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エレメンターズ  作者: 至田真一
灼熱の大蛇
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灼熱の戦い

「皆さん! 早くお城へ!」


 避難を手伝っている林子、楓華、玲は住民を城へと誘導していた。


「もおぉ……すっごい暑い……」

「我慢やで楓華ちゃん。光野君達がマグマオロチを足止めをしてる間に避難を終わらせなあかんから」

「分かってるよぉ。でもアイツのせいかな? 気温が上がってる気がする」

「そうですね。せめて体温調整の魔法が使えれば良かったんですけど……」

「え? そんな魔法があるの先生?」

「はい。魔法の本を読んでいたら見つけました。前に雪山へ行った後に覚えようとしたのですが……」

「あ~使えてほしかった」


 楓華が肩を落とすと、三人の元に奏が走ってきた。


「おーい!」

「あ、奏。無事だった?」

「ええ。もう一体何が起きてるの? 木が燃えて地面が溶けたと思ったら、おっかない蛇が出てくるし」

「あれは火山に封印されとった怪物や。せやから、早よ城へ避難してな」

「わ、分かった」


 奏が城へ走りだそうとすると、エレメンターと戦っているマグマオロチが空へ向けて巨大な火の玉を吐くと、火の玉は弾けて小さな火の玉が城へ向かって降り注いでいく。


「うわっ! これはヤバい!!」


 火の玉が城に当たりそうになると、城に光の壁が張られ火の玉を防いだ。

 城の前には、城に向かって手をかざしているヒレアがいた。


「ヒレアさん! もしかしてこれって?」

「私の結界魔法よ。さぁ早く」

「は、はい」


 奏は結界を通り抜け城の中へ避難する。


「まだ避難が終わってないわ。急いで」


 林子、楓華、玲の三人は頷き避難誘導を再開した。


「皆、頼んだわよ」


――――――――――――――――――――


「危なかった。ヒレアの結界で城は無事だ」

「城が壊されちゃったら大変だもんね」

「さて……どうするか」


 俺はマグマオロチを倒す方法を考える。

 奴から高温の熱が放たれているせいで、近づくだけでかなり暑い。

 しかもまともに休まずに火山、砂漠と移動してきてこの暑さだから、体力がいつも以上に奪われていく。

 そのせいか、もう皆は息を切らしている。


「この戦いで一番の敵は、暑さかも」


 マグマオロチに皆は攻撃を当てていくが、暑さのせいか皆の力が入っていない気がする。

 俺もなんかボーッとしてきた。


「あっちぃぃぃ! この町ってこんなに暑かったか!?」


 あまりの暑さにライデンが叫ぶと隣のクロエが解析した。


「マグマオロチが放つ熱で周囲の気温が上昇しています。私の冷却機能も正常に作動するかわか、ワカカカカカりませ……マセ……ン……」

「ってクロエ大丈夫か!!?」


 暑さのせいかクロエの様子がおかしくなり、なんか煙も出てきてる。


「悪ぃ! ちょっとクロエ運んでくる!」

「ああ! 気を付けろ!」


 ライデンはクロエを背負い城の方へ走りだす。

 あの硬い鱗に、この暑さで体力や思考の低下。

 今回も一筋縄じゃ行かないな。

 俺は両手にエレメントラインを出すと、ライトカリバーから光線を放ちマグマオロチに命中した。

 マグマオロチは首を振り煙を払うと、口から熱線を吐いた。

 俺は熱線を躱すと、熱線は建物に当たり、建物が溶けていった。


「うえっ!? あんなの掠っただけで重傷だぞ!」


 今度はレインがエレメントラインを出して水を放つと、マグマオロチは躱した。

 やっぱり水は苦手なんだな。


「勇也! 俺達も戦うぞ!」

「大貴!? 厚!?」


 厚と大貴が剣とガントレットを振り下ろしマグマオロチの胴体に当てた。

 すると二人の剣とガントレットが溶けだした。


「えっ!?」

「あっつ!!」


 厚は剣を手放し、大貴は急いでガントレットを外すと、二人の元に美奈が近づく。


「二人共大丈夫!?」

「ああ……」

「触れただけで溶けるなんて、なんて熱さだ」

「大丈夫か!?」


 俺は三人の元に行くと、マグマオロチが咆哮を上げて額の角が赤く光ると、周囲が更に暑くなった。


「うっ! 体温を上げてきた!」

「うわっ! 服が!」


 厚の着ている胸当てやインナーが溶け出すと、俺達の着ている服も溶けだして穴が開いてきた。


「ヤバい! 急いで離れよう!」


 マグマオロチから距離を取ると、見ていた他の皆もマグマオロチから離れていく。


「服が溶けるってどれだけ熱いのよ!?」

「魔海龍とは別の理由で近づけないな。触れることが出来ないんじゃあ、離れて攻撃するしかないな」

「……またかよ」

「?」


 大貴が何か呟き首を傾げると、エレメントラインを出したリューラがマグマオロチに向かって真っすぐ飛び、額に刀を突き刺した。

 しかし、突き刺さった刀は熱を帯びて赤く光りリューラは刀を手放すと、刀は溶けてしまった。


「くっ……!」


 リューラは歯を食いしばると、アルツとウィドが土の弾丸と風の刃を放ち命中させると、マグマオロチは二人に向けて尻尾を叩きつける。


「危ねっ!」

「おわぁ!」


 二人は避けると、尻尾が当たった地面が溶けだした。


「アイツの攻撃の一つ一つが致命傷になるな」

「くそぉ、舐めやがって! ……はぁ」


 暑さのせいかウィドはもう息を切らしている。

 マグマオロチが今度はアルツに向かって火の玉を吐くと、アルツは地面に触れ土の壁を生み出して防ぐが、土の壁の中心が赤く光って溶け出し土の壁を貫通し、アルツはギリギリの所で避ける。


「えぇ~、オイラの土が溶かされちまった」


 マグマオロチは尻尾を薙ぎ払うと、その先にスチアがいて、スチアは全身を鉄化させて防御した。


「だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 熱さでスチアは悲鳴を上げ吹き飛ばされた。


「スチアの防御力でも駄目か。近づけば尻尾の攻撃や熱でやられ、離れれば高温の熱線や火の玉で攻撃される。触れることも出来ないし……どうするか」


 マグマオロチを倒す方法を考える為、俺達は一回距離を取って集まると、避難誘導を手伝っていた風間と氷室が合流してきた。


「おーい……って、皆どうしたの? 服溶けてない?」

「マグマオロチの体温で溶けちゃったのよ、近くにいただけで」

「どんだけ熱いねん」

「先生は?」

「ヒレアと一緒に城の中にいる」


 ヒレアが城に結界を張っているから大丈夫だな。

 すると今度は調子が悪くなったクロエを城に運んでいたライデンが来た。


「おーい」

「ライデン。クロエは?」

「熱さにやられて城に置いてきた。しばらく冷やせば元に戻るはずだ」


 ライデンがそう言うと、俺達はマグマオロチを倒す方法について話し合った。


「それで……どうやって倒す?」

「武器が溶かされる危険性がある以上、剣による攻撃は避けた方が良いな。……私の刀の様になるかもな」

「僕と大貴の武器も溶かされちゃったしね」


 厚がそう言うと、大貴は歯を食いしばり拳を強く握る。


「これじゃあ私も何も出来ないわね。触れれば火傷なんかじゃあ済まないわ」

「僕もだよ」

わたくしも相性が悪すぎです」


 遠距離攻撃が無いミスクとビト。草のエレメンターのレイフは沈んだ顔で言う。


「やはり、マグマオロチの体を冷やすしかありませんね」

「私の水とフィーズの氷かしら?」

「はい。あとは、美奈の水か氷の魔法でしょうね」

「私の魔法って効くの? アイツの体温は尋常じゃないわよ」


 美奈はマグマオロチを見て言う。

 マグマオロチが近づくだけで、建物は溶けていく。


「少しでも冷やせれば問題ないだろう。実際、奴は水を嫌っていたしな」


 確かにレインの水だけは避けていたな。


『あ、ああ……』

「ん?」


 耳に着けている通話機から突然声が聞こえた。

 この声は……クロエか?


『聞こ……ますか?』

「クロエ?」

『すみま……せん。通話機……うのちょ……子がわ……くて』

「まぁ言いたいことは分かるから大丈夫だけど、どうしたの?」


 俺は通話機を耳から外すと、ライデンが付けた新機能の拡声機能……いわゆるスピーカーの状態にして皆に聞こえるようにした。


『マグ……オロチを解……きをしたところ……たいの角で体……んをコ……トロールしてい……ようです。つ……を破壊す……ば、た……温を下……られるはずで……』


 所々途切れて完全に聞き取れず、通話が切れてしまった。


「クロエの奴なんて言ったんだ?」

「恐らくですが、マグマオロチは額の角で体温をコントロールしているので、角を破壊すれば体温を下げられるはず。……と言ったかと思われます」

「ホントかよ?」

「だが、本当なら勝機があるかも知れない」

「ああ。よし、狙うは額の角だ!」


 俺達は頷き、マグマオロチへ向かった。

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