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エレメンターズ  作者: 至田真一
エレメンター本格始動
54/202

捜索依頼

「おはよう、勇也」

「……おはよう」


 朝起きると、レインが目の前にいた。

 もうこの光景も当たり前の様に今は感じている。

 するとレインは目を閉じて俺に顔を近づけ――。


「せいっ!!」

「痛っ!?」


 ――ると、静かに部屋に入ってきた美奈がブーツでレインの頭を引っぱたく。


「ちょっと、何するのよ!?」

「それはこっちの台詞よ。また勇のベッドに潜り込むなんて」

「別に良いじゃない。恋人同士なんだから」

「良くないわよ! この夜這い女!」

「誰が夜這いよ!」


 この二人の喧嘩も、もう見慣れてしまった。

 ……にしても、何で美奈はこんなにレインと喧嘩するんだ?

 地球にいた時は他の子とここまで喧嘩したこと無いのに。


――――――――――――――――――――


「職員の捜索ですか?」


 朝食を終えて一時間経った頃、グレスさんが訊ねて来て一つの依頼を持ち込んできた。


「ウォルー山地という場所でギルド職員が魔物の生態調査に向かったんだが、半月経っても音信不通でな。依頼を出してもすぐに冒険者が受けるとは限らない。そこでお前達に頼みに来たんだ」


 何か遭ってから依頼を受けていたら、確かに遅いもんな。


「魔物がいる場所にギルド職員だけが行ったのか?」

「いや、確か護衛として冒険者が三名程いたはずだ」

「では、魔物にやられた可能性は低いでしょうか?」

「あの辺りは強い魔物は滅多にいないが、護衛の冒険者はランクが高いわけでもない。何か不測の事態が起きた可能性もある」


 グレスさんの話だと、ウォルー山地はとても広いらしい。

 人数も多くて、空からも探せる俺等なら、すぐに見つけられるかもしれない。


「引き受けてくれるか?」

「はい。勿論です」

「すまない」


 グレスさんは頭を下げると屋敷を後にした。


「では向かうとするかのう」

「ああ」


 俺達は準備を終えると、庭にライトドラゴン、青龍、フェニックス、スカイイーグルを召喚して背に乗った。


「じゃあ行こう」

「ちょっと待って」


 青龍の背に乗った美奈が突然言い出した。


「何であんた勇の後ろに乗ってるの? あんたの召喚獣も飛べなかったっけ?」


 美奈は俺の後ろにいるレインを指差す。


「リヴァイアサンは速く飛べないのよ。だから良いじゃない」


 レインは俺に抱き付くと背中に柔らかい物が当たり、美奈が険しい顔で睨む。


「なぁ、さっさと行こうぜ」

「そうじゃな。早く行こうぞ」

「あ、ああ」


 ライトドラゴン達が空に飛び上がると、ウォルー山地へ飛んで行った。


――――――――――――――――――――


「わぁぁぁ、風気持ち良い!」


 青龍の背に乗っている風間は手を伸ばして風を浴びていた。


「まさか龍の背中に乗って空を飛べるなんて思えへんかったわ」

「だねぇー」


 青龍の背にはリューラと地球組が乗っている。

 龍の背中に乗って空を飛んでいる、という状況に少し興奮しているように見える……が。


「ひぃぃぃ!」


 小森先生だけはプルプルと震えながらリューラにしがみついている。


「なぁ。あんたは一応教師なんだろ? そんなに怖がってて良いのか?」

「そ、それはそうなんですけど……私……高い所苦手なんです」


 怯えながら言う先生に、リューラは呆れ顔になる。

 先生の方が年上のはずなのに、背が高いせいかリューラの方が年上に見える。


「林先生結構怖がりだもんね。去年の文化祭でお化け屋敷って決まった時、顔ひきつってたし」

「そう言えばそうだったわね」

「あんまり恥ずかしい話をしないで下さい~」


 先生が恥ずかしがってからしばらく飛び、目的地のウォルー山地が見えた。


「見えたぞ。ウォルー山地じゃ」

「広いな」

「本当ね」

「うむ。じゃが、この人数なら普通より早く見つけられるかもしれん」

「とりあえず、まずは地上に下りよう」


 地上に下りると、召喚獣の背から下りて召喚獣を戻し、捜索前に話し合いを始めた。


「ウォルー山地は広い。じゃから分かれて探そうと思うが……ライデン、通話機はどのくらいあるんじゃ?」

「新しく二つ出来たから四つだな」

「そうか。クロエに通話機の機能がある事を考えると、五組に分かれて捜索するとしよう。メンバーは、そうじゃなぁ……」


 能力や個人の相性などを考えた結果、メンバーは……。

 一、俺、レイン、ジーリュ、厚、大貴、美奈

 二、リューラ、ヒレア、小森先生、風間、氷室

 三、エン、ライデン、クロエ

 四、ミスク、レイフ、フィーズ

 五、ビト、ウィド、スチア、アルツ

 このように決め、ライデンから通話機を受け取り、俺達はウォルー山地に入る。


――――――――――――――――――――


「ねぇ~、歩いて探すの? 龍に乗って空から探した方が良くない?」


 歩いて捜索してしばらくすると楓華が訊ねた。


「この山脈には森があった。森の中にいたら空からでは見つけにくいだろ」

「それもそうやな」

「文句を言わずに探せ。自分の意思で私達の仲間になったのなら責任を持て」


 少し厳しめのリューラの言葉に、楓華は気圧される。


「あんまりリューラを怒らせない方がいいわよ。ああいう子だから」

「せやな。この一週間で分かったけど、リューラさん厳しい人や」

「うーん。確かに、よく特訓で光野君と火之浦君がリューラさんに痛い目に遭わされてるし」

「……なぁ。なぜ他の皆は呼び捨てで、私だけさん付けなんだ?」


 リューラに聞かれて、楓華と玲は少し考え込む。


「何て言うか……リューラさん頼りになると言うか、圧がすごいと言うか……」

「なんか姉御って感じがするんだよねぇ」

「なんだそれは……?」

「ぶっちゃけ、林先生より大人っぽい」

「先生としては複雑なんですけど!?」


 そんなやり取りを後ろから見ていたヒレアは「ははっ」と微笑していた。

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