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エレメンターズ  作者: 至田真一
集まるエレメンター 後編
24/202

最後のエレメンター

「うおおおりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 アルツが土のエレメントで生成した大きな岩を投げつけてワイバーンに当てると、ウィドが風の刃で翼を攻撃し、スチアが鉄化した拳で殴り飛ばす。


「やっと一体倒せただ」

「ようやく一体か。先が思いやられる」


 空を見上げて、まだ10体以上飛んでいるワイバーンを見て、ウィドは嫌な顔になる。

 そんな三人の元に、エン、ライデン、フィーズがやってきた。


「おー、お前等もワイバーン倒したか」

「ああ、一体だけな。そっちは?」

「僕達も一体だけです。今の僕達では一体倒すだけでも一苦労です」


 フィーズが疲労の息を吐くと、今度はレイン、ヒレア、ビト、ミスク、レイフの女組が来た。


「そっちも片付いた?」

「合わせて二体倒しただけだ。お前等は?」

「僕達は一体。もー大変だよ」

「火を吐くので、(わたくし)は苦手です」


 女組も苦労していた。

 するとレインが周りを見渡していた。


「ねぇ。勇也は?」

「ん? 一緒じゃねぇのか?」

「いないわよ」

「オラ達も知らねぇだ」

「ジーリュもいないわね」


 皆が辺りを見渡していると、クロエがジェット噴射で飛んでやってきた。


「皆様。ワイバーンの群れの目的が分かりました」

「何?」

「この群れは、盗まれた卵を取り返すためにやって来たそうです」

「卵を?」

「はい。現在、勇也様とジーリュ様が卵を盗んだ男を追跡中です」

「なるほど。そういうことだったのね」

「チッ。何処のアホだよ」

「俺達も追いかけようぜ」


 皆はクロエの案内でワイバーンのリーダーがいる所へ向かった。

 近くの建物の屋根で聞いていたリューラも飛んで向かった。


――――――――――――――――――――


「クソッ。あの野郎さっさと帰れ! 動けねぇじゃねぇか!」


 男は大きな卵を抱えて、建物の陰から空に留まっているワイバーンのリーダーを見る。


「どっかに逃げ道は……」

「逃がさないぞ!」

「あ?」


 男が振り向くと、勇也とジーリュが立ち塞がっていた。


「その卵をワイバーンに返すんじゃ」

「ふざけんな! 折角大金が手に入んのに手放すかよ!」

「あ、待て!」


 男が逃げ出し俺とジーリュが追いかけようとすると、ワイバーンのリーダーが俺達の真上を通過し、男を追いかけた。

 男が路地に逃げ込み、俺達は追いかけようとするが、ワイバーンが路地に火を吐いたせいで炎に遮られ、ワイバーンは建物の上を飛び向こう側へ向かった。


「これではあの路地を通れん。別の道から回り込むぞ」

「分かった!」


 ジーリュの案内で町中を走ると、ウェアークの冒険者ギルドのギルドマスター・グレスさんに再会した。


「勇也とジーリュか。どうした、そんなに慌てて」

「グレスさん。実は……」


 俺はグレスさんにワイバーンの目的を話した。


「成程。全く、面倒な事をしてくれたもんだ」

「グレスよ。お主も捕まえるのを手伝ってくれ」

「勿論だ」


 俺とジーリュはグレスさんを加えて、卵を盗んだ男を追いかけた。


「この先に卵を盗んだ奴がいるのか?」

「恐らくのう。ワイバーンのリーダーも奴を追っている。じゃからその近くにいると思うんじゃ」


 俺とジーリュとグレスさんはワイバーンのリーダーを目印に走ると、下の広場に下りられる階段に着いた。


「いた、あそこ!」


 俺が指差すと、その先にはワイバーンに追い詰められた男がいた。

 男に向かってワイバーンが火を吐くと、男は吹き飛ばされ卵を手放してしまう。


「マズい!」


 俺は階段から跳び下りると、足に光のエレメントを集中させて卵に向かって走る。

 卵が地面に落ちそうになる寸前に、飛び込んで卵を無事に両手で受け止めた。


「ナイスじゃ、勇也」


 階段を下りてジーリュとグレスさんが近づいてきた。


「チッ」


 男は舌打ちしてその場から逃げ出した。


「っ! 待て!」

「グレス、お前はあやつを追うんじゃ。卵はワシ等が返す」

「頼んだぞ!」


 グレスさんが男を追いかけると、俺とジーリュは空にいるワイバーンを見る。


「ワイバーン! 卵は帰す! だから町から――」

「グオォォォォォォォ!!」


 ワイバーンは俺達に向けて火を吐いた。


「うわっ!?」


 俺とジーリュは避けて直撃を免れた。


「いかんのう。あやつ怒りで我を忘れておるようじゃ」

「そんな、折角取り返したのに。……こうなったら。ジーリュ、卵持ってって」

「え? のわぁ!?」


 卵をジーリュに渡すと、ジーリュは翼をバタつかせて落ちないように飛ぶ。


「どうする気じゃ?」

「戦って大人しくさせる。そうするしかない」

「無茶じゃ。普通のワイバーンですら一人で戦うのは厳しいのに、リーダー格を一人で相手にするのは危険じゃぞ!」

「でもやるしかない!」


 ワイバーンが再び口に火を溜め俺は構えると、空からリューラがワイバーンに向けて刀を振り下ろすと、ワイバーンは後ろに飛んで避け、リューラは地面に下りた。


「リューラ!?」

「お前か。下がれ、お前では相手にならない」


 リューラはそう言い刀を構えるが、俺はリューラの言葉を聞かず前に出る。


「おい、下がれと言っただろ。お前では相手になら――」

「うるさいなぁ、そんなの分かってる! ただ、町の人を助けたいって言う自分の気持ちに噓をつくのは嫌なんだよ!」

「……」


 ワイバーンが火を吐くと、なんとリューラが口から吐いて相殺した。

 龍のエレメントを使うと火を吐けるのか。


「勝手にしろ。私は協力しない」

「いいよそれで。俺も勝手に戦う」


 俺とリューラは、それぞれワイバーンに向かって行った。

 ワイバーンが火球を複数吐くと、俺は建物の陰に隠れ、リューラは空に飛んで避ける。

 火球を吐き終えると、俺は手から光の玉を撃つが、ワイバーンに避けられる。

 続いてリューラが刀でワイバーンに斬りかかるが、硬い鱗に弾かれワイバーンが尻尾を当てようとすると、リューラは回転して避けた。


「空を飛べないから戦いにくい。攻撃もあまり通じないし、どうするか……」


 ……あれなら通じるかな?

 手に光の玉を作りチャンスを待った。


「今だ!」


 リューラと戦っているワイバーンが建物の近くに来ると、俺は光の玉を放った。

 ワイバーンが光の玉に気付き火を吐こうとした瞬間、光の玉が弾けるように強い光を放った。


「ぐっ!?」

「グオォォォン!?」


 強い光を浴びたワイバーンは翼の羽ばたきを止め、地上に落ちそうになるがギリギリの所で留まった。

 俺はその隙に光のエレメントで身体能力を上げ、建物の屋根の上に上ると、ワイバーンに向かってジャンプし剣に光を纏わせると、剣の腹でワイバーンの頭に思いっきり叩きつけ、ワイバーンは地上に落ちた。


「何とか上手く行った」


 ゲームを参考にしたけど良かった。


「勇也よ。今なら返せるかもしれんぞ。ほれ」

「ありがとうジーリュ」


 バタバタと飛んでいるジーリュから卵を受け取ると、ワイバーンの近くまで持っていく。


「卵を返す。もし落ち着いてくれたのなら受け取ってくれ」


 ワイバーンの目の前に卵を置くと、ワイバーンは卵をジーッと見てニオイを嗅ぐと、卵を銜えて翼を広げて飛び、町の外へ飛び去ると他のワイバーン達も、後について行くように飛び去って行った。


「ふーっ……」


 肩の力が抜けて、地面に座り込む。


「どうにかなったのう」

「ああ。良かったよ」


 疲れて空を見上げる俺にリューラが近付く。


「一つ聞きたい。お前は違う世界から来たと母上から聞いたが、何故違う世界の者達の為に頑張れる?」

「え? 困ってる人がいたら助けるのは当然だろ?」

「……」

「まぁ……それもあるけど、一番の理由は恩返しかな?」

「恩返し?」

「俺を生き返らせてくれた人が住んでいたこの世界を守りたいって言う」

「……そうか」


 リューラは納得したような顔をし、ジーリュは微笑む。


「おーい!」


 呼びかける声が聞こえて振り向くと、他の皆が駆け寄った。


「無事みたいだな」

「なんとかな」

「ワイバーン達も帰っていきますし、やりましたね」

「いやぁ、一件落着だな」


 俺は立ち上がろうとすると、リューラが手を伸ばした。


「え?」

「お前の実力はまだ物足りないが、見込みはありそうだ。これからは私が鍛えてやる」

「えっとー……じゃあ俺達と一緒にいてくれるって事でいいの?」

「そう受け取って構わない」

「はは……じゃあ、よろしく」


 俺はリューラの手を掴んで立ち上がった。

 その様子をジーリュとヒレア。そして卵を盗んだ男を捕らえ脇で抱えているグレスが見ていた。


「これでエレメンターが全員揃ったわけか」

「20年ぶりね。彼等の代は一体どんな活躍をしてくれるのかしら?」

「揃ったのは嬉しいが、まだやることがあるわい」

「そうか。今度は『アレ』を見つけないとね」


 こうして、何とかエレメンター12人、全員が揃った。

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