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エレメンターズ  作者: 至田真一
集まるエレメンター 後編
19/202

10人目のエレメンター

 その日の夜、俺達はフォレイスさんの屋敷で夕食をいただいたが、後でいただくと言ってレイフは姿を現さなかった。

 案内された部屋で俺は眠りについていると、夜中にトイレに行きたくなり目を覚ました。


「流石貴族の屋敷だな。トイレも綺麗だ」


 用を済ませて部屋に戻ろうと廊下を歩いてると、窓から庭のベンチに座り、夜空を見上げているレイフが見えた。

 俺は外に出て屋敷の陰から覗いた。

 夜空を見上げているレイフの顔は、なんだか寂しそうに見える。


「覗き見とは趣味が悪いですわ」


 その言葉に俺はビクッと肩を震わせ、姿を見せた。


「えっとー、気付いてた?」

「はい。芝生を踏んでいたお陰で」

「芝生?」


 確かに俺は今、庭に敷き詰められた芝生を踏んでいるけど。


「草のエレメンターは植物の状態が分かるのです。なので、貴方が芝生を踏んでいたので、貴方がいることも分かりました」


 なるほど。凄いな、草のエレメンターは。


「……昼間はすみませんでした」

「え?」

「皆さんとの同行を断ってしまって」

「ああ。……あの、そう思うんなら一緒に来てくれても良いんじゃ?」


 俺がそう言うと、レイフは少し俯く。


「お父様から聞いているかもしれませんが、(わたくし)は小さい頃世界を見ることに憧れていました。でも……エレメンターには危険な戦いも多く、もしかしたら死んでしまうかもしれないと思うと……怖くなったのです」

「……そうか」


 死への恐怖。それが理由か。


「貴方は違う世界から来たと聞きましたが、怖くは無いんですか?」

「んー……怖くないと言ったら嘘になるし、最初は不安だった。でも、気付いたら不安じゃなくなっていったんだ」

「どうしてですか?」

「皆が、仲間がいるから」

「仲間……」


――――――――――――――――――――


「なるほどのう」


 次の日、俺達はレイフの気が変わるまで待つことにして、フォレイスさんの屋敷を後にした。宿に戻ると、昨晩の事を皆に話した。


「つまり、レイフが死への恐怖を克服してくれれば、ワシ等と一緒に来てくれるかもしれないという事じゃな」

「多分ね」

「でもどうやってだ?」


 エンの言う通りどうすれば良いのか分からない。

 するとフィーズが手を挙げた。


「僕達の実力を知ってもらうのはどうでしょうか?」

「俺達の実力?」

「はい。僕達と一緒なら大丈夫、と思ってくれればレイフも安心して来てくれるんじゃないでしょうか?」

「案がないよりはマシじゃが、どうやって実力を知ってもらうんじゃ?」

「冒険者ギルドで魔物討伐の依頼を受けるんです。それにレイフも同行してもらい、僕達の実力を見てもらうんです」

「良いかもしれないわね。私は賛成よ」

「俺も」


 フィーズの案にミスクとウィドが賛成した。


「じゃあ早速この町の冒険者ギルドに行こう」


 俺達は冒険者ギルドに向かうため宿を出ると、横から走ってきた小太りの男の人とぶつかりそうになった。


「わっ! す、すいません!」

「いえ、大丈夫です。あの、慌ててるようですけど?」

「は、はい! 私旅の行商人で、この町に荷物を届けに来たのですが、町の近くで荷物の中にある食べ物を狙って魔物に襲われてしまい慌ててこの町に逃げ込んだのです」

「魔物が!?」


 話を聞いていると、町の入り口の方から何やら大きな音が聞こえた。

 急いで向かうと、そこには頭に五本の角を生やした緑色のティラノサウルスの様な魔物が暴れていた。


「あれはジュラルスじゃ。森に住む肉食の魔物じゃが……もしや、先程の行商人はコイツに」

「行商人を追って来たのか、食べ物の匂いに釣られたのか、どちらにしても危険ね」

「早く倒さないと。皆行こう」

『おお』


――――――――――――――――――――


「レイフ、まだ彼等と一緒に行く気はないか?」

「はい……」


 フォレイスは呆れた様子で息を吐くと、部屋のドアがノックされた。


「入れ」

「失礼します。旦那様、町に魔物が侵入し、エレメンターの皆様と交戦中です」

「何だと!?」


 フカードの報告を聞いたフォレイスは焦った様子で立ち上がり、レイフも顔を驚かせる。


――――――――――――――――――――


 俺、エン、ライデン、アルツ、ウィド、ミスクでジュラルスと戦い。

 レイン、フィーズ、ビト、クロエ、ヒレア、ジーリュが住民の避難をさせている。

 俺はジュラルスの体を剣で斬りつけるが思ったより硬く弾かれた。


「硬っ!? これ、エレメントで攻撃しないと効かないかもな」


 次にミスクがジュラルスの頭を飛び蹴りで攻撃するがビクともしない。

 ジュラルスはミスクに向かって尻尾を振り回すと、ミスクは煙になって避けるが、尻尾の風圧で飛ばされ、俺の近くで実体化する。


「大丈夫かミスク?」

「煙になれば当たらないのは良いんだけど、風圧や風に弱いのが難点なのよね」

「まぁ煙だし」


 エンが火球、ウィドが風の刃で攻撃するが一歩後退しただけであまり効いてるように見えない。

 ライデンも手から電撃を飛ばすが、ジュラルスは躱した勢いで尻尾を当ててライデンは吹き飛ばされ建物に激突する。


「痛ぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「大丈夫かライデン?」

「痛ぇよ!」

「うおっ!?」


 ジュラルスがアルツに噛みつこうとすると、アルツは地面に手を付け、地面から土の柱を生み出しジュラルスの顎に当てる。


――――――――――――――――――――


 町の人達を避難させているジーリュ達の元に、フォレイスとレイフが駆け寄る。


「ジーリュ!」

「おお、お主等来たのか」

「状況は?」

「避難は間もなく終わるが、勇也達がジュラルスに手こずっておる」

「ジュラルスか。中級冒険者で倒せるぐらいだから、今の彼等では手強いな」


 戦っている勇也達を、レイフは胸に手を当てて心配そうに見る。


――――――――――――――――――――


「おっと!」


 噛みついてきたジュラルスの懐に転がり、ジュラルスの腹に光のエレメントを乗せた剣で斬りつけると、さっきよりも手ごたえがあり、傷口から血が出た。

 体の内側が外側より柔らかいみたいだな。でも懐に潜り込むのが難しい。

 どうにか動きを止められれば良いんだけど。


―――――――――――――――――――――


 勇也達の戦いを見ているレイフの手は震えていた。

 魔物への恐怖と死の恐怖がレイフを襲っていた。

 しかしそれでも必死に戦う勇也達に、思わず見とれてしまっている。

 どうして戦えるのか。怖くないのか。そんなことが頭に過ると、昨晩の勇也の言葉を思い出す。


「仲間がいるから……」


 レイフは目を閉じて何度も深く深呼吸すると、覚悟を決めたように目を開いて走りだした。


「レイフ!? 待て!」


 フォレイスの制止を聞かず、レイフはジュラルスの近くまで走ると足を止め、地面に向かって手をかざすと、地面から蔦が伸び、ジュラルスに巻き付いて動きを止めた。


「皆さん、今の内に!」

「レイフ……よし。皆、アイツの腹を集中攻撃だ!」

「おっしゃあ!!」


 エンの火球、ウィドの風の刃、ライデンの電撃がジュラルスの腹に当たり、続いてアルツの土の拳とミスクの蹴りが当たり、ジュラルスは痛いのか咆哮を上げると、勇也の刀身が伸びた光の剣でジュラルスの体を貫くと、ジュラルスの頭がカクッと下がり、レイフが蔦の拘束を解くとジュラルスは倒れた。


「やったー!」


 勇也達が喜ぶ中、レイフの頭にフォレイスが手を乗せる。


「よく勇気を出せたな、レイフ」

「はい……お父様。私、あの人達と一緒なら大丈夫かもしれません」

「かもしれないではない。大丈夫だ」

「はい」


 その後、レイフは勇也達と一緒に行くことを告げ、仲間になった。

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