表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンターズ  作者: 至田真一
エレメントアーマー
35/202

鉄の手袋と鎧のゴリラ

 濃霧渓谷を出た俺達は、馬車に乗って次のエレメントアーマーがある場所に向かった。


「ジーリュ。次のエレメントアーマーは何?」

「次は鉄のエレメントアーマーじゃ」

「おっ。次はオラのが?」

「そうじゃな。そして封印場所は町の鉱山の奥にあるんじゃ」

「鉱山? 随分守りが薄い様な」


 鉱山の奥なんて誰でも行きやすいような場所にあるのか?


「大丈夫じゃ。簡単に盗られはせんぞ」

「そうなの?」

「行ってみれば分かるわい」


――――――――――――――――――――


 数日後、目的地である鉱山の町、ドワムルに着いた。

 町中を進んでいると、よく背の低い人を見かける。


「ねぇジーリュ。あの人達って」

「ん? ああ、ドワーフじゃな」


 やっぱりドワーフか。


「ここの様に鉱山がある町や職人が多く住む町には、よくドワーフが移り住んでおる。クタガラにもいたはずじゃが、あの時はゆっくり町を見れなかったから分からぬか?」


 うーん……思い出してみると、確かに背の低い人をよく見かけた様な……。


「まずは鉱山へ向かうぞ。そこで鉱山を管理している親方に会いに行く」


 俺達は町の奥にある鉱山の入り口に着くと、何故か入り口の前にはバリケードの様な物が置かれて入れない様になっていた。


「なんか入れないっぽいけど?」

「どういうことじゃ?」


 何で入れないのか、近くの人に聞いた。


「すいません。どうして鉱山に入れないんですか?」

「あー。数日前に起きた地震で、坑道が埋もれたんだよ。それで今は、復興作業に追われてるんだ」

「なんと……」

「お陰で、鉱石が採れなくて町の活気が無くなってきてるんだ」


 よく見ると、町の人達にあんまり元気がないように見える。


「で、どうすんだ? 鉱山に入れねぇぞ」

「ん~……。復興作業中かもしれんが、親方の家に行ってみよう」


 ジーリュの案内で、俺達は親方さんの家を訪ねた。


「はい。あら、どちら様?」


 ノックすると、中からドワーフの女性が出てきた。

 女性は俺の頭の上に乗っているジーリュに気付いた。


「あら、ジーリュさん。じゃあ、この人達はエレメンターですか?」

「あ、はい。そうです」

「すみません。主人は今鉱山に……」

「うむ。坑道が埋もれたと聞いたぞ」

「はい。主人もショックを受けていました。しばらくは帰って来ないので、暗くなったらまた来てください」

「分かりました。では、また後で伺います」


 親方の家を後にした俺達は、町の宿で部屋を取った後、暗くなるまで適当に時間を潰した。

 そして暗くなり、再び親方の家を訪ねると、今度は男性のドワーフがいた。


「おお。久しぶりだな、ジーリュ」

「久しぶりじゃな、マッズ」

「鉄のエレメントアーマーだろ? 知ってると思うが、今坑道が埋もれてるせいでエレメントアーマーを手に入れられない。復興に数日かかるからな」


 それを聞くと、俺達は頷いて昼間話し合って決めたことを話した。


「俺達も復興作業を手伝います」

「良いのか?」

「ワシ等としても、坑道が早く元に戻ってほしいからのう」

「……かたじけない。ぜひ、よろしく頼む」


 マッズさんが頭を下げる。

 町の為に、エレメントアーマーを手に入れる為に、復興を頑張って手伝おう。


――――――――――――――――――――


 次の日。俺達は鉱山へ行くと、入り口の所でマッズさんが立っていた。


「おう、来たか。じゃあ早速手伝ってもらうぞ」


 マッズさんの後をついて行き、鉱山の中に入った。


「マッズよ。坑道は現在どのぐらいまで復興が進んでおるのじゃ?」

「半分と言ったところだろう。だが、そこからが厄介でな」


 しばらく坑道を進むと、いくつかの道に分かれた広い場所に出た。


「あの道の先にエレメントアーマーがあるんだ」


 マッズさんは一番端っこにある道を指差した。


「お前達には、あの道の瓦礫を撤去してほしい」

「エレメントアーマーがあるのなら当然じゃな」

「一番奥まで通じたら俺に報告してくれ。俺は別の道の瓦礫の撤去をしねぇといけねぇからな」

「分かりました」

「じゃあ頼んだぞ」


 マッズさんは別の道に入ると、俺達は指定された道に入る。

 入ってすぐに、道を瓦礫が塞いでいた。


「結構埋もれてんなぁ」

「何処まで崩れてるか分からないけど、今日中に終わるのは難しいかもね」

「うむ。これは、土のエレメンターであるアルツを中心に瓦礫を撤去するぞい」

「任せろ!」


 アルツを中心に瓦礫を砕き、破片を運ぶ。それを何度も繰り返し奥へと進んで行くが、瓦礫が思ったより多く、今日中に終わることが出来なかった。

 次の日も、昨日と同じように進めた。

 一度、ミスクが煙になって瓦礫の隙間を通って奥の方を見に行ってみた。


「小さな建物を見つけたわ。そんなに遠くない。それより先に道は無かったわ」

「じゃあ、そこが一番奥?」


 瓦礫を撤去しながらどんどん奥へ進んだ。

 すると突然瓦礫が無くなり、一軒の建物が目に入った。


「あれが、ミスクが見つけたって言ってた建物?」

「ええ、そうよ」


 確かにここから先には道が無いし、ここが一番奥で間違いないと思うけど……。

 小屋の中を見てみるが、テーブルやらベッドやらがあるだけで、ここにもエレメントアーマーらしい物が無い。


「ねぇジーリュ。エレメントアーマーは何処にあるの?」

「教える前に、マッズに報告しに行ったらどうじゃ?」

「あー、うん」


 何か引っかかるが、とりあえず戻ってマッズさんの元へ向かった。

 マッズさんを見つけると、瓦礫を撤去したことを伝えた。


「おお、そうか。なら、エレメントアーマーの所へ案内しよう」


 マッズさんについて行くと、さっきの小屋にマッズさんが入っていく。


「スマンが、テーブルとイスとベッドをカーペットの上からどかしてくれ」


 マッズさんに言われ、俺達……というか男子で言われたとおりにカーペットの上から物をどかして、マッズさんはカーペットを捲ると地下への扉が出てきた。マッズさんが懐から鍵の束を取り出し、その中から一つの鍵で扉を開けた。


「エレメントアーマーはこの先だ」


 階段を下りて、長い通路を進むと、奥に大きな扉があり、マッズさんがさっきとは別の鍵で扉を開けた。

 入ると、部屋には台座があり、その上に一対の石の手袋が置かれていた。


「あれが鉄のエレメントアーマー、メタルグローブだ。俺の家は、代々あれを守っていた。扉を隠したり、偽の鍵など用意したりしてな」

「うむ、助かってるぞ。ではスチアよ。行ってくるのじゃ」

「分がった」


 スチアは台座へ進み石の手袋に触れると、封印が解けて鉛色の鉄の手袋になった。

 スチアはメタルグローブを嵌めて何度も手を握る。


「おお。鉄で出来てるのに動がしやすい。おっと。召喚獣を呼ぶんだった」


 スチアはグッと拳を握って祈ると、メタルグローブから出た光から、鎧の様な甲殻を身に纏い、額に灰色の結晶が付いた灰色のゴリラが現れた。

 鉄のエレメントの召喚獣、アーマーコングだ。

 アーマーコングはスチアを向いて頭を下げると光って消えた。


「契約は無事に済ませたようだな。残りのエレメントアーマー集め、頑張れよ」

「ありがとのう、マッズ」

「気にするな。さて、俺は復興に戻るとするか」


 そう言って振り返るマッズさんの顔は、憂鬱に見えた。


「マッズさん。折角ですから、復興最後まで手伝いますよ」

「え? 良いのか? 急いでるんじゃ?」

「困ってるのを見過ごせないですし」

「何かモヤモヤしちゃうわよね」

「ちゃちゃっと終わらせようぜ」


 マッズは勇也をジッと見て微笑む。


「ジーリュ。あの少年、ライトスに似てるな」

「ああ。そうじゃろ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ