六年前の真相
「何処だ? 何処だ!?」
エンは怒り交じりに辺りを見渡している。
ビトが聞いた鉄を打つ音が、エンの親かも知れないからと、結構肩に力が入ってる様に見える。
「兄さん、いい加減落ち着きなよ。父さんと母さんが自ら望んでクローク達に協力するわけ無いじゃない」
「分かってんだよんな事は! けどよぉ。どんな理由だろうと、あんな奴等に手を貸してるって思うとイラついちまうんだ」
エンの気持ちは分からないでもない。
これまでクローク達がやって来た事を考えると、それに手を貸してるのは嫌だよな。
「おーいお前等! 今鉄を打つ音が聞こえた!」
「ホントか!? 何処だ!?」
空から声を掛けたウィドが音が聞こえた方へ飛ぼうとすると、風の衝撃波が飛んできてウィドに命中し、地面に落下した。
「ウィド!?」
ウィドに目を向けた後、風の衝撃波が飛んできた方を見ると、そこにはズーパが飛んでいた。
「痛ってー……やっぱテメェか!」
起き上がったウィドは空を飛んでズーパへ向かうとハリケーンブーメランを投げ、ズーパは風の刃を放ち、互いの攻撃が弾かれた。
「あやつはウィドに任せ、ワシ等は進もう」
「ああ。そんなに遠くないはず」
俺達は再び足を進めて走りだした。
途中、武装獣が襲ってきて倒していきながら進んで行くと、「キンッ」と鉄を打つ様な音が聞こえた。
「今の音って……」
「こっちか!」
エンが走りだし俺達は後を追いかけると、他に比べて綺麗な建物が目立つ様に前方に建っていた。
どうしてあの建物だけなのか気になっていると、建物の中からさっき聞こえた鉄を打つ音が聞こえた。
「さっきの音だ」
「ここか!!」
エンは扉を蹴破って中に入った。
俺達も続けて中に入ると、そこには金床で鉄を打っている、エンと同じ髪色の男が驚いた表情で呆然と俺達を見ていた。
「やっぱりいたか……親父!」
「お前……エンか? 何故此処に?」
やっぱりあの人が、レインとエンの父親で、先代火のエレメンターのグレンさんか。
未だに驚いた様子のグレンさんは立ち上がると、エンは近づいて胸倉を掴む。
「おい親父! 何であんな奴等に手を貸してんだ! 答えろ!」
「ま、待て! 落ち着けエン!」
まだ頭に血が上ってるみたいだな。
落ち着かせる為声を掛けようとすると、一人の女性が割り込んで来て、胸倉を掴んでるエンの手に触れる。
「話を聞いてくれる? エン」
「お袋!?」
割り込んで来た青い髪の女性。あの人がレインとエンの母親で、先代水のエレメンターのウィアさんなのか。
「母さん!」
「レイン。大きくなったわね」
レインはウィアさんに歩み寄る。
やっぱり親子だから顔が似てるな。……胸の大きさは全然違うけど。
「エンよ。二人の話を聞いてあげなさい」
「……」
「ジーリュ……」
エンは少し考え込むと胸倉を放した。
「話してくれんだろうな? 親父」
「ああ。……あの日、お前達が買い出しに行っていた間に、クロークが店にやって来たんだ」
「クロークがか?」
ジーリュが訊ねるとグレンさんは頷き続きを話した。
「アイツは俺達に協力するよう呼びかけたが、当然俺とウィアは断った。するとアイツは、魔物を操る宝玉を見せてこう言ったんだ。『引き受けなければ魔物を使ってお前達の子を殺す』と」
グレンさんの言葉にエンは目を見開く。
つまり、レインとエンの命を人質にされていたって事なのか。
「あの時のお前達はまだ、エレメントを完全に引き継いだばかりだったからな。失う訳にもいかず、俺とウィアは仕方なく従う事にしたんだ。ウェアークの屋敷に行くよう、あの書置きを残して」
「……」
「そうじゃったか。じゃがお主達が無事で良かった」
「俺も安心した。二人が無事な事に。エレメントアーマーも手に入れられた事に。俺達に負けない程活躍してくれた事に」
「ええ」
グレンさんとウィアさんの安心しきったその顔は、正しく子供を心配する親の顔だ。
ジーリュ、ヒレア、ランさん、モークさんも安心した顔をすると、後ろから拍手をする音が聞こえた。
「泣かせるなー。親子感動の再会」
振り向くとそこにいたのは、笑みを浮かべたクロースだった。
「クロース!?」
「本当にあの頃のままね」
「また懐かしい顔が増えたな。いや、憎たらしい顔か」
クロースが剣を抜き、俺達は戦闘態勢を取ると、ふと背後から気配を感じ俺は後ろを向くと、鍛冶用の水から伸びた水の手がレインに迫っていた。
「レイン、危ない!」
「え?」
レインが振り向くと水の手に捕まりそうになるが、レインは咄嗟に大海の杖で防いだ。
「あら~残念」
水の中からレヴィアータが出てくると、今度は暖炉の火からアスルモスが出てきて、エンに向かって剣を振り下ろす。
「っ!?」
エンはフレイムソードを抜いて受け止めると弾いた。
今度は急に寒気を感じ、振り向くとクロースの傍にルーゴンがいた。
「俺一人で来るわけ無ぇだろ。もうお前等は用済みだって兄貴が言ってたからな。此処で退場してもらうぜ」
「ふん。エン達が来た以上、もうお前達に従う必要は無い。だからと言って、死ぬつもりも無い」
グレンさんは近くの剣を手に持ち構えた。
クロースと人造エレメンター三人。ちょっと厳しいかな。
「おっと。抵抗すんじゃねぇぞ」
クロースがそう言うと、隣にいるルーゴンが手を後ろに押さえつけている美奈を引っ張り出した。
「美奈!?」
「おら、武器捨てな。コイツの命が惜しいんならな」
「助けて……」
「おのれ、卑怯な」
美奈の首に剣を突き付けるクロースに、ジーリュは睨み、俺は歯を食いしばると、俺達は戦闘態勢を解いてい……。
「助けて……勇也」
「っ!」
解こうとしたが、俺は掌に光の玉を生み出し、クロースに向かって放った。
「なっ、どわっ!!」
「きゃっ!」
クロースはふらつき、美奈は吹き飛び倒れると、体が揺らめき、ラペーナになった。
「真似るんだったら呼び方も真似るんだったな」
美奈は俺を「勇」って呼ぶからな。
例え捕まっていても呼び方までは変えないはず。
「チッ! 上手く行くと思ったんだがな」
「すみません。呼び方まで知りませんでした」
「あやつが化の人造エレメンターか。確かに、凄い変身能力じゃな」
「見た目はね。でも中身の真似は苦手みたい」
「うぅ……」
今ので、洞窟で仕返しは出来たかな。
「なぁジーリュ。彼が今放ったのって、光のエレメントだよな。まさか……」
「そうじゃ。彼こそが、例の予言の少年、勇也じゃ」
「本当に……!」
グレンさんとウィアさんは俺を見て歓心の眼差しを向ける。
何か懐かしいな、この流れ。




