緑の町の草少女
ホワーツの町を出て四日。
新しく仲間になったミスクを加えて、エレメンターを探す旅を続けていた。
残るエレメンターは三人だ。
「意外と馬車って暇なのね」
ミスクが退屈そうに言う。
ちなみにミスクの服装は初めて会った時の様な道着ではなく、白いスポーツブラの様な服に茶色のショートパンツと言った動きやすそうな格好だ。
「まだまだ馬車の旅は続くんだから我慢しなよ」
「こんな事で随分情けねぇな」
「何よ、私に勝てなかったくせに偉そうに」
「ああっ!?」
ウィドがミスクを睨む。
「やめんかお主等。そんなことで喧嘩するでない」
ジーリュに言われて、二人は少し落ち着く。すると、馬を扱っているクロエが馬車を停めた。
「ジーリュさん。こちらの道はどちらに進めばよろしいでしょうか?」
窓から顔を出して前を見ると、前方に分かれ道があった。
「実はどちらの道の先にもエレメンターが居るんじゃよ」
「じゃあどっちに進んでも良いのか」
「いえ、最後のエレメンターが住んでいる町の場所を考えると……左に進んだ方が良いわ」
「分かりました」
ヒレアの言葉で、馬車は左に進んだ。
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それから翌日。道なりに馬車を進めていくと、前方に大きな町が見えた。
「あれは緑の町、リフルじゃ。あそこには草のエレメンターがいるはずじゃ」
草のエレメントは確か植物を操る力だって前に言ってたな。緑の町に住んでるのは確かに合ってるかも。
町の中に入ると、これまでの町に比べて街路樹が多く、花も多い。如何にも緑の町って感じだ。
町を進んで宿に着くと馬車を預けた。
「じゃあ次はエレメンターの住んでる家の聞き込みだな」
「いや、今回はその必要はない」
「何で?」
「草のエレメンターは代々、この辺りの領主をしておる。じゃから領主の屋敷に行けば会えるはずじゃ」
領主って事は、草のエレメンターは貴族とかなのかな? 貴族なんてどう相手すればいいんだろう?
まぁとりあえず、今は領主の屋敷に行こう。
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町中を進み、俺達は領主の屋敷にやって来た。
屋敷の門の前には二人の衛兵が立っていた。
「こちらは領主様のお屋敷だ。何か用か?」
「えっとー、俺達エレメンターで、草のエレメンターに会いに来たんですけど」
俺がそう言うと、衛兵の二人は表情を驚かせる。
「少々お待ちください」
衛兵の一人が屋敷へ入り、しばらく待つと衛兵が戻ってきた。
「お持たせしました。ご案内します、こちらへ」
俺達は衛兵の後をついて行き、屋敷に案内された。
衛兵に案内されて屋敷に入ると、玄関に執事の恰好をした70代ぐらいの男性がいた。
「現代のエレメンターの皆様、初めまして。私、こちらの屋敷で執事をしております、フカードと申します。早速ですが旦那様の元へ案内いたします。こちらへ」
俺達はフカードさんについて行き、ある部屋に案内されて入るとそこは食堂で、長いテーブルの奥の椅子に緑色の髪をした男性が座っていた。
「おおフォレイス、久しぶりじゃのう」
「久しぶりだなジーリュ。ヒレアも。まぁ皆、座りたまえ」
俺達は言葉通りに椅子に座った。
「さて、私がこの町の領主にして、先代の草のエレメンターのフォレイスである。それで、光のエレメンターは誰だい?」
「あ、俺ですけど」
「そうか、君が。エレメンターが来たという報告を聞いた時は驚いたと同時に嬉しかったよ」
「ワシもじゃよ、フォレイス」
ジーリュとフォレイスさんはお互いを見て笑う。
先代のエレメンター達は、光のエレメントが復活するのを信じて20年も待ってたんだもんな。
「ところで、現代の草のエレメンターは何処におるのじゃ?」
「ああ。娘なら今メイドが呼びに行っている。もうそろそろ来ると思うが……」
すると、ドアからノック音が聞こえて、ドアが開くとメイドが一人入ってきた。
「失礼します。旦那様、お嬢様をお連れしました」
メイドの後ろから、黄緑色のドレスに身を包んだ、緑のロングヘアーに花の髪飾りを付けた女の子か出てきた。
「ただいま参りましたわ、お父様」
「来たか。紹介しよう。私の娘で、現代の草のエレメンターのレイフだ」
「初めまして、レイフと申します」
レイフはドレスの裾をつまんでたくし上げて挨拶をする。
こういう挨拶初めて見たな。本当にいるんだ。
レイフはフォレイスさんの近くの椅子に座った。
「レイフ。彼等はお前と同じエレメンターだ。これからお前は彼等と共に行動し、いろんな人達の為に――」
「嫌です」
レイフの言葉に、俺達は思わず驚く。
「……だがなレイフ。私も含めて歴代のエレメンター達は、エレメントの力でいろんな人の為に力を使い助けてきたんだ。だからお前もそうしてほしいんだ」
「何度も言われましても、私は嫌です。それでは」
レイフは立ち上がるとそのまま食堂を出てしまった。
出て行った後、フォレイスさんは頭を抱えてため息を吐く。
「すまないな。昔は色んな場所を見たいと言って他のエレメンターが来るのを楽しみに待っていたんだが……最近それが嫌だと言うようになってしまったんだ。理由も教えてくれない」
「それは困ったのう。早く次のエレメンターにも会わないといけないんじゃが」
確かに、あの子を除いて、あと二人いるからな。
「皆、今日は泊っていくと良い。私はあの子が一緒に行ってくれるよう、何とか説得してみる」
「そうか、頼んだぞ」
俺達はフォレイスさんの屋敷に一泊してもらうことになった。




