蘇りし者
地上に出た俺とジーリュ達は、魔王城跡地でクロークとクロースと対峙していると、後方から気配を感じた。
振り向くと、さっきのクロークの呼びかけで集まった人造エレメンター達。その後方にはレイン達が人造エレメンター達を追っていた。
「集まったようだな」
「クローク……。人造エレメンターが来ればエレメンター達もやって来る。わざわざ集めてどうするつもりじゃ?」
「なぁに。ただのお披露目会さ」
そう言うとクロークは振り向き巨大なカプセルに近づく。
「さぁ刮目せよ!! 最強の人造エレメンターの誕生をな!!」
クロークはカプセルの横のボタンを勢いよく押した。
カプセルの中の気泡が増えて中が見えなくなると、気泡が見えてカプセルの中が一瞬見えた。
「っ!? 今のは……」
「ん?」
ジーリュが何かに驚くと、カプセルがひび割れ、中の液体が溢れ出た。
液体が全て流れると、中に入っていた人造エレメンターがそこに座り込んでいた。
人造エレメンターは黒い髪に赤い紋様が刻まれた黒い鎧を着ていた。
「な、何故……」
「ジーリュ?」
あの人造エレメンターの姿が見えてからジーリュの様子がおかしい。
ジーリュだけじゃない。ヒレア、グレスさん、ラースさん、グレンさん、ウィアさん、ランさん、モークさん、ゴサさん。
先代エレメンターとその仲間の皆がジーリュと同じような驚愕の表情をしている。
「どうだ? そっくりだろ?」
「クローク、どういうつもりじゃ!? 何故あやつと瓜二つのホムンクルスを!?」
あやつ? あのホムンクルスは誰かに似てるのか?
「何故そっくりに造った!? あやつに……ダーケルに!!」
『!?』
アレがダーケル?
偏見で世間を恨み、先代のエレメンター達と衝突し命を落とした、最後の闇のエレメンター。
セアノ王国の王城に壁画で描かれてはいたけど、傷だらけで全体像が分からなかった。
「人造エレメンターと言っていたが……まさか、闇のエレメントを使うというのか?」
「そうだ! 闇のエレメントの再現にはとても苦労した。光と並ぶ最強のエレメントだからな。頭を悩ませた私は『ある物』を使って再現出来た。それが小僧、お前の血だ!」
「っ!?」
クロークは俺を指差してそう叫んだ。
俺の血……最後の時の短剣があったあの洞窟で俺は大量の血を抜かれた。
アレを使って……?
「貴様の血の中に流れている光のエレメント。その力を反転させる事で光の反対、闇に変換することが出来た!」
「そうして闇のエレメントを再現した、という訳ね」
「その通りだヒレア」
俺の血で闇のエレメントを……。
悔しさに俺は歯を食いしばり、ライトカリバーを持つ手に力が入る。
「そしてこれで、本当の完成だ。クロース」
「おう」
クロースがカプセルの脇から何かを取り出し手に持った。
それは、何処となくライトカリバーに似た黒い剣だった。
「あれは!?」
「ジーリュ。知ってるの、あの黒い剣?」
「あれは……闇のエレメントアーマー、ダークカリバーじゃ」
「え!?」
闇のエレメントアーマー!? 何でそれをクローク達が持ってるんだ!?
「偶然、ダークカリバーをこの島で見つけてな。それでコイツの製造を思いついたのさ」
「そうか。あの時の戦いで、ダークカリバーは紛失した。じゃからこの島にあったんじゃな」
「回収するべきだったわね」
「今更後悔しても遅い。さぁ目覚めろ、ダーケル!!」
クロークが叫ぶと、ホムンクルスダーケルの目がゆっくり開いた。
赤紫の瞳が露わになると、少しフラついた様子でゆっくりと立ち上がる。
「あの目……本物のダーケルのようじゃ」
「よく出来てるだろ? 会心の出来だからな。さぁダーケル、剣を受け取れ! そして完全に目覚めるのだ」
ダーケルは頷くと、クロースが持っているダークカリバーを手に持った。
手に持つと、ダークカリバーから黒い靄みたいなのがダーケルに纏わりつき、ダーケルの目が一瞬大きく開いた。
「ハハハハ……ハーッハッハッハッハッ!! 喜べジーリュ!! これでエレメントが全て復活したぞ!!」
「うう……何て望ましく無い復活じゃ」
「さぁダーケル!! 復活したお前の力を、奴等に叩き込め!!」
クロークが指示を出すと、自分の手を何度も握っているダーケルが俺達の方を向き口元を笑わせる。
ダークカリバーを向け俺達は身構えると……背後からクロークの腹を突き刺した。
「……は?」
「え?」
呆気に取られ俺達は呆然とすると、ダーケルはクロークの腹からダークカリバーを抜いた。
「ごはっ!!」
「兄貴っ!?」
クロークは吐血し時の剣を手から落とすと、腹を手で押さえると、背後にいるダーケルを睨む。
「き……貴様……どういうつもりだ……? 私は……貴様の、創造主だぞ……」
「……ああ。感謝してるぜクローク。”俺”そっくりに造ってくれてな」
「何を言って……っ!? まさか……貴様っ!?」
ダーケルが左手に黒い靄を纏わせると、クロークの腹に今度はその左手を突き刺した。
「ぐあああああああ!!」
「兄貴ィィィ!!」
突き刺さった所から黒い靄がクロークの体に纏わりつくと、ダーケルの体に入っていく。
黒い靄が全てダーケルの体に入ると左手を抜き、クロークは倒れた。
そしてクロークの傍に落ちている時の剣が石化し、封印状態になった。




