戦いへ向けて
「大丈夫? 勇也」
「あぁ。今は大丈夫。でも、ちょっと怠いかな」
ウェアークの戦い戦いから翌日。
まだ体調が戻ってない俺は、自室でレインに見守られながらベッドで横になっていた。
「皆は?」
「準備を進めてる。勇也の体調が完全に治ったら出発するって」
「そっか……」
遂に突き止めたクローク達の居場所。
それは、かつて先代エレメンターが戦った魔王の城がある孤島だった。
その島の周囲の海は荒れていて船では近づけない為、空から行くしかないらしい。
つまり、行くには召喚獣のライトドラゴン、青龍、フェニックス、スカイイーグルに乗って行くしかない。
「……」
「どうしたの? レイン」
浮かない表情のレインに声を掛けてみた。
「……本当に、父さんと母さんが居るのかなって……」
武装獣の鎧に付いていたマークから、六年前に行方不明になっていたレインとエンの両親が、クローク達に協力しているという疑惑が出た。
やっぱり自分の親が悪事に手を貸しているなんて信じられないよな。
俺は上半身を起こすと、手を伸ばしてレインの頬に添える。
「大丈夫だよ。もし居たとしても、きっと何か訳があるんだよ」
「そうよね。会って話を聞かないと」
「ああ。俺も早く体調が早く良くなる様に頑張るよ」
「ええ。でも無理しないでね」
レインは俺を寝かせて布団を被せると、顔を近づけて唇を合わせた。
――――――――――――――――――――
エンのフェニックスに乗って、セアノ王国の王都にやって来たジーリュ、ヒレアはエンと共に王城へ向かった。
正門の前で兵士に事情を説明すると、中に入れてもらい、シュアン国王がいる執務室へ案内された。
「ん? ジーリュ殿?」
「おお、ラース」
執務室へ向かう途中で、先代エレメンターの仲間であり、現在はセアノ王国騎士団長をしているラースと会った。
「珍しいですね。一体どのような用で?」
「ちょっと国王に相談をな。じゃが丁度良かった。お主にも用があったんじゃ」
「私に?」
「うむ。スマヌが、一緒に国王の元に来てくれぬか?」
「分かりました。後は私が連れていくから、お前は持ち場に戻って良いぞ」
「はっ」
案内していた兵士は持ち場に戻り、ラースが先導し執務室へ向かった。
執務室の前に着くと、ラースがドアをノックした。
「陛下。ジーリュ殿達が陛下に用があるとお越しになられました」
「何? ……分かった。入れてくれ」
「失礼します」
ラースがドアを開けると、奥の机で書類の整理をしていたシュアン国王がいた。
ジーリュ達は部屋の隅にあるソファに座り、テーブルを挟んだ向かいのソファにシュアン国王が座り、斜め後ろにラースが立つ。
「それで、本日は一体どんな用で?」
「うむ。先日、ウェアークに人造エレメンターがやって来た話は耳にしておるか?」
「ええ。伺っています」
「その時に、奴等が魔王の城があったあの孤島を根城にしている可能性があると分かったんじゃ」
「あの島に!?」
ジーリュの話を聞いて、ラースが声を上げる。
「相手の戦力は未だ未知数。戦力を集めてから向かおうと思っているんじゃが……」
「ここ最近、多くの冒険者が人造エレメンターにやられてしまっています。今回の襲撃でも」
「うむ。そこでじゃ……」
ジーリュはラースに目を向けると、ラースは視線に気付く。
「ラースを貸してもらえんじゃろうか?」
「ラースを?」
「人造エレメンターは手強い。それに、クロークに時のエレメントが恐らく戻ってしまった。生半可な実力者では駄目なんじゃ」
「まぁ、言っている事は分かるが……」
流石に騎士団長となると貸しづらいシュアン国王は頭を悩ませていると、意を決した表情のラースがシュアン国王に顔を向ける。
「陛下。私からもお願いします。エレメンターの方々と同行させて下さい!」
ラースは深く頭を下げ、シュアン国王にお願いした。
「……分かった。一大事という事に変わりは無い。同行を許可する」
「ありがとうございます!」
「では、出発の日にまた来る。ラースよ。その時はまたよろしく頼むぞ」
「はい。また共に戦えると思うと光栄です」
――――――――――――――――――――
三日後。準備が終わった俺達は、等々クローク達の本拠地へ向かう日が来た。
出発の為、俺達は王都の王城前にやって来た。
「勇也。本当に体大丈夫?」
「ああ。もうバッチリだ」
この三日、しっかり食べて寝てを行ったから、もう抜けた分の血は回復した。
それに、寝てばかりはいられないしな。
「皆さん。お待たせしました」
城の門が開くと、中からラースさんが出てきて、一緒にシュアン国王とディノ先王もいた。
「エレメンターの諸君。健闘を祈る」
「はい」
ラースさんは俺達に目を向けると、一緒にいるグレスさんに目を向けた。
「グレス殿も一緒なのか」
「ああ。またよろしくな、ラース」
「ええ。しかし……」
ラースさんが不思議そうに振り向いた。
その先には、先代龍のエレメンターのランさんと先代煙のエレメンターのモークさんがいた。
「あのお二人も一緒なんですね」
「先代エレメンターの中で、現状戦えるのはあの二人だけだからな」
共に戦ってくれる人を探しているときに、先代エレメンターの手を借りようという案が出たが、ランさんとモークさん以外は、主にエレメントで戦っていた為、エレメントの力が無くなった今では、この二人しかまともに戦う事が出来ない。
「スマンなラン、モーク。引退したお主達を戦わせる事になってしまって」
「気にしなくて大丈夫よ」
「ああ。それに、これは解決出来なかった俺達の問題でもあるからな」
多分、クロークとクロースを止める事が出来なかった事の責任を感じてるのかも知れないな。
ラースさん、グレスさん、ランさん、モークさん。この四人が俺達と一緒に戦ってくれる事になった。
元エレメンターとその仲間だった人達だ。これは心強い。
「では行こう」
「ああ」
俺達はライトドラゴン、青龍、フェニックス、スカイイーグルを召喚すると背に乗った。
「懐かしいわね。青龍の背中」
青龍に乗ったランさんは懐かしむ顔で背中を撫でる。
「じゃあ皆、行こう!」
『おおっ!!』
ライトドラゴン達は飛び立ち、俺達は孤島へ向かった。
「頼んだぞ。エレメンター達」




