孤島の洞窟
ジーリュから孤島の場所を聞くと召喚獣に乗って向かい、今は海の上を飛んでいる。
今回はグレスさんも同行している。理由はかつての仲間が何を企んでいるのか心配だから、とのこと。
「見えたぞ。あの島じゃ」
前方にあまり大きくない一つの島が見えた。
「あの島に予見の盾が?」
「そうじゃ。ライトスが亡くなった後、あの島の地下の奥に隠したんじゃ」
「ん? 何でライトスさんが出てくるの?」
「言ってなかったのう。予見の盾はかつてライトスが使っていた盾なんじゃ」
成程。それでライトスが亡くなったから盾をあの島に……。
「とにかく、早く予見の盾を手に入れて、メーシャの目的を知ってレインを助けないと!」
「そうじゃが勇也よ、お主少し落ち着け。焦っておるぞ」
「だって、仲間が乗っ取られたんだぞ。焦るよ」
「……本当に助けたい理由が仲間だからって理由だけ?」
「そりゃあそう……だと、思う……」
ヒレアの問いに、俺は何故かハッキリとしない答え方をしてしまい戸惑う。
「あれじゃ。あの洞窟が入り口じゃ」
「え? あ、お、おぉ」
俺達は洞窟の前の砂浜に下りて、召喚獣の背中から降りた。
「20年ぶりだな、ここ」
「そうじゃな。元々、予見の盾は手に入れる予定はなかったんじゃが」
皆が召喚獣から降りて、召喚獣を戻し洞窟に近づくと、ビトが何かを見つけた。
「なぁ皆、あれを見て!」
ビトが指さした先には、洞窟に続く足跡があった。
「この足跡を解析した結果、レインさんが履いている靴と一致しました」
「じゃあ、ここにレイ……いや、メーシャが来てんのか!?」
「恐らくそうじゃろう。……まさか、あの子は予見の盾を?」
「足跡の状態を見るからに、来てからあまり時間は経っていないと思われます」
「でも、洞窟の中をよく知ってるんじゃ?」
「いや。この洞窟の事はあの子に教えたことはあるが、あの子と会った頃にはすでにライトスは予見の盾を持っておった。じゃからこの洞窟には入ったことは無いはずじゃ」
じゃあ、洞窟の構造は知らないのか。
ならあんまり進んでないかもしれない。
「では行くとするか。ヒレア、お主は洞窟の出口の方へ行って待っていてくれ」
「分かったわ」
ヒレアは島の外側を走っていった。
「出口があるなら、そこから入った方が早いんじゃ?」
「いや。構造上、出口から入ることは出来ぬ。実際に見れば分かる」
出口からなら近いと思ったけど、入れないんなら仕方ない。入り口から進むしかないか。
俺達は予見の盾を目指して洞窟の中に入った。
「この洞窟って魔物とかいないの?」
「おらんぞ。洞窟だけでなく、島にもな」
「へぇー。なら見つけやすいかも」
洞窟に入ってから、ビトは猫耳を生やして聞き耳を立てている。先に洞窟に入ったメーシャを見つけるためにだ。
「ねぇジーリュ。メーシャってどんな人だったの?」
「ん? そうじゃなぁ……。出会った頃の話からすると、あの子と会ったのは先代のエレメンターと共に世界を回っていた時、道の真ん中に倒れておったのを助けたんじゃ。話を聞くと、故郷の村を魔王軍に襲われて、あの子だけが生き残りずっと一人だったそうじゃ」
「その後、アイツは荷物持ちでもいいからついて行きたいと言い出した。殆どの皆は危険な旅だからと反対したんだが、ライトスが可哀そうだと言って結局一緒に行くことになったんだ」
故郷を、か……。そんな過去があったのか。
「一緒に旅をしてから少し経った頃、メーシャに魔法の才能がある事が分かり、あの子は魔法使いとしてあっという間にワシ等と共に戦えるようになった」
「ああ。しかも次第にライトスに惹かれていってな。気付いたら……だ」
「そうじゃったな。だからこそ、あの子の真意を知らねばな。皆よ。あの子に会っても、戦わず先を進み、盾を手に入れることを優先するのじゃ」
『ああ』
ジーリュとグレスさんから話を聞き終えると広い場所にやってきた。
そこにはガラスの様な透明な岩が沢山あった。
「何だこの岩?」
「これはクリアロックという岩じゃ。装飾品などの素材によく使われる」
結構綺麗だけど、今は見とれている暇は無い。
先を進むが、クリアロックのせいで複雑に入り組んでまるで迷路みたいになっている。
クリアロックの上に登ろうとするが、氷みたいに滑るから登れない。
「ああっ! こんな迷路みたいな場所ってだけでイラつくのによぉ!」
「落ち着くんじゃウィド。落ち着いて進めば出られる」
クリアロックが壁ぐらい大きくて天井に近いため、ウィドが飛んで先に進むのも難しい。
「あ。岩ならアルツの力で穴を開けられるんじゃ?」
「あ~。岩っぽく見えなかったから忘れてた」
試しにアルツがクリアロックに触れると、岩の形が変わってトンネルが出来た。
「なんだよぉ。これなら迷わずに進めたじゃねぇか」
「悪ぃ悪ぃ。じゃ、オイラが道を作るぞ」
アルツが洞窟の奥の方へクリアロックでトンネルを作っていくと、ビトが耳に手をかざした。
「皆静かに」
「どうした?」
「……足音が聞こえる。しかも近付いてくる」
今皆はその場に止まっていて誰も歩いていない。
って事は、もしかして。
ビトが振り向いた瞬間、視線の先のクリアロック爆発して砕けた。
「何やら人の声が聞こえると思ったけど、やっぱり貴方達だったのね」
爆煙の中から、レインの体のメーシャが出てきた。
「メーシャ……」
「あら。ジーリュさんにグレスさん。20年ぶりですね」
「ああ……そうだな」
「メーシャよ。お主が何を企んでいるのかは知らん。じゃが、レインを開放するんじゃ。エレメンターがどのような存在か、お主もよく分かってるはずじゃ!」
「勿論分かっていますよ。あれほど一緒にいたのですから」
「なら……!」
「でも駄目です。この子は大事な人質なので」
それを聞いて、俺達は驚く。
「人質じゃと? どういうことじゃ!?」
「だって、こうすれば貴方達は手を出せないでしょう?」
レインに憑いたのは、俺達が攻撃出来ない様にするためか。
「なので、邪魔しないで下さい!」
メーシャが魔力の玉を俺達の頭上に飛ばすと、複数の小さな魔力の玉に分裂して俺達に降り注いできた。
「いかん! 皆避けるんじゃ!」
俺達は散開して魔力の玉を回避した。
戦わないで先へ進めとジーリュが言っていたから、俺は奥へ進もうとすると、地面から大きな岩の柱が俺を囲う様に出てきた。
「貴方だけは行かせませんよ」
そこにメーシャがやってきて、俺と対立する。




