火の剣と火の鳥
俺達は火のエレメントアーマー、フレイムソードが封印されている洞窟を目指していた。
「暑い……」
洞窟があるのが熱砂溢れる砂漠地帯。しかも近くに火山がある為、更に暑くて汗が止まらない。
「なぁジーリュ。ホントに洞窟あんのか? 周り砂しかねぇぞ?」
砂漠のオアシスの町に馬車を預けて、砂漠を歩き続けて数時間。洞窟らしいのが全く見当たらない。
「洞窟は砂漠の端っこ辺りにある。もうすぐのはずじゃ」
「端っこって何処だよ? っていうか、今俺達は何処にいるんだ?」
エンの言う通り、周りには目印になるような物が見えず、砂しか見えないから方向も分からない。
「ねぇウィド。アンタ空飛んで上から探してよ」
「はぁ!? ふざけんな、こんなクソ暑い中。俺だけじゃなくビトにも頼めよ」
「もうダウンしてるわよ」
ミスクが指差した先には、バテてスチアにおんぶされているビトがいた。
「マジかよ。ならミスクが飛べよ。お前煙になれば飛べるだろ」
「は? アンタか弱い女をこんな猛暑の中こき使う気?」
「何がか弱いだよ怪力おん、ぐふっ!?」
ウィドはミスクに蹴飛ばされて、顔から砂の中に埋まった。
「おい、何してるんだ? 早く行くぞ」
「皆さん先行ってますよ?」
「ごめん」
ミスクは駆け足で進み、ウィドはアルツに引っこ抜かれ皆の元へ急ぐ。
「ねぇジーリュ。ホントに洞窟は近いの?」
「そのはずじゃ」
30分以上歩いてるけど、未だに洞窟らしいのは見当たらない。
レインのお陰で水には困らないけど、こんな強い日差しを受け続けるのは嫌だな。
「皆さん。前方に何か見えます」
「え?」
クロエが突然口を開き前を見ると、前方に数本の柱が見える。
「あれは、洞窟の入り口の目印じゃ」
「あれが……」
「ようやくか……」
俺達は柱を目指して進むと、そこには円形に並ぶ六本の柱の中央に洞窟の入り口があった。
「あの奥にフレイムソードがあるのか?」
「そうじゃ。行こう」
俺達は洞窟の中に入った。
狭い道を抜けて広い道に入ると、横には溶岩が流れていた。
「暑っ!? 溶岩流れてるじゃん!」
「外より中の方が暑い……」
あまりの暑さにレインは服で扇ぐが、そのたびに胸元が見えるので、俺はサッと顔を背ける。
「この中の方が暑いが、皆頑張るんじゃ」
「俺は意地でも進むぞ。俺の剣が手に入るんだからな」
エンは一番気合を入れ、俺達は洞窟を進んで行く。
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跳びついてきた赤い蜥蜴、火炎蜥蜴を剣で斬りつけると、火炎蜥蜴は地面に倒れた。
「ふぅー。流石に火の魔物が多いな」
さっきから襲ってくる魔物が、この火炎蜥蜴の他に火を吐く鳥、ファイヤーバードや、背中が燃えている赤い牛、レッドバッファローといった火の魔物が多い。
しかも洞窟のこの暑さのせいで、いつも以上に体力を消費するし、時々ボーっとなって集中力が無くなる。
「この辺りで休憩するかのう。この暑さじゃから無理は禁物じゃ」
「そうだね。もう……暑すぎる」
「アルツよ。壁の岩を動かして空洞を作ってくれぬか?」
「おう、分かった」
アルツは壁に触れるが、壁も熱くなってるせいで「あちっ!」と言って壁から手を放すと、レインが水で壁を冷やして、アルツがもう一度触れて空洞を作った。
俺達は空洞に入り、空洞の壁をフィーズが冷気で冷やして涼しくなった。
「あ~、涼し~」
暑さでダウンしてたビトが生き返った。
皆のコップにレインが水を入れて、その中にフィーズが作った氷を入れる。
「はぁー。いつもより水が美味しく感じる」
「そう?」
「こんな暑いと確かにな」
涼しい空間と冷えた水でだいぶ体調が良くなってきた。
「ねぇ、この先も熱い魔物ばかり出てくるの?」
「そうじゃな。ここにはそういう魔物しか出んぞ」
「熱いから蹴れないのよねぇ」
「私も蔦が燃えてしまうんです」
武闘派のミスクと、植物で戦うレイフにとって、ここの魔物は相性が悪いみたいだ。
20分程休憩したあと、俺達は再び洞窟を進んだ。
熱い魔物と戦ったり、溶岩に落ちない様に注意して奥へ進んで行くと、大きな扉があった。
「着いたぞ。ここがフレイムソードがある部屋じゃ」
「ようやくか」
少し嬉しそうなエンが扉を開ける。
部屋の奥には台座があり、そこには一本の石の剣が刺さっていた。
「あれがか? 石で出来てるぞ」
「あれは封印状態じゃ。火のエレメンターであるお主が触れれば封印が解けるぞ」
「そうなのか? よしっ」
エンは台座へ進み剣に触れると、剣が光り、石だった剣が赤い剣に変わり台座から抜いた。
「おおぉぉぉ!」
炎の様な形をした刀身の剣を見て、エンは歓喜の声を上げる。
「次に召喚獣を呼び出すのじゃ。そうすれば完全に剣はお主の物じゃ」
「どうやって召喚すんだ?」
「剣を持って祈るんじゃ。そうすれば姿を現すはずじゃ」
「分かった」
エンはフレイムソードを握って祈った。
すると、フレイムソードから赤い光が飛び出して、そこから一羽の大きな炎の鳥が現れた。
長い尾に燃えている羽を身に纏った赤色の鳥。そして額には赤い結晶が付いている。
火のエレメントの召喚獣、フェニックスだ。
「おおぉぉぉ! 凄ぇ!」
フェニックスはエンの前に下りると、目を閉じて頭を下げた。
「契約完了じゃ。これでフレイムソードはお主の物じゃ」
「よっしゃあ!」
フェニックスは光って姿を消し、エンはフレイムソードを手に入れた。
俺達は次のエレメントアーマーを手に入れる為、洞窟を後にした。




