真夜中の告白
「よし。行くぞ、ライトドラゴン!」
予見の盾で相手の動きを把握し、ライトドラゴンに指示してメーシャへ飛ぶと、メーシャが召喚したプテラスが向かって来た。
「右! 左! 次は上!」
予見の盾のお陰で突っ込んでくるプテラスとメーシャの魔法を避けていく。
「躱されていく……。まさか、予見の盾で!?」
メーシャが驚いている隙に目の前まで近づく。
もう少し近づけば浄化魔法を――。
「【テレポーテーション】」
「え!?」
目の前ってところで、メーシャが突然消えた。
「瞬間移動魔法じゃ」
なるほど。瞬間移動だからテレポーテーションか。テレポーテーションを使うところまで見てなかった。
何処から来るのか予見の盾で見ようとすると、横から炎の魔法が飛んできてライトドラゴンに当たってしまった。
「しまった!!」
攻撃を受けたライトドラゴンは落ちていってしまう。
「でも……」
「っ!?」
メーシャが後ろを振り向くと、目の前にフェニックスに乗ったエンとヒレアがいて、ヒレアはメーシャに向けて手を伸ばす。
攻撃を受けた時に、丁度近くにいたフェニックスにヒレアが飛び移ったお陰でメーシャに近づけられた。
「【ピュリケス】!」
ヒレアの掌から放たれ光がメーシャを包み込んだ。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
メーシャが苦しみだすと、召喚された魔物達が消えていった。
メーシャが持っている杖も消え、体が足から少しづつ消えていく。
「き、消えて……たまるわけがぁぁぁぁ!」
膝まで消えると、浄化魔法に耐えているのか、消えるスピードが遅くなり止まったように見える。
「む~、浄化魔法を耐えるか。そこまで消えるのを拒むか」
浄化魔法を受けたんだ。あともう少し……。
「……ん?」
「どうしたの勇也?」
「今の声は……」
頭の中に聞いたことがある声が聞こえた。あの声は……。
俺は掌に小さな光の玉を生み出すとメーシャへ向かって投げた。
光の玉がメーシャに当たると、大きくなりメーシャを包んだ。
――――――――――――――――――――
「ん?」
目を開けると、メーシャは白い空間にいた。
「ここは?」
「メーシャ……」
メーシャが振り向くと、そこには心の底から会いたい人がいた。
「ライトス……さん?」
ライトスは笑顔で頷くと手を伸ばした。
「ああ……やっと会えた」
メーシャは目から涙を流し、ライトスの手を取った。
――――――――――――――――――――
メーシャを包んだ光の玉が消えると、メーシャは涼し気な顔をして消えていった。
「勇也よ。さっき何をしたのじゃ?」
「聞こえたんだ、ライトスさんの声が。『僕に任せてくれ』って」
「なんと! ……メーシャを止められるのは、やはりあやつだけじゃったか」
メーシャが消えると、集まってさっきの事を話した。
「さっきの光の玉はそういう事ね」
「しかし、何故ライトスが出てきたんだ?」
「ライトスは自分の魂と光のエレメントを融合させたと勇也は言っておったな」
「ああ」
「もしかしたら、光のエレメントの中に、まだライトスの魂が残っておったのかもしれん」
それなら納得できる。お陰で助かったよ、ライトスさん。
「今回も皆よく頑張った。屋敷に戻りゆっくり休むんじゃ」
「言われなくてもそのつもりだ」
「あ~、疲れた」
皆は肩の力を抜いていた。
少し休んでから俺達は屋敷に戻ることにした。
「……」
レインは決意をしたような目をしてグッと拳を握る。
――――――――――――――――――――
夜、屋敷に戻ってきた俺達はそれぞれの自室に戻った。
今は夜の12時を回ろうとしていた。
その頃俺は、自分の部屋のベッドの上で今回の事を思い返していた。
「あれが先代エレメンターの仲間……。霊体でも手強かったな。先代のエレメンターはもっと強かったはず。俺もまだまだだな」
自分がまだ弱い事を自覚し、明日の特訓も頑張ろうと決意する。
もう遅いから寝ようとすると、ベッドから軋む音が聞こえると同時にベッドが少し沈み、後ろから手が伸びて抱き付いてきて、背中に柔らかい物が当たった。
「うぇっ!? ……レ、レイン!?」
後ろを見ると、顔は見えないが青い髪が見えた。
「ねぇ勇也……」
「な、何!?」
「私……勇也が好き」
「…………え?」
俺はしばらく思考が止まった。
すき? ……スキ? ……好き?
え、どういう事? ラブ? いや、ライク?
「勇也は……どっち?」
レインが顔を上げて、その顔を見て俺はハッと目を大きく開く。
頬を赤くして、その眼差しには真剣さを感じた。
これは冗談じゃない。本気だ。
初恋すらまだの俺はレインの事を仲間としてではなく、女の子として好きなのかまだ分からない。必死に頭を回転させてどう返事をすれば良いのか考える。
『本当に助けたい理由が仲間だからって理由だけ?』
俺は、孤島に向かう途中でヒレアに言われた言葉が頭の中に流れた。
……そうだ。俺が悩んでる時は、よくレインが励ましてくれたりしてくれた。
それで、レインがいると……俺は……。
「……」
俺はレインの手を取りレインに体を向ける。
「俺、告白されたの初めてだからどう返事すれば良いのか分からないけど……」
手をギュッと握り俺は告白の返事をした。
「俺も君が好きです。俺と……付き合ってください」
返事を聞いたレインの目から涙が流れる。
「ありがとう、勇也」
「……なんか、勇気もいるし恥ずかしいな。はは」
手を放して笑うと、レインは俺の頬に手を当てる。
「付き合うお祝い……」
レインは目を閉じて唇を重ねた。
「っ!?」
突然のキスに俺は驚くと、レインは唇を離す。
「勇也、大好き」
レインはもう一度キスすると、俺はレインの背中に手を当てて抱き合う。
――――――――――――――――――――
「という訳で、私と勇也は付き合うことになったから」
『は?』
翌朝、俺の腕に抱き付いているレインの発言に皆は呆気に取られる。
「おい。いきなりこんな朝っぱらから言われても意味分かんねぇんだけど?」
「だから、昨晩私が勇也に告白して、私達付き合うことになったの」
エンの質問にレインが答えた。
なんかヒレアとミスクが温かい目で見てるけど、何でだ?
「お前、よくそんなべったり勇也にくっつけるな。そんな奴だったか?」
「実はね……私、恋に憧れてたの!」
「は?」
「え?」
レインの言葉に俺も驚く。
「小さい頃に呼んだ恋物語を読んで、私も恋をしたかったのよ。だから付き合えて嬉しい」
レインは更に俺の腕にギュッと抱く。
レインの豊満な胸が当たってさっきからドキドキする。
「まぁ、仲が悪いよりはマシじゃろう」
「私も特訓を疎かにしなければ別に良い」
「はは……」
生まれて17年。異世界に来て半年。
俺は人生で初めて彼女が出来た。




