予見の盾
皆と分かれて俺は一人。岩の柱に囲まれ、更にメーシャまでいる。状況が悪すぎる。
「ねぇ、光のエレメンターの貴方にお願いがあるの」
「お願い?」
「貴方のライトカリバー、私に頂戴」
「はぁ?」
何でライトカリバーを?
コイツが持っても意味がないのに。
「どうしてライトカリバーを? お前が持っても意味は――」
「あるわよ。あの人が使っていたってだけでね」
あの人? ライトカリバーを使える人って言ったら……。
「さぁ、早く渡しなさい!」
「うわっ!?」
メーシャは魔法の火の玉を撃ち俺はギリギリ避けた。
くそっ。中身は違っても、体がレインだから迂闊に攻撃出来ない。
どうにかしてここから出ないと。
「勇也ー! 何処じゃー!」
ジーリュが呼ぶ声が聞こえる。
俺を呼んでるって事は、後は俺だけか。
だったら早く切り抜けないと。
「ここから出たいんでしょう? させないわよ!」
メーシャは更に魔力の玉を撃ってきて、俺は光の壁を張って防ぐが、威力が強いからか、壁にヒビが入ってどんどん広がっていく。
(流石凄腕の魔法使い。このままだと……そうだ!)
俺は光の壁を解除すると横に転がって魔法を避け岩の柱を背に立つ。
メーシャが再び魔法を撃つと、俺は避けて、魔法は岩の柱に当たり根元から崩れた。
「よし!」
「っ~!」
メーシャは歯を食いしばり、俺は崩れた所から出て先ほどジーリュの声が聞こえた方へ走る。
すると、メーシャが放った魔力弾が俺の足に命中してしまった。
「ぐあっ!」
倒れて足を押さえる俺に、メーシャが近付く。
「逃がす訳ないでしょ。じゃあ、ライトカリバーを貰うわね」
メーシャは俺の腰にあるライトカリバーに手を伸ばして掴むと、俺は取られない様にライトカリバーをガシッと手で押さえる。
「このっ、離しなさい!」
メーシャは何度も引っ張るが、俺は力強く押さえる。
「離しなさいって……言ってるでしょ!!」
「ごはっ!」
メーシャは俺の腹を蹴ると、その後も何度も踏みつけたり蹴ったりする。
だが俺は力を緩めることなく剣を押さえる。
「さっさと、離しなさい!」
メーシャは杖の先に魔力を集中させて俺に向かって振り下ろすと俺は目を瞑った。
……ん?
何も起きず俺は目を開けると、メーシャの左手が右腕を掴んで押さえていた。
「なっ、まさか!? うっ!」
メーシャは杖を手放し、頭を押さえて苦しみだす。
何が起きてるんだ?
「……ゆ……勇也……」
地面に膝をついたメーシャが、ゆっくりと俺に顔を向けると、瞳の色が青になっていた。
「もしかして、レイン!?」
髪の色は変わってないけど、この瞳の色は間違いなくレインだ。
「わた、しが……押さえるから……早く……行っ、て……」
「……」
必死にメーシャを押さえているレインの手を、俺は優しく握る。
「必ず助ける! だから、信じて待ってて!」
「……うん」
レインは一滴の涙を流すと、俺は足の痛みに堪えながら皆の元へ走った。
――――――――――――――――――――
「あっ。勇也だ」
俺は皆の元へ走ると、ビトが指差し皆も気付く。
「おお、無事じゃったか! こっちじゃ!」
「ごめん皆、遅れた。うっ……」
「どうしたその足?」
「ちょっと、メーシャにやられて」
「そうじゃったか。あの子は?」
「ああ、実は……」
洞窟の奥へ進みながら、俺はさっき起きたことを話した。
「そうか……レインがメーシャを押さえていてくれたんじゃな」
「ああ。レインのお陰で助かったよ」
「しかし、何故あの子はライトカリバーを?」
「分からない。ライトスさんが使ってたからって言ってた」
「ん~、メーシャはライトスの物を探してるのか?」
グレスさんはそう推測した。
確かにそれならここに来た理由になるけど……。
「着いたぞ。ここじゃ」
俺達はやっと、洞窟の一番奥に着いた。
そこは周りに水が流れているからか結構涼しく、壁に穴が開いていてそこから光が漏れ出ている。
「あれが予見の盾でしょうか?」
クロエが指さした先には、丸い鏡の様な盾が祭壇の上に立てかけられていた。
「うむ。あれが予見の盾じゃ」
「皆ー!」
どこからか声が聞こえて辺りを見渡すと、壁の穴からヒレアが顔を覗かせていた。
「出口ってあそこ!?」
「そうじゃ。地面は無いが、アルツの力で足場を作ってもらう」
「おっしゃあ、任せろ」
「その前に、まずは盾だ」
俺達は奥へ進み、予見の盾を手にした。
「手に入れたのは良いけどよぉ。元々あの女の目的を知るためだろ? ここに来てたんだからあんま意味なくね?」
「なら……私に渡しなさい!」
入り口の方から声が聞こえ、振り向くとそこにはグッタリしたレインを抱える霊体のメーシャがいた。




