森林と遺跡
島の中央の遺跡を目指し、俺達はガルンバ島の森林を進んでいた。
「なんかジメジメして暑い……」
「この辺り一帯は基本的に気温が高いからのう」
「砂漠よりはマシでしょ。我慢しなさいよ楓華」
「う~ん」
美奈が風間を叱ると、風間は歩き出す。すると……。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
突然風間が悲鳴を上げて俺達は驚く。
「おい何だよ? ビックリしたなー」
「あ、足に! 足に何か付いてる!!」
騒ぐ風間の右足に、ナメクジみたいなヌメヌメした小さな生き物が付いている。
「これはヒルじゃな。血を吸っておる。美奈よ、魔法の火で取ってあげなさい」
「分かった」
美奈は杖の先に魔法の火を点けて近づけると、ヒルは風間の足から取れて地面に落ちた。
「うわぁ~、跡ついてる」
「ジッとしてて。治してあげるから」
ヒレアが回復魔法で血を吸われた跡を治した。
「皆、気を付けて進むんじゃぞ。ヒルが付いておったら急いで取るんじゃ」
俺達は再び森林の中を進む。
途中、虎の魔物や植物型の魔物に襲われ、ヒルにも何度か噛まれたが、どうにか遺跡の目の前まで来られた。
「あぁぁぁ鬱陶しいなこのヒル!」
エンは苛立ちながら、手や足に付いているヒルを火で落としていく。
俺も手に付いているヒルを光のエレメントで落とす。
「レインは大丈夫?」
「ええ。大丈……ん?」
「どうした?」
「なんかムズムズするの」
不満そうなレインは自分の胸の谷間を覗き込んだ。
「……」
「どうしたの?」
「……ここにヒルが」
「えっ」
俺はゆっくりレインの胸の谷間を覗き込む。
すると一匹のヒルが吸い付いていた。
「何でこんな所に」
「勇也、取って」
「いやいや、これは流石に無理!」
「え~、ひゃっ!?」
横から美奈がレインの胸の谷間に手を突っ込むとヒルを剥がした。
「痛っ! ちょっと、無理に剥がさないでよ!」
「別に良いでしょ、この淫乱女」
「誰が淫乱よ!」
まだこの二人、喧嘩止めないのかよ。
噛まれた所をヒレアが回復魔法で治し、遺跡の入り口に近づく。
「この中に宝玉があって、それが壊されると封印が解けるんだっけ?」
「そうじゃ。中は複雑ではないから迷うことはないぞ」
遺跡に入ろうとすると、クロエが何かを見つけた。
「皆さん。これをご覧下さい」
「ん?」
クロエが見つけたのは、遺跡の中へ進んでいる一人の足跡だ。
「誰かが遺跡に!?」
「マズいのう。急ぐぞ!」
俺達は急いで遺跡の中に入り奥へ急いだ。
ジーリュの言う通り、遺跡の中は殆ど一本道で迷うことなく奥へ進んだ。
「宝玉がある部屋はこの先じゃ!」
ジーリュが言った次の瞬間。奥からパリンッ! とガラスが割れるような音がした。
「今の音は……!?」
「遅かったか!?」
――――――――――――――――――――
「ぬおぉぉぉ!」
荒井はボウリング玉程の大きさの宝玉を持ち上げ地面に叩きつけると、宝玉は粉々に砕け散り、ジョルクスはニヤリと笑う。
「よくやった遊大。あとは魔海龍が復活しエレメンター共が倒せば、二体目の封印獣の魂が手に入る」
「あ、ああ……」
荒井は不安気な表情でジョルクスを手に持つ。
すると部屋に向かっている足音が聞こえてきた。
「あの階段を下りた先じゃ!」
「チッ。もう来たか。ここで見つかるのはマズい。早く隠れろ」
「あ、ああ」
荒井は部屋の壁際の柱の陰に隠れると、部屋の中に勇也達が駆け込んできた。
「遅かったか」
勇也達が粉々になった宝玉に目を奪われている隙に、荒井は足音を立てない様に部屋を出て階段を上る。
「っ! 誰だ!?」
リューラが振り向くと、誰かが階段を駆け上っていくのが一瞬見えた。
「どうした?」
「誰かが部屋を出ていくのが見えた。恐らく封印を解いていく例の男だろう」
「なら、早く追いかけ――」
「いや、間に合わん!」
「え? ……うわっ!?」
突然地面が揺れ、壁や地面から水が溢れ出してきた。
「皆、急いで遺跡から出るんじゃ!」
勇也達は水が溜まっていく部屋を後にし、遺跡の出入り口まで走った。
――――――――――――――――――――
「はぁ……はぁはぁ……」
遺跡を出た俺達は息を整いていた。
「クソ、間に合わなかったか!」
「さっきの男は見当たらないし、逃げられたかも」
「逃げられてしまったのは残念じゃが、今は魔海龍じゃ。もうすぐ復活するぞ」
ジーリュがそう言うと、島が揺れ、遺跡から巨大な水柱が上がった。
更に、周りに小さな水柱が上がり、足元に水が溜まっていく。
「こりゃあいかん! 空に逃げるんじゃ!」
ライトドラゴン、青龍、フェニックス、スカイイーグルを召喚して背に乗り飛び上がる。
空からガルンバ島を見下ろすと、島の至る所から水柱が上がり、島を水がどんどん浸食していった。
「なんて光景だ……。そう言えばガデン族は?」
「海岸の方へ避難すると言っておった。海岸へ行ってみるんじゃ」
俺達は海岸へ飛んで行くと、何隻もの小舟に乗ったガデン族達がいた。
「いた。無事みたいだ」
「うむ。じゃが、この様子だと村は……」
島中に水が流れてしまったこの状況じゃあ、確かにもう村は無くなってしまったかもしれない。
ガデン族の族長が空にいる俺達に気付き、俺達は近づく。
「スマヌ族長、間に合わなかった」
「やはりそうですか……」
「ワシ等は魔海龍を倒す。お主等は何処か安全な所に隠れていてくれ」
島の上空へ移動し、魔海龍を探す。
しかし魔海龍らしき魔物が全く見当たらない。
「何処にいるんだ、魔海龍は?」
「駄目だ! こっちにも見当たらない!」
空から島中を探すが、魔海龍が一向に見つからない。
すると、レインが海の方をジッと見つめている。
「どうしたの?」
「なにか……大きなものが海の中を進んでるの」
「海の中……まさか!」
「それがきっと魔海龍じゃ! 今何処におるか分かるか!?」
「ガルンバ島から離れて、真っすぐ泳いでる」
レインが指さした方角を見て、ジーリュは目を見開く。
「いかん! あの方角はカランの町じゃ!」




