本拠地と制作者
ウェアークで人造エレメンターとの戦いが終わった。
けどその結果は良い方と言って良いか分からない。
人造エレメンターの内、糸と虫の人造エレメンターを倒す事が出来た。
しかし、代償として俺達は、折角手に入れた最後の時の短剣を奪われた。
これによって、クロークは時のエレメントを取り戻してしまった。
「一大事じゃ……。クロークに時のエレメントが戻ってしまった」
「もう既に戻っているかどうかは分からないけど、状況が悪い事に変わりは無いわね」
「あの力が復活か……。気が滅入るな」
時のエレメントの力を知っているジーリュ、ヒレア、グレスは気が重そうな顔をしている。
時のエレメントは時間を操る力。そんなのを相手にするのは確かに骨が折れそうだ。
「オイラの相手が土のアイツじゃなくて毒の奴だったから変だと思ったんだよなぁ。無視して探せば良かったかも」
「いや。結界があるからとワシも油断していた。地下室の壁を変えておくべきじゃった。あやつは石の中に潜れるし、木の壁にしておっても、木の人造エレメンターに入られてしまう」
「やっぱり、部屋全体に結界を張れば良いかしらね。でも今は……」
「そうじゃったな。どうにかしようにも、クローク達が何処にいるのか分からんのじゃよなぁ」
「仮に見つけられたとしても、他の人造エレメンターも厄介だ。中には再生能力を持つ者もいるからな」
今回の戦いで、皆は大分人造エレメンターとの戦いに慣れてきたと聞いた。
それでもまだ相手の方が強い。
俺も早く調子を戻さないと。
「あいつ等の居場所なら、俺に任せてくれ」
ライデンが前に出ると、クロエに目を向けた。
頷いたクロエは目を閉じた。
「どうしたんじゃ?」
「実はな、雷の人造エレメンターが撤退する間際にな、アイツに発信機を投げたんだ」
「発信機?」
「簡単に言えば、位置が分かる機械だ。つまり、アイツの現在地が分かれば……」
「クロークの居場所が分かる。……という事じゃな」
ジーリュの言葉にライデンは頷いた。
「今、クロエが発信機の現在地を探索中だ」
「ならば……林子よ。世界地図を持ってきてくれ」
「は、はい」
世界地図を取りに、小森先生はリビングを出た。
しばらくして戻って来ると、丁度探索が終わったクロエが地図を指差しながら教える。
「場所が分かったら乗り込むべきだが……正直、エレメンターのみではキツいんじゃないか?」
グレスさんがハッキリそう述べる。
確かに、敵の本拠地に攻め込むんなら、もう少し戦力が欲しい。
「人造エレメンターも、まだ居るかも知れんからのう」
「武装獣も沢山いるだろう。アイツ等の鎧も結構硬くて厄介だったしな」
グレスさんは腕を組んで悩ましい顔になると、リビングのドアが開いた。
「そりゃあそうだろうな」
リビングに入ってきたのは、何故かまだ屋敷に戻っていなかったエンだ。
「どうしたの兄さん? 怖い顔して」
レイン言う通り、エンの顔がとても険しいものになっている。
あと、何故かエンの右手には武装獣の胸当てがあった。
「レイン。これに見覚え無ぇか?」
「え?」
エンが胸当ての裏側をレインに見せると、俺達も覗き込んだ。
胸当てを眺めていると、隅っこの方に丸で囲まれた火のマークが小さく刻まれていた。
「……ん? この紋様、前にお前達が倒したリザードマンの兜の裏側にもあったな」
「そうなんですか?」
グレスさんが頷くと、気になったのかジーリュも覗き込む。
「む? この紋様、何処かで……」
「ジーリュもか。俺もだ。何処かで見た気がするんだが……」
ジーリュとグレスさんがこのマークの事で考え込んでいると、突然レインの目が大きく見開いた。
「嘘……これって……」
「知ってるの、レイン?」
この反応は明らかに何か知ってるな。
するとレインの代わりにエンが口を開いた。
「これはな……親父の店のマークだ」
エンから放たれたその言葉に、俺達は驚く。
「そうだ、思い出した! 昔グレンの店を訪れた時、これを見たんだ!」
「えっと……じゃあ……」
「間違いねぇ。この鎧を……武装獣の鎧を作ったのは……親父だ」
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「おい、フリュー。首に何か付いてるぞ」
「ん?」
ズーパがフリューの首の後ろを指差す。
フリューは自分の首の後ろを触ると、小指の爪ぐらいの小さな機械がくっ付いていた。
「何だコレは?」
フリューは首を傾げると、電撃で機械を壊した。
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「む~……」
ジーリュは前脚を組んで頭を悩ませている。
「グレンがクロークに協力しているとは思えんのじゃが……」
「もし本当に親父がクロークの所にいるんなら、きっとお袋も一緒のはずだ」
レインとエンの両親。つまり、先代の火と水のエレメンターは、六年前に行方不明なった。
それで二人はこの屋敷に来たと聞いた。
「まぁ、真相は二人に会ってからじゃな。居るとすれば、やはりクロークの本拠地じゃな。クロエよ。場所は分かったか?」
「申し訳ありません。発信機の反応が消えてしまいました」
「気付かれたか? まぁ構わん。分かる所まで教えてくれ」
クロエは世界地図を指でなぞって反応があった方を示す。
「……まさか」
「どうかしましたか? ジーリュさん」
「恐らく、クローク達の本拠地は……」
ジーリュは世界地図の隅の方に描かれている一つの島を指差す。
「魔王の城があった孤島じゃ」




