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エレメンターズ  作者: 至田真一
集まるエレメンター 後編
22/202

侍少女の挑戦

 ビファル村を出て五日。エレメンターを探す旅は終わりが近づいてきた。

 残るエレメンターは一人、龍のエレメンターだ。


「ついにエレメンターが揃う。20年ぶりじゃ」


 ジーリュは嬉しそうに言う。20年ぶりに揃うんだから当然かな。

 これまでエレメンターは先代から完全にエレメントを受け継いだら集まっていたらしい。けど今回は光のエレメンター、つまり俺がこの世界に来るまで集まれなかった。


「もうすぐ龍のエレメンターが住んでる町に着くはずじゃ」

「何て町なの?」

「ワーフという独特の文化がある町じゃ」


 独特の文化か。何なんだろ?

 ジーリュは景色を見た後、馬車の窓から顔を出して前方を見る。


「見えたぞ、ワーフじゃ」


 俺達も窓から顔を出すと、俺はワーフの町を囲っている壁を見て目を細める。

 あれって、塀だな。時代劇とかで見る様なのと同じだ。もしかして……。

 町の入り口の大きな門を通って町の中に入ると、町の雰囲気に俺は驚く。

 木造の家に瓦屋根。提灯に板戸。更に町中を歩いてる人は和服に草履や下駄を履いている。

 完全に和風だ。


「ホントに変わった町だな。建物も見たことがねぇ」

「服も見たことないわね」


 エンとミスクが街並みを見て言う。

 やっぱりこの世界では和風はあんまり広まってないのか。


「どうしたの勇也? 街を関心そうに見て」

「いや……懐かしく思っちゃって」

「懐かしい? 勇也の故郷はワーフみたいな所なのか?」


 街を見ていた俺にレインが聞いてきて答えると、今度はジーリュが聞いてきた。


「いや、今は少ないけど、昔はこの町みたいな国だったんだ」

「そうなのか」


 旅館に似た宿に着くと、そこで馬車を預け龍のエレメンターの居場所を聞き早速向かった。

 教えられた場所には、塀に囲まれた大きな二階建ての木造建築が建っていた。


「すみませーん」


 門を叩いて呼ぶと、門が開いて黄緑色の和服を着た女の人が顔を出した。


「はい、どちら様でしょう?」

「すまぬが、ここにランという女性はおらぬか?」

「はい、いらっしゃいますが……もしかして奥様のご友人ですか?」

「そうじゃ」

「分かりました。お呼びしますのでこちらへ」


 案内されて、俺達は玄関に入った。


「奥様! お客様です!」


 女の人が呼ぶと、近くの戸から肩までの黒髪に赤い和服を着た女性が出てきた。


「ジーリュ!? ヒレア!?」

「おお、ラン。久しぶりじゃ」

「久しぶりね」


 またもジーリュとヒレアは二十年ぶりの再会に喜ぶ。


「二人が来たって事は、あの予言の子が現れたの?」

「そうじゃ。この勇也が光のエレメントを受け継ぎし者じゃ」

「君が……そう、良かった」


 ランさんは安心したように胸をなでおろした。


「奥様。もしかしてこの方達は、お嬢様と同じエレメンターなのですか?」

「ええ」


 お嬢様って事は、龍のエレメンターは女の子なのか。


「お主の娘がエレメントを受け継いだのか。で、娘さんは今何処におるんじゃ?」


 ジーリュが聞くと、ランさんの顔が曇りだした。


「実は……あの子、リューラはここにいないの」

「何? どういうことじゃ?」

「もう十分待ったから自分から会いに行くってワーフを旅立っちゃったの」

『ええっ!!?』

「何じゃと!?」


 俺達は思わず声を上げて驚く。


「会いに行くって……もしかしてウェアークに!?」


 ランさんは気まずそうな表情で頷く。


「た、旅立ったのはいつじゃ!?」

「一月前よ」

「一月か……流石に歩いて向かってるわけじゃないじゃろうが……馬車か、いや、龍のエレメントなら馬車は必要ないか。いや、考えとる暇は無い! 皆、急いでウェアークに向かうぞ!」

「お、おお」

「すまぬなラン! 今度訪れた時にゆっくり話そう!」

「分かったわ」


 俺達はランさんの家を後にし、馬車を引き取って半日も滞在しないでワーフを出て、ウェアークへ馬車を走らせた。

 そして半月以上、殆ど休み無しで馬車を走らせ、俺達はウェアークに辿り着いた。


「よ……ようやく着いた……」


 あまり休んでないからロクに寝てない。だから凄い疲れた。


「うえぇぇぇ~」

「大丈夫ですか、ご主人様?」


 馬車で酔ったライデンはクロエに肩を借りて歩いてる。


「こんなに揺れたのは初めてだな」

「オイラも疲れた」

「こんな馬車の旅は初めてだよ」


 皆も疲れてしまっている。


「ところで、龍のエレメントの子はもう来てるのかな?」

「確かリューラじゃったな。途中で会わなかったからもしかしたらワシ等よりも先に着いているかもしれん。屋敷に向かってみよう」


 俺達は酔いを醒ましながら屋敷に向かった。

 ウェアークの町を進んで屋敷が見え……ん?


「屋敷の門の前に誰かいるぞ」


 門の壁に一人の少女が目を閉じてもたれ掛かってる。

 背は俺と同じくらいで長い黒髪のポニーテール、紫の着物に和風のスカート。白い足袋に草履。そして腰には一本の刀。

 和風の恰好……やっぱりもしかして。

 少女は目をゆっくり開けるとこちらを見た。


「お前達がエレメンターか?」

「ああ、そうだけど」

「やはり、お主がリューラか?」

「ああ。私が龍のエレメンターのリューラだ」


 やっぱり。和服だからそうだと思った。


「お前なぁ! ワーフに行ったら、お前がウェアークに向かってるって聞いたから俺達は急いで来たんだぞ!」

「そうか。それはすまないな」


 怒るエンに、リューラは冷静に謝る。


「ところで、光のエレメンターは誰だ?」

「え、俺だけど?」

「お前か」


 リューラは俺を睨むと、腰の刀を手に持ち俺を指差した。


「私と勝負しろ」

「え?」


 突然勝負を申し込まれて、俺は戸惑う。


「勝負って、何で?」

「光のエレメンターは代々エレメンターのリーダーをしていると母上から聞いた。だから当代の光のエレメンターであるお前の実力が知りたい」


 俺の実力を知りたいって……。確かに光のエレメンターはリーダーだって言われたけど……俺はまだ……。


「勇也よ。ここはあの子の挑戦を受けるのじゃ」

「え!? ……わ、分かった」


 ヒレアが屋敷の結界を解除すると、門をくぐって庭に移動し、俺とリューラは木剣と木刀を持って対峙した。


「勝負はエレメント無しの一本勝負。これで良いか?」

「ああ、良いよ」


 リューラが木刀を構えると、俺も木剣を構えた。


「始め!」


 審判を買って出たヒレアが合図すると、リューラがあっという間に俺の目の前まで間を詰めた。


(速い!?)


 リューラが木刀を振り下ろすと、俺は木剣で受け止めるが、続けての木刀の連続攻撃に、俺は防御で精一杯でどんどん後退していく。


(ヤバい……強い!)


 リューラの連続攻撃に俺は防御に徹し、隙を見て木剣を振るが、リューラに弾かれて俺は木剣を手放してしまう。

 そしてリューラの木刀が俺の首に突きつけられる。


「勝負あり」


 勝負が決まると、リューラは木刀を下ろした。


「こんなものか」


 リューラはガッカリした様な顔で木刀を地面に投げ捨てると、門に向かって歩いた。


「何処に行くんじゃ?」

「この程度の奴を、私はリーダーとは認めない」


 リューラはそう言い残して門を出て去ってしまった。

 何も言い返せなかった俺は悔しく拳を握る。

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