオロチは、苦しそうに声を上げる。

 やっぱり水は苦手なんだな。火には水だな。

 マグマオロチはギロっと俺とレインを睨むと、額の角が赤く光って体温が上がり、掛かった水があっという間に蒸発した。


「うっ!」

「また体温を上げやがった」


 熱の範囲を広がり、また服が溶けだした。


「うわわわわっ!?」

「は、離れよう!」


 あまりの暑さと、レインの服も溶けだして目のやり場に困るので急いでマグマオロチから距離を取った。


「どうしよう勇也……」

「ん~……。距離を取りすぎると攻撃を当てるまでに時間が出来るし、近づくと奴が放つ熱でやられる」


 体温の上限が分からないし、もしかしたらまだ上がるのか?


『皆。聞こえるか?』


 通話機からリューラの声が聞こえて俺は返事をした。


「ああ、聞こえてる」

『俺等もだ』

『僕達も聞こえますよ』

『準備が出来た。始めるぞ、フィーズ』

『分かりました!』


 あの作戦だな。

 俺はレインと目が合った後頷き、建物の陰に隠れる。

 マグマオロチが振り向くと、その先には屋根の上に乗ったフィーズとアイスベアーがいた。


「では、行きます! はぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 フィーズとアイスベアーはマグマオロチに向かって思いっ切り冷気を放つが、マグマオロチの熱のせいで数メートル前で防がれ湯気が広がった。


「ぬぅぅぅぅぅぅぅっ!!」


 フィーズは力を入れ、手から力強く冷気を放つ。

 すると、フィーズの両手に水色の紋様が浮かび上がった。


「エレメントライン!?」


 フィーズにエレメントラインが発現したのが見え、俺は目を開く。

 冷気の勢いも上がり、少しづつ押し勝ちマグマオロチに迫る。

 流石に危機を感じたのか、マグマオロチは口から火を吐くと冷気と衝突し、更に湯気が広がりマグマオロチは湯気で隠れた。

 湯気で視界を遮られたマグマオロチは、尻尾で湯気を払うと、マグマオロチの目の前にフェニックスに乗ったエンがいた。


「喰らえ、蛇野郎!!」


 エンは火で勢いを付けたフレイムソードを振り、マグマオロチの額の角を斬り落とした。

 するとマグマオロチの体温が下がったのか、暑さが和らいだ気がする。


「作戦上手く行ったね」

「ああ」


 マグマオロチの角を斬る為に俺達が考えた作戦は、フィーズの冷気とマグマオロチの熱をぶつけて発生した湯気で視界を遮った隙に、暑さに対して耐性が高いエンが角を斬る、という内容だ。

 火が効かないマグマオロチ相手では、エンは活躍出来ないんじゃないかとレインに言われた事気にしていたのか、角を斬る役を自ら名乗り出ていた。

 でも、まさかフィーズにエレメントラインが出るのは予想外だった。


「どうだぁ!? 役に立っただろ!?」

「はいはい。凄い凄い」


 レインの方を見て声を上げるのエンに対して、レインは軽い態度で言うやり取りを見て俺はつい微笑すると、フェニックスに乗ったエンに向かってマグマオロチが尻尾を振り下ろし、エンはフェニックスと共に吹き飛ばされ建物に激突した。


「ぐああっ!!」

「エン!!」

「うわぁ、マグマオロチ怒ってるわね」


 マグマオロチはエンの方を見て「シャー」と口を開けて襲い掛かる。


「痛ってぇー。……ってヤベッ!?」


 マグマオロチが来てる事に気付いたエンは急いで立ち上がりマグマオロチから逃げ出す。

 フェニックスは建物に激突した際に消えてしまった為しばらくは呼び出せず、自分の足で逃げるしかなかった。


「エンに狙いを定めた。行こう!」

「ええ!」


 俺とレインは、ライトドラゴンとリヴァイアサンを呼び出すと、背に乗りマグマオロチへと向かうと、他の皆もマグマオロチの方へと向かい始めた。

 体温が下がったお陰で随分近くまで近づけるようになったけど、それでもまだ十分暑い。


「レイン、水を!」

「ええ!」


 レインは大海の杖から水を放つと、マグマオロチに命中し動きが止まった。

 その隙に、ライトカリバーの刀身に光を纏わせマグマオロチの体に突き刺すと、落ちていた剣を拾ったリューラが俺の近くを突き刺す。

 マグマオロチは暴れ出し、俺とリューラは剣を抜いてマグマオロチから離れた。


「効いてるけど、やっぱり致命傷には程遠いな」

「ああ。……やはりこの形の剣は使いにくい」


 刀を使っていたリューラにとって、西洋風の剣は使いにくいみたいだ。刀は溶かされちゃったからな。

 マグマオロチは今度は俺とリューラを睨み口から火を吐こうとすると、ウィドがハリケーンブーメランを飛ばしマグマオロチは避けると、狙いを変えてウィドに向かって火を吐いた。


「クソッ!」


 ウィドは右手から風を放ち、火を押し返そうとするが、相手は封印獣。逆に押されて行く。


「んぐっ……」

「ウィド!」


 俺とリューラは加勢に向かうと、マグマオロチが尻尾を使って妨害してきた。

 足止めをされている間にも、マグマオロチが吐く火はどんどんウィドに迫っていく。


「ぬぅぅぅぅぅぅぅ!!」


 火の勢いに押され、ウィドの体は仰け反っていくが、それでも負けじとウィドは風を放つ。


「うおぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ウィドは押し返そうと更に力を入れ叫ぶと、ウィドの右腕に緑色の紋様が現れ、風の威力が上がった。


「エレメントライン!?」

「フィーズに続いてウィドにもか」


 エレメントラインに気付いたウィドは「へっ……!」と笑い、風で火を押し返していき、マグマオロチに命中すると、マグマオロチは吹き飛ばされ倒れた。


「どうだこの野郎!!」


 エレメントラインが発現したウィドの風で倒れたマグマオロチは起き上がると、怒ったのか俺達を見ながら「シャー」と唸るだけでなく、口から火が漏れ出ている。


「結構怒ってるわね」

「ああ。でも角を斬られたからか体温は上がってないな」


 これ以上暑くなるのは勘弁だし、これ以上長引くと俺達の体力がもたない。早くケリをつけないと。


「エレメンター! 我等も加勢する!」


 振り向くとそこには、兵士長を先頭にクラント王国の兵士達がいた。


「でも……」

「ここは我等が守る国、貴方方ばかりに任せるわけにはいかない! 行くぞぉ!!」

『おおおおぉ!!』


 兵士長の掛け声で兵士達はマグマオロチへ向かって走りだすと、マグマオロチは口を開いて火を吐こうとする。


「さっせねぇぞ!」


 アルツが大きな土の塊をアースハンマーで撃ちだすと、マグマオロチの口にはまり蓋をすると、吐こうとした火で土の塊が爆発し、口から爆煙を出しながら動きが止まり、その隙に兵士達は剣や槍でマグマオロチを攻撃していく。


「俺達だって!」


 兵士達に負けじと、俺達もマグマオロチに攻撃を仕掛ける。

 エレメントラインが出ている俺、レイン、リューラ、フィーズ、ウィドでメインにマグマオロチを攻めていく。

 ちなみにエンは、マグマオロチに火が効ないので他の皆の補助に回っている。


「シャァァァァァァァ!!」


 マグマオロチは火を吐き散らし、尻尾で薙ぎ払ったりして暴れ回ると、アルツに向かって熱線を吐いた。


「うおぉぉぉっ!?」


 アルツは土の壁を地面から生み出して熱線を防ぐが、熱線に押されて土の壁が崩れていく。


「また壊されて、たまるかぁ!!」


 アルツは叫びながら力を入れると、両手に茶色の紋様が現れ、土の壁の崩れた箇所が元に戻り、さらに土の壁が大きくなった。


「アルツにもエレメントラインが!?」

「おっしゃぁぁぁ!!」


 アルツは土の壁の横から飛び出すと、マグマオロチの顔に向かってアースハンマーで殴り、マグマオロチは建物に叩きつけられた。


「弱ってきてる。もう少しだ!」


 息を切らしているマグマオロチは、口に火を溜めると、空に向かって放ち、火が弾けて無数の火の玉を降り注がせる。

 俺達は降ってくる火の玉を避けると、フィーズがマグマオロチに向かって冷気を放つ。

 冷気を浴びたマグマオロチは、負けじと火を吐こうとすると、レインが水を放ち、濡れたマグマオロチはみるみる凍りついていく。


「よし。ウィド、アルツ! 来てくれ!」


 俺は二人を呼んで考えた事を伝えると、二人と共にライトドラゴンに乗ってマグマオロチの頭上へ飛ぶ。


「今だ! 二人共頼んだ!」

「おおっ!」

「任せろ!」


 マグマオロチが凍っていき動きが止まるのを確認すると、アルツはライトドラゴンから飛び降り、続けてウィドも飛び下りると、マグマオロチに向かって落ちて行く。

 アルツはアースハンマーを振りかざすと土を集めて鎚を大きくし、ウィドは両手の間に風を溜める。

 マグマオロチに近づくと、アルツはアースハンマーを振り下ろした。


「「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」


 アースハンマーをマグマオロチに当てた瞬間、ウィドの溜めた風でハンマーを押し、マグマオロチを叩き潰した。

 マグマオロチは地面にめり込まれると、尻尾が小刻みに震え、やがて力尽きた様に尻尾が地面に落ちた。


「やった……のか?」


 エンがそう言うと、マグマオロチの体が炭の様に黒くなって、そして崩れていった。


「はぁ……はぁ……。……おっしゃぁぁぁっ!!」


 ウィドが叫ぶと俺達や兵士達は勝利で喜びの声を上げる。

 こうして俺達は、三体目の封印獣を倒すことが出来た。

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