島の部族
グレスさんから例の男の情報を聞いた俺達は、召喚獣に乗って早速向かった。
「目撃されたのはカランと言う港町じゃ。ということは……」
「どうした?」
「カランから西にあるガルンバ島。そこには封印獣の一体、魔海龍が封印されておる」
「じゃあ次に狙っているのは、魔海龍か」
「恐らくな。急ぐぞ」
空を飛び続け進んでいると、前方に海に面した町が見えた。
「あれがカランの町じゃが、今はガルンバ島へ急ぐぞ」
カランの町を素通りして、俺達はガルンバ島を目指した。
海の上をしばらく飛ぶと、前方に一つの島が見えた。
「ガルンバ島が見えたぞ!」
召喚獣は島の砂浜に下りると、俺達は背から降りて召喚獣を戻す。
辺りを見渡すと、レイフが何かを見つけた。
「皆さん。あれを見て下さい」
レイフが指さした先には、一隻の小舟が砂浜に打ち上がっていた。
「あの小舟……漂流して来た物には見えんな」
「まさか、封印を解こうとしている奴のか!?」
「その可能性が一番高いでしょう」
砂浜には、この小舟以外打ち上げれている様な漂流物が無い。
フィーズの予想が一番高いかもしれない。
「なら急いだ方が良いな。魔海龍の封印ってどうやって封印されてるの?」
「島の中央にある遺跡の中にある宝玉を壊されると封印が解ける。まずは遺跡を目指すぞ」
俺達は頷いて島の中に入ろうとした。
すると、島の中から褐色の肌に胸や腰を布で巻いただけの、如何にも部族って感じの人達が近付いてきて、俺達を囲むと石の槍を向ける。
「レマト!」
「え?」
「ダノモニナ、チタエマオ?」
「えっと……何て言ってるの?」
聞いたことが無い言葉に俺は動揺する。
「こやつ等はガルンバ島に住むガデン族と言う部族じゃ。ワシなら言葉を知っておるから任せてくれ」
ジーリュは俺の頭から飛ぶとガデン族の言葉で話した。
「イナハデノモイシヤアハラシワ。イタシガシナハトウヨチクゾ」
ジーリュが何か話すが、ガデン族はまだ俺達を警戒している。
すると奥から二人のガデン族と一緒に、長い白い髭を生やした老人が杖を突きながらやってきた。
「チタエマオ、ヨメサオヲキブ」
老人が何か言うと、ガデン族は武器を下ろした。
「レガサ」
老人の言葉に武器を持っていたガデン族が島の中に戻ると、老人はジーリュに目を向ける。
「久しぶりですな。ジーリュ殿」
「久しいのう、族長」
老人は俺達も分かる言葉で話した。
族長って事はこの人がガデン族で一番偉い人って事か。
だから言葉も分かるのかな?
「その者達は、エレメンターですか?」
「そうじゃ。当代のな」
「皆さん、先ほどは同族が失礼をしました。少し前に島を襲った者が現れまして、皆警戒していたのです」
「島を襲ったじゃと? 詳しく聞かせてくれんか」
ガデン族の族長に案内され、俺達はガデン族の村に来た。
建物とか如何にも部族って感じだ。
村の奥へ進むと、族長の家に招かれた。
「それで族長よ。島を襲った者が現れたと言っておったが、詳しく教えてくれんか?」
「ええ。数日前の事です。島に男と女の二人組がやって来たのです。その二人組の内、女の方が水を操って、こことは別の村を襲ったのです」
「水を操る……?」
「はい。青い髪をした女で、水を操るあの力は……魔法には見えませんでした」
「青い髪……魔法とは違う力……」
その話を聞いた俺達はレインに目を向ける。
「なんか……私みたいじゃない?」
「お嬢さんは水のエレメンターなのですか?」
「え、ええ……」
「そうですか。確かにあの女はお嬢さんと髪の色が似ていましたが、髪は短かったです」
「大丈夫だよレイン。レインは今日初めてこの島に来たんだから」
「そ、そうよね」
でも何者なんだろう? その女は。
「そういえば族長よ。女の他にもう一人、男がいたと言っておったな」
「はい。男の方は、女が暴れる様子をじっくり見ていただけで、しばらくして二人共島を出ていきました」
「何のために襲って来たんじゃ? 封印獣が狙いではなさそうじゃし……っ!」
ジーリュは大事な事を思い出し本題に入った。
「そうじゃった! 族長よ!」
「どうされましたか?」
「実は、魔海龍の封印を解こうとしておる者が島に上陸しておるかもしれんのだ」
「何ですと!?」
ジーリュはこれまでに起きたことを話した。
ワーフでガロスと戦ったことや、封印を解いた者がいたことを。
「その者が、この島に現れたと?」
「恐らくな。もし本当に来ておったら魔海龍を開放するかもしれんのじゃ」
「我々は先祖より代々、魔海龍の封印を守って来ました。もし復活してしまったら、あの災厄が再び起きてしまう……!」
族長は震えながら言う。
「あの災厄?」
「……ガルンバ島は昔、ガルンバ諸島と呼ばれておった」
「諸島? この辺に島はここしかねぇぞ?」
「……もしかして」
「そうじゃ。かつてこの辺りにあった25の島の内、24の島が魔海龍によって海の底に沈められた」
それを聞いた俺達は息を呑む。
そんなに多くの島を沈めたのか!?
もし復活したら、この島が危ないじゃん!?
「ワシ等はこれから遺跡へ向かう。……間に合わなかった時に備えて、島をいつでも出られる準備をしてくれ」
「……分かりました。皆にも伝えておきます」
「うむ。では行くぞ」
俺達は頷き、族長の家を後にして島の中央にある遺跡へ向かった。




