魔王の島の戦い②
「うおおっ!!」
刀身に光のエレメントを乗せたライトカリバーを振り下ろし、ラペーナの右腕を斬り落とした。
「ああぁ、腕が……」
腕を斬り落とされたっていうのに全く慌てる素振りを見せないな。やっぱり痛みを感じないからか。
ラペーナは斬り落とされた腕を拾い断面同士を合わせると、腕がくっ付き元に戻った。
「っ!? お前も再生出来るのか!?」
「あの後クローク様が再生能力を付けてくれたのよ。流石にスパーダとイセクがやられたのが大きく応えたみたい」
厄介な事してくれたな。
再生能力は人造エレメンター全員に付いてなかったのに、それが全員に付いたって事なのか。
この間の騒動で人造エレメンターを厚達が倒せたのは、再生出来ない程のダメージを与えたり、首を斬り落としたからだ。
そのぐらいしないとコイツを倒せないか。
「はいよっと」
ラペーナが崩れかけている建物の壁を俺の方に向けて蹴ると、壁は俺に向かって崩れ、光の壁を張って防ぐ。
「危なっ。……アレ? 何処に行った?」
壁が崩れた際に起きた砂埃が晴れると、ラペーナの姿が見えなくなっていた。
辺りを見渡しても姿が一切見えない。あの一瞬で何処に?
周囲を警戒していると、背後から気配を感じ振り向くと、木の中からラペーナが出てきてナイフを振りかざした。
「うわっ!?」
ギリギリ飛び退いて躱すが、左腕に掠ってしまった。
「木の中に? ……いや、木に化けていた?」
「そうよ。私が変身出来るのは人だけじゃないわよ」
つまり、物にも変身出来るのか。
そんな事されたらまるで透明人間だな。
姿が見えなくなるのは困る。
「ほらほら。ボーっとしてたら、切っちゃうわよ」
ラペーナが走りだしナイフを振りかざすと、俺は光の玉を投げつけ、ラペーナは飛び退いて避けられる。
やっぱ効くわけ無いか、こんな単純な攻撃。
また姿が見えなくなる前に倒した……。
(光……姿が見えない……そうだ!)
俺はもう一度光の玉を投げると、ラペーナは再び飛び退いた。
「まーたそんな攻撃? 効かないって分かってやって――」
次の瞬間、俺が投げた光の玉が弾けるように強い光を放つと、ラペーナは腕で顔を覆い隠す。
「うっ……目くらましのつもり? そんなんで……あれ?」
ある方法で姿を消した俺を見失ったラペーナは、動揺して辺りを見渡す。
「ど、どういう事? どうしてあの一瞬で見えなくなるの? 近くに隠れる場所なんて――」
ラペーナが振り向いた瞬間に、俺はライトカリバーの刀身に光のエレメントを乗せてラペーナを真っ二つに斬ったと同時に、俺は姿を見せた。
「え?」
ラペーナは動揺を隠せないような表情のまま、真っ二つに斬られ地面に倒れると、ひび割れて崩れた。
「はぁー……上手く行って良かった」
光のエレメントの力で、周囲の光を屈折させて姿を見えない様に出来るか試してみたけど、成功だ。
……でもこれ、凄い集中力が必要だから、常時発動は出来ないな。
エレメントラインを消して膝に手を付けると、息を整える為深呼吸をした。
「ハァー……。さて、どうにかコイツは倒せたし、何処かへ向かったジーリュとヒレアを追うか? ……でも、あっちも気になる」
――――――――――――――――――――
レヴィアータが指から伸ばした水の触手をレインに向かって伸ばすと、レインは避けたり大海の杖から放つ水の玉で弾いていく。
「う~ん。全然捕まえられないわね~」
「簡単に捕まってたまるわけ無いわよ!」
「そうよね~。……それなら」
レヴィアータが視線を外すと、その先にいるウィアに狙いを定めて水の触手を伸ばした。
「母さん!!」
レインは駆けつけ、大海の杖から水の壁を張って防いだ。
「ありがとうレイン」
「うん。どうして母さんを狙うの!?」
「ふふ。母親が捕まってしまえば、貴女は抵抗出来ないと思っただけよ~」
レインは歯を食いしばると、ウィアがレインの肩に手を乗せた。
「レイン。私に構わなくて大丈夫よ」
「母さん……でも……」
「私は元エレメンターよ。簡単に捕まらないわ。それに、娘の足手まといになりたくないわ」
「……分かった」
レインはレヴィアータの方を向くと、大海の杖から無数の水の矢を放った。
レヴィアータは水になって矢を避けると、地面を這って壁から天井に移動する。
「じゃあ、私のフィールドにしましょうかな~」
レヴィアータは体の中から大きな壺を取り出すと地面に落とした。
壺が割れると、中から大量の水が出てきて、あっという間に地面が水浸しになった。
「しまった!?」
「ふふ~」
レヴィアータは天井から降り水の中に入った。
レインは周囲を警戒すると、ウィアの足元から水の触手が伸びてきてウィアに巻き付いた。
「ああっ!!」
「母さん!!」
「は~い、動かな~い」
レインは駆けつけようとすると、ウィアのすぐ近くにレヴィアータが姿を見せ、ウィアの首を水の触手で締め付ける。
「一歩でも近づいたら、貴女の大事なお母さんが死んじゃうわよ~」
「うっ……卑怯者」
「ううっ……れ、レイン……」
ウィアは目を薄っすら開かせながらレインに向かって言葉を放つ。
「私に構わないで……良いから、うっ!」
「母さん!」
「ほ~ら。抵抗を止めないと、貴女のお母さん、どうなっちゃうかしらね~」
「っ……!」
レインは杖を握る力を弱くすると、エレメントラインを消し両腕を下げた。
「良い子ね~」
「レイン……」
レヴィアータは両手の指を水の触手に変えると、レインに向かって伸ばした。
「さぁ見てなさい。貴女の娘が凌辱される様をね」
「や、止めて……うっ!」
唇を強く噛むレインの体に水の触手が纏わりつき出し、レヴィアータは舌なめずりをする。
……と、光の斬撃が飛んできて、レインに伸びる水の触手を斬り落とした。
「はぁ!? まさか、ぶわっ!?」
振り向いたレヴィアータに光の玉が飛んできて上半身が吹き飛ぶと、ウィアに巻き付いている水の触手が消えた。
「レイン! 大丈夫か!?」
「勇也!?」
レインとウィアの元に勇也が駆けつけてきた。
レインが安堵の表情になると、レヴィアータは再生した。
「ああっもうっ!! 何でいっつも大事な時に邪魔すんのよ!! ラペーナは何やってんの!?」
「あの変身女なら倒したさ」
「はあっ!?」
「やったわね勇也!」
勇也とレインは微笑み合うと、レヴィアータは地団駄を踏んだ。
するとレインはエレメントラインを出し大海の杖を構える。
「……勇也、ジーリュの所に行ってきて。アイツは今度こそ私が倒す」
「でも……」
レインを心配する勇也に、ウィアが声を掛ける。
「勇也君……だったわね。多分ジーリュはクロークを探しに行ったと思う。クロークをなんとかしない限り、この戦いは終わらないわ」
「それは、分かるんですけど……」
「心配する気持ちは分かるわ。でも大丈夫よ。レインを信じてあげて」
ウィアの言葉に勇也は考え込むと頷いた。
「……分かりました。レイン、気を付けてな」
「ええ」
勇也はその場を後にし、ジーリュを探しに行った。
「あら~いいの? あの坊や行かせて」
「平気よ。それに……アンタみたいな卑怯者は、私の手で倒すわ。絶対に」




