11人目のエレメンター
「久々に会ったのに、こんな状況じゃあんまり喜べないな」
しんみりした顔で言うこの髭の濃い男の人が、先代の鉄のエレメンターでスチアの父親のアロンさん。
「仕方なかろう。折角の村の名物が大変なことになっておるしのう」
「ああ。これまでクロウが村にやってくることはあったんだが、一羽か二羽ぐらいで十分対処出来ていたんだ。だが一月程前に急に群れで現れてな、何十羽も現れて対処しづらくなったんだ」
「んだ。こんな事初めてだべ」
急に群れで現れたのか。なんでだろう?
「クロウは確かに群れで行動するが、先程の群れよりも多い数が山の方から感じた。かなり大規模な群れのようじゃな」
「ああ。俺も普通じゃないと思い、スチアや村の者と一緒に山へ行って調べに行ったんだが、クロウの数が多くてあまり調べられなかったんだ」
「あの数じゃからのう」
俺達は見合うと頷いた。
「俺達が山に行ってきます」
「良いのか?」
「解決しないと、スチアが仲間になってくれないかもしれないですし」
「すまないな。スチア、お前も一緒に行ってこい。山に詳しいのが一人でもいれば良いだろ」
「分かっただ。オラが道案内するだ」
俺達はスチアの道案内の元、クロウが現れる山に入った。
「クロウが住んでるのは奥の方だべ」
俺達は山の中を進んだ。
道中何度もクロウに襲われながら進んで行く。
「思ったより数がいるな」
「ホントね。もう何回襲ってきたかしら」
もう五回以上襲われてる。
そして今もクロウと戦闘中だ。
「はぁぁぁ!」
フィーズが手から冷気を出して残りの一羽を凍らせた。
「ったく。どんだけいんだよ。おいスチア、クロウの住処までどのくらいだ?」
「あともう少し先だべ」
「なら僕が先行して見てくるよ」
ビトは鳥に変身すると、飛んで先に行った。
俺達も進もうとすると、レイフが目を閉じてたたずんでいた。
「どうしたの?」
「奥の木の上から何か大きなものがいる感じがいたします」
芝生の上だけじゃなく、木の上も分かるのか。
それより、大きなものって。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」
奥から鳥になって先行していたビトが慌てて戻ってくると人間に戻った。
「やばい! デカいのがいる!」
「デカい?」
すると、奥から強い風が吹いてきて、大きな黒い影が近づいてきた。
「クアァァァァァァァ!!」
それは俺達の真上を通り過ぎると、上昇して空から俺達を見た。
「何だあれ!?」
「大きなクロウ?」
現れたのは、頭にトサカが生えた三倍ぐらい大きなクロウだ。
「あれはクロウの中から稀に誕生するクロウの上位個体、キングクロウじゃ」
キングクロウは俺達をしばらく睨むと、どこかに顔を向け、その方向へ飛んでいった。
後をついて行くように大量のクロウも飛んでいった。
「大変だ! アイツが飛んでったの村の方だべ!」
「え!?」
「大変!」
「急いで戻ろう!」
山を急いで出ると、村の中を大量のクロウが飛びまわって村人や作物を襲っていた。
「早くクロウ達を倒そう!」
「一羽一羽倒すと時間が掛かる。ここはやはり……」
ジーリュは空を見上げると、俺達も見上げて視線の先にいるキングクロウを見た。
「やっぱりアイツを倒せば他のクロウも逃げていくかな?」
「群れならば統率するボスを倒せば大抵何とかなるはずじゃ」
「よし。まずはアイツを地上に落とそう。飛んでると厄介だからな」
最初に、レイフが二本の蔦でキングクロウの足を捕らえると、キングクロウは翼をバタつかせ焦っている隙に、鳥になったビトと煙になったミスクがキングクロウの上に飛び、猫の力を纏ったビトの爪とミスクのかかと落としでキングクロウを地上近くまで落とすと、アルツが土のエレメントで強化した拳で地面に叩きつけた。
地面に落ちたキングクロウの翼を、フィーズが手からの冷気で片方だけ凍らせた。
「グアァァァァ!!」
キングクロウが凍っていない方の翼から羽を弾丸の様に飛ばしてきた。
「うわっ!?」
俺は光の壁を作って羽を防ぎ、エンは火、ウィドは風で羽を撃ち落とす。スチアは自分の皮膚を鉄に変えて防御した。
キングクロウがもう一度羽を飛ばそうとすると、レインが水でずぶ濡れにして怯ませると、ライデンが電撃を放ち、キングクロウは痺れて動きが鈍くなった。
「くらえだべ!」
スチアが鉄化させた右拳でキングクロウの腹を殴ると、キングクロウはふらついた。
「今だべ!」
「ああ!」
俺は走りだしてジャンプすると、光のエレメントを纏った剣でキングクロウの顔を斬り落とした。
ボスがやられたからか、クロウ達が騒ぎ出し山の向こうへ飛び去った。
「よくやったお前達。これでこの村はクロウに悩まされる事は無いじゃろう」
「なら良かった」
俺が安堵の息を吐くと、アロンさんがやって来た。
「皆ありがとよ。エレメントの力が無くなった俺じゃあ村を守れなかった。皆が来てくれて本当に助かった」
「気にするでないアロン。エレメントの力はそのためにあるじゃろ」
「そうだな。スチア」
「分かってるべ、父ちゃん」
スチアは俺達の方を振り向く。
「そんじは皆。これがらよろしく頼むだ」
「ああ。よろしく、スチア」
スチアが仲間になって、これでエレメンターは11人になった。
残るはあと一人、龍のエレメンターだ。
 




