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エレメンターズ  作者: 至田真一
力を貰って異世界へ
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最初の出会い

「おーい、起きろ」


 誰かが呼びかけながら、俺の顔をビシビシと叩いている。


「ねぇ、ちょっと乱暴じゃない?」

「こうするのが手っ取り早いだろ」


 若い男女の声が聞こえて、俺はゆっくりと目を開けた。


「あ、気がついた」


 目を開けると、赤い服に黒いズボンを穿いた赤い髪と瞳をした少年と、白い服に青いスカートを穿いた青いロングヘアーに青い瞳の少女が座り込んで俺の顔を見ていた。


「えっと~……ここは?」


 俺は上半身を起こして周りを見渡した。

 今いるのは、大きな木を中心に手すりで囲まれた丘の上の広場みたいだ。

 確か俺は……車に轢かれた後、白い空間でライトスって人に会って……。


「なぁ」


 まだ頭がボーっとしてる中、赤髪の少年が声を掛けてきたので顔を向けた。


「お前、ホントに違う世界から来たのか?」

「え?」


 その質問に俺は困惑した。

 何でそんな事知ってるんだ? というか、ここは本当に異世界なのか?

 俺は立ち上がって手すりの方へ歩いて丘の周りを見渡した。

 この丘は塀で囲まれた町の中にあって、街並みは日本と違って海外、主に洋風に近い。車は一台も無く、代わりに馬車が行き来している。


「本当に異世界なのか……ここは」


 俺は呟くと、さっきの二人が近づいてきた。


「やっぱり違う世界から来たみたいだね」

「だな。ところで、お前何か出せるか?」

「えっとー、何かって?」

「あ~何か……光の玉みたいなのとか?」


 光の球か。確かにライトスさんから力は貰ったっぽいけど、本当に使えるのかどうかは分からない。

 俺は掌に集中させて光の玉が出るようにイメージしてみた。

 すると、掌に小さな光の玉が現れた。


「出たね」

「ああ。ホントにあの予言通りとはな」


 予言? 何の話だろ?


「お前、ちょっとついてきてくれ。多分お前と話がしたい奴がいるからな。俺はエン。こっちは妹の……」

「レインよ。君は?」

「えっと、勇也。光野勇也」


――――――――――――――――――――


 俺は丘の上から階段で下りて町に出ると、エンとレインの後をついて行った。

 この町の名は『ウェアーク』と言うらしく、街並みを見たり、武器を持って歩いている人に目を向けたりしながら町の中を進んでいた。


「着いたぞ」


 案内されたのは、三階建ての大きな屋敷だ。こんなデカい屋敷、初めて見た。

 エンが門を開けると、庭に箒で掃除をしている緑のローブを着た金髪の女性がいた。よく見るとその女性の耳が尖っていた。もしかしたら定番のエルフかな?


「あら、お帰りなさい」


 エルフの女性はこちらに気付いた。


「ただいま」

「いたぜ。あの木の下に」


 エンはエルフの女性に俺を見せると、エルフの女性は目を大きく見開いて箒を落とした。


「本当に……ちょっと待ってね!」


 エルフの女性は慌てた様子で屋敷の中に入って、しばらくすると戻ってきた。


「ごめんなさい、慌てちゃって。さぁ、中に入って」


 言われて屋敷の中に入り後をついて行くと、ある部屋に案内された。

 その部屋に入ると、天井から大きなカーテンが垂れ下がっていた。そしてそのカーテンには、影でだが大きな生物が映っていた。

 翼が生えた蜥蜴の様なその姿は有名な生き物、ドラゴンにそっくりだった。


「お主が異世界から来た少年か?」

「あっ、はい」


 威厳を感じる老人の様な声のドラゴンは俺に話しかける。


「よくぞ来た。ワシの名はぁあああああああ!!」


 開いていた窓から風が吹いてきて、カーテンが捲れると、50センチぐらいの小さな白銀のドラゴンが出てきて、慌ててカーテンを押さえた。


「ヒレア! 早く窓を閉めてくれ!」

「はいはい」


 ヒレアと呼ばれたエルフの女性は呆れた顔で開いていた窓を閉めに行った。

 カーテンにはただ大きなドラゴンの影が描かれているだけで、こっちの小さいのが声の主みたいだ。


「いやぁー恥ずかしい所を見せてしまったのう」


 テーブルの上に座る、如何にも老人の様な声で喋る小さなドラゴンは頭を掻きながら申し訳なさそうに言う。


「まぁ座りなさい」

「は、はい」


 俺はジーリュが座っているテーブルのすぐ横の椅子に座ると、隣にエンとレインも座る。


「ワシの名はジーリュ。賢龍とも呼ばれているドラゴン族の長老じゃ」


 長老!? こんな小さなドラゴンが。


「私はヒレア。先々代からエレメンターの回復術師(ヒーラー)として一緒に行動してたわ」

「えっと勇也です。光野勇也」


 向かいの椅子に座っているエルフの女性ヒレアが自己紹介をすると、俺も自分の名前を教えた。


「勇也君か。早速じゃが、光のエレメントを見せてはくれぬか?」

「あ、はい」


 俺は掌を上に向け、さっきと同じように小さな光の玉を出すと、ジーリュがジッと見る。


「うむ……本物じゃな」

「ええ。20年、予言を信じて待った甲斐があったわね」


 またか。予言って何のことだ?


「ところで、その力をどうやって手に入れたのか経緯を教えてくれぬか?」

「はい、これは……」


 俺は今までの事を話した。

 元の世界で死んで、不思議な空間でライトスさんに会い、そこで光のエレメントを貰って、そしてこの世界に来たことを。


「そうか。ライトスの奴め、未来に力を残せるようにそんなことを」

「あの予言はそういう事だったのね」

「あの、さっきから予言って?」


 そのせいでさっきから話がよく分からない。


「ああそうじゃな、話すとしよう」


 ジーリュは真剣な顔で話し始めた。


「20年前、この世界を支配しようとした魔王と呼ばれる者がおったんじゃ」


 魔王。ファンタジーでよく聞くけど本当にいるんだ。


「先代エレメンター達は、各地で暴れる魔王軍と戦い、遂に魔王と戦った。激戦の末、魔王を追い詰め、ライトスが止めを刺そうとした時じゃった。当時、光のエレメントと同等の力を持つエレメント、闇のエレメンターが邪魔をし、なんと魔王の力を奪ったのじゃ」


 俺は息を呑んで話を聞く。


「魔王の力を取り込んだ闇のエレメンターは、他のエレメンターやその仲間達に襲い掛かった。仲間が傷つき、ライトスは一人で戦い決着がついた。……相打ちという形でな」


 相打ち……だからライトスさんは。


「その後死してなお、あやつは人々から英雄と呼ばれるようになるが、二つの最強のエレメントの消失。死んだ仲間。更にあの戦いでワシはライトスに自分の力の殆どを送ってしまったため、こんなに小さくなってしまった。悲しいことが続きワシ等は落ち込んでいたある時、仲間の一人の預言者がこう予言をした。『20年後の未来。町を見渡せる丘の上の木の下に、光のエレメントを受け継いだ少年が異世界より現れる』……と」


 その話に俺は呆気に取られ言葉を失う。


「その予言を信じ、エレメンター達は力を次の代に継がせるため一時解散、ワシとヒレアはこの町で20年を待った。そして今に至る、というわけじゃ」


 予言を信じた結果、力を受け継いだ俺がこの世界に来た……のか。結構話が大きいな。


「さて。話が長くなったが、光のエレメントが復活した今、再びエレメンター達が集まる時じゃ」

「そう言えば、エレメントって全部でいくつあるの?」

「お主の光と合わせて12個存在する」


 俺のと合わせて12ってことは、あと11個もあるのか。


「残りの11人を探さないといけないのか」

「いや、九人じゃぞ」

「え?」

「ん?」


 なんか話が合わないぞ。


「む、もしやエン、レイン。お主等言ってないのか?」

「あー、連れてくるだけだったからな」

「教えてなかったね」


 俺の隣に座っているエンとレインがそう言うと、二人は手を出すと、エンの掌から火、レインの掌から水の玉が現れた。


「えっと、もしかして」

「うむ。エンは火、レインは水のエレメンターじゃ」


 この二人、エレメンターだったのか。先に言ってほしかったな、それ。

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