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エレメンターズ  作者: 至田真一
エレメンター本格始動
60/202

王国からの依頼

 今俺達は、依頼で森に現れる盗賊退治に来て、今まさに盗賊と戦闘中だ。


「死ねぇぇぇ!」


 盗賊が剣を振り下ろしてくると予見の盾で防ぎ、光のエレメントで強化した足で蹴り飛ばすと、盗賊は木に激突して倒れる。


「ぐはっ!」

「ふー……。やっぱりまだ人相手は緊張するなぁ」

「勇也。こっちも終わったわ」


 振り向くとレインがやってきて、後ろには盗賊が複数倒れており、エン達が縄で縛っている。


「こっちは終わったな。あとは厚達だけど……」


 厚達、地球組は今回が初の対人戦だ。

 サポートに回っている先生でも緊張するはず。


「ちょっと様子を見に行ってくる」

「じゃあ私も」


 レインと一緒に厚達の元へ向かうと、厚達はまだ戦っていた。

 けど善戦していて、盗賊は残り三人だけだ。


「【アイスショット】!」


 美奈が魔法で氷の弾を撃つと、盗賊の足を凍らせて動きを止めた。


「クッソ! ……っ!?」

「はぁぁぁ!」


 厚が剣の腹を盗賊の頭に叩きつけると盗賊は倒れた。

 大貴も盗賊が振り下ろしてきた斧を躱して盗賊の腹を思いっきり殴り盗賊を倒す。

 氷室が矢を放ち盗賊の足を射抜くと盗賊は膝を着き、風間が膝蹴りを顔に当てて盗賊は倒れた。


「痛ったー! 膝蹴り結構痛い!」

「せやったらやらな良かったやん」


 膝を押さえる風間に氷室がツッコむ。


「犯罪者とは言え、人と戦うのは緊張するね。殺さない様にしないといけないし。先生の強化魔法のお陰で助かりました」

「いえ、皆さん無事で良かったです。……あああああああ怖かったぁぁぁ!」


 先生は膝から崩れて声を上げる。

 そりゃあ、こんな殺意むき出しの奴らに襲われたらな。


「今回はこれで済んだが、時には命の奪い合いをすることもある。その時が来るまで、覚悟は強めておくんじゃ」


 厚達の戦いを見ていたジーリュが言う。

 俺もまだ命の奪い合いまではしたことが無いから、そこまでの覚悟があるのか自分でも分からない。


「……とりあえず、盗賊達を拘束して町まで連行しよう」

「そうじゃな」


 盗賊達を縄で縛り、エン達と合流すると、盗賊を連れ町まで行き依頼を終えた。


――――――――――――――――――――


 盗賊退治の依頼を終えた五日後。俺達の元に新たな依頼が来て小森先生が持ってきた。


「送り主は……クラント王国大臣サドン」

「クラント王国か」


 依頼の送り主の名を聞いたジーリュが反応した。


「ジーリュ、クラント王国って?」

「砂漠の国じゃ。フレイムソードが封印されていた洞窟が砂漠にあったじゃろ? あそこもクラント王国の領地なんじゃ」

「砂漠かぁ。暑そう」

「実際暑いわよ」


 あの時は砂漠を歩いて大変だったけど、今回は召喚獣で空を飛べるからマシだな。


「それで先生。依頼内容は?」

「それが、国の一大事としか書かれていません。詳しい話は直接会ってお話する、と」

「一大事? なんかヤバそうだな」

「……とにかく、クラント王国の王都へ向かおうぞ」

「ああ」


 俺達は屋敷の庭に出て召喚獣を呼んで背に乗ってクラント王国へ向かった。


――――――――――――――――――――


 クラント王国を目指している俺達は、召喚獣に乗って砂漠の空を飛んでいた。


「あっつ~~」


 青龍の背に乗っている風間が汗を流しながら言う。

 俺も口には出さないが同じ気持ちだ。前に来た時と同じぐらい暑い。

 まぁ今回は歩かないだけマシだな。


「見えたぞ。クラント王国の王都じゃ」


 ジーリュがそう言うと、前方に高い壁に囲まれた大きな町があり、奥には大きな白い城が建っている。

 町の入り口の前に下りて召喚獣を戻し王都に入る。

 城下町には、如何にも砂漠らしく頭にターバンを巻いている人を多く見かけ、馬ではなくラクダが歩いている。


「むぅ~……」

「どうしたのジーリュ? そんなに唸って」

「いや。やはり、以前来た時に比べて活気が無い気がしてのう」

「そうなのか?」


 初めて来たから分かんないけど、よく見てみると、確かに何か沈んだ顔の人が多い気がする。


「やはり、“あの事”が結構効いたのかもな」

「あの事って?」

「うむ。砂漠の移動の休憩も兼ねて話しておくか」


 城下町の酒場に入り、俺達は席に座る。


「それでジーリュ、話って?」

「うむ。10年前までのこの国についてじゃ。10年前まで、この国の王はとても良い人物じゃった。じゃが、10年前に王と王妃が病で倒れ亡くなり、一人娘が王位に付いた。それから、この国からはあまり良くない話ばかり耳にすることになった」

「例えばどんなだ?」

「この国では貴重な水を必要以上に城に蓄えるせいで城下の者があまり水を使えなかったり、政治に関しては何もせず全て家臣の者にやらせておったりなどじゃ。近年、国の治安が悪くなってきているという話も聞く」

「……もしかして、国の一大事ってその事なんじゃ?」

「絶対そうよね」

「ともかく。まずは城に行き、依頼主である大臣から話を聞くとしよう」


 俺達は酒場を出ると城へ向かった。

 城の正門前にいる兵士に大臣の依頼で来たことを伝えると城の中に案内された。

 初めて城に入ったけど、やっぱり広いな。住んでる屋敷とは比べ物にならない。


「あっ、サドン大臣、丁度良い所に。エレメンターの方々がいらっしゃいました」


 兵士が足を止めると、前方にやつれた40代ぐらいの男性がいた。


「おぉ来て下さったか、エレメンターの方々! ジーリュ殿にヒレア殿も!」

「ひさしぶりじゃなサドン」

「なんか……あなた痩せてない?」

「やっぱり分かりますか……。では、依頼の事も含めてお話しますので、来客室へ」


 サドン大臣について行き来客室に入り、部屋のソファや椅子に座る。


「実は先日、城にこのような物が送られました」


 サドン大臣がテーブルの上にある事が書かれた紙を置いた。


『国民を蔑ろにする愚かな女王よ。即刻王位を降りなければ命は無い』

「これって、脅迫ですか?」

「ええ。女王様はさっさと犯人を見つけなさいと申しておりましたが、今女王様に不満を抱いている者は城で働く者を含めて国中にいます。見つけることなど困難ですし、城の者の可能性を考えると女王様の警護もあまり任せられません」

「それでワシ等の元に依頼を」

「はい。もし女王様の身に何か起きたら、私はあの世で陛下に合わせる顔がありません。どうか、お願いします!」


 サドン大臣は勢いよく頭を下げて俺達にお願いする。


「わ、分かりました。頑張って犯人を捜します」

「ありがとうございます!」


 ……と言っても、どうやって捜すか。


「脅迫状を送ってきた奴を捜すにしても、どうやって捜す?」

「王都や城にいる者とは限らんからのう。サドンは犯人に心当たりは無いか?」

「ありません。先程申した通り、女王様に不満を抱いている人は国中にいます。誰なのか想像つきません」


 国中にいるんじゃあ誰もが怪しく感じるなぁ。


「命は無いと書かれておったし、犯人捜しだけでなく、女王の護衛も必要じゃな。サドンよ、女王は今どこにいるんじゃ?」

「い、今……女王様は、大浴場にて御入浴中で……」

「はあ? 命狙われてるかもしれねぇって時に、呑気に真っ昼間から風呂かよ?」

「すみません。ここは砂漠の国の為、肌が乾燥しやすいからと、女王様は一日に最低五回は御入浴をなさいます」

「最低五回じゃと? この国では水は貴重じゃからと、入浴は最小限と先代の王が言っておったではないか」

「私もそう言ったのですが、女王様は聞いて下さらず。お陰で町の水は先代国王様の時と比べてかなり少なくなってしまったのです」


 そう言えば、さっき寄った酒場の水の値段結構高いなと思った。本当に貴重だからなんだな。

 にしても、大浴場なら結構水使うのに、一日最低五回って凄い量だろ。


「お主はこれまで何も言わなかったのか?」

「何度も言いましたが……女王様は我々家臣の話を聞いてくれないのです」

「完全に心を閉ざしているようじゃな」

「無理もないわね。早くに両親を亡くしたのだから」

「はい……」


 親に会えない……か。


「とにかく今は、犯人捜しと女王の護衛じゃな。任せてくれ」

「はい。お願いします」


 サドン大臣が再び頭を下げると、俺達は女王の護衛と犯人捜しを二手に分かれて行うことにした。

 女王の護衛には、リューラ、エン、ウィド、アルツ、ビトがすることになり、この五人以外で犯人捜しを行うことになった。


「私達は女王の元へ行ってくる」

「ああ。分かった」


 来客室を出てリューラがそう言うと、ウィドが不満げな顔で口を開く。


「ったくよぉ。何で俺まで女王の護衛なんだ?」

「戦闘力が高い者を護衛に選んだんじゃ」

「だったら勇也やミスクもだろ!」

「ミスクのエレメントは犯人捜しの役に立つと思ってな。勇也は……レインと別々にしてしまうと怒られそうだからじゃ」


 確かにそうだ。

 ジーリュは大分分かってる。


「ホント面倒くせぇなお前等」

「誰が面倒くさいよ。さっさと兄さん達行ってきたら?」

「はいはい。行きますよぉ」


 エン達は女王様の元へ向かった。


「じゃあ、こっちも犯人捜しと行きますか」

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