戦いの結果
「はぁ……はぁ……」
レインと共に、レヴィアータが体から飛ばす水の弾を弾いていたが、まだ調子が戻ってない俺は、早くも息が切れ始めた。
「勇也大丈夫!? 無理しないで!」
「ああ……まだ、平気」
心配させまいとそう言ったが、案外ヤバいかも知れない。
少しでも気を抜くと足元がおぼつきそうだ。
「あら~? 調子悪そうね~坊や」
「これぐらい……まだ、行ける……」
レインが心配そうな顔で見るけど、大丈夫だから安心してくれ。
「もぉ~。さっさと倒れてくれな~い? その子で遊べないじゃない!」
レヴィアータの背中から水の触手が伸びると、先端に槍の様に尖った。
そして俺達に向けて伸ばそうとすると、突然地面が揺れ、巨大な土の手が現れた。
俺とレインに向かって振り下りてくると、俺達は飛び退いて躱した。
俺はふらついて膝を着きそうになると、地面からグラデが出てきた。
「ちょっとグラデ~。折角良い所だったのに~」
「返事が無ぇと思ったら、いつまで遊んでいやがる」
「あの子を辱めるまでは諦めきれないのよ~。で、何の用?」
「目的は達成した。引き上げるぞ」
「え~。……はぁ~。分かったわよ~」
地面から伸びた土がグラデとレヴィアータを覆うと地面に潜った。
二人が消えると、気が抜けたのか、力が抜け、ライトカリバーを杖代わりにして立つ。
「大丈夫勇也!?」
「ああ……大丈夫」
レインが俺に肩を貸してくれた。
「ねぇ。さっき土の人造エレメンター、『目的は達成した』って言ってなかった?」
「確かに言ってたな。……嫌な予感がする。皆と合流しよう」
――――――――――――――――――――
ウェアークの広場に集まっているエレメンター達の元に、勇也とレインが合流した。
「ん? 勇也。お主、体は大丈夫なのか?」
「……正直、あんまり良くない。もう……すっごい体が怠い」
「ほら。やっぱり無理してるじゃない」
レインに気を遣わせてしまい、勇也は気まずそうな顔をする。
「あれって……クラスの皆?」
勇也は治療を受けている冒険者達の中に、クラスメイトがいる事に気付いた。
「皆が手を貸してくれたんだ。お陰で人造エレメンターを倒せたんだ」
「え? 倒せたの?」
「うむ。糸と虫のな。たった二人とは言え、これは大きな進歩じゃ」
重傷とは言え、死人が出なかったことに、勇也は安堵の息を吐く。
「にしてもよぉ。アイツ等、何で急に帰ったんだ?」
「さぁな。目的があったみたいだが」
「目的……」
ジーリュは顎に手を当てて考え込むと、「まさか!?」と声を上げる。
「いかん! 屋敷に戻るぞ!」
「え? あ、ああ……」
慌てるジーリュの後を追い、勇也達も屋敷へ向かう。
地面に座っていたエンも立ち上がって向かおうとすると何かを蹴った。
「ん? ……なんだ、武装獣の鎧か」
蹴った武装獣の胸当てから視線を外し向かおうとすると、エンは何かに気付き胸当てを拾う。
「……これは……」
――――――――――――――――――――
屋敷に戻ると、ジーリュは真っ直ぐ地下室へ向かった。
「ヒレア。結界を解除してくれ」
「ええ」
ヒレアは地下室の扉の結界を解除し扉を開けると、中は酷く荒らされていた。
ジーリュは中に入り奥の方を調べ始めた。
「……やはり、無くなっておる」
「無いって、何が?」
「時の短剣がじゃ」
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「戻ってきたぜー、兄貴」
クロースと人造エレメンター達が戻って来ると、クロークは振り向いた。
「おお、戻ってきたか」
「ああ。んで、良い知らせと悪い知らせがあるんだが、どっち聞く?」
「は? ……なら、良い知らせから聞こうか」
クロークがそう言うと、クロースは黄色い刀身の短剣を取り出した。
「手に入れたぜ。アイツ等が持ってた最後の時の短剣」
「おお! よくやったぞ!」
クロースから時の短剣を受け取ったクロークはジッと見つめる。
「間違いない、本物だ。これで……これで、時のエレメントが元に戻る!」
「やったな、兄貴」
「ああ。……それで、悪い知らせとは?」
「……スパーダとイセクがやられた」
「何だと!?」
クロークは人造エレメンターの中にスパーダとイセクがいないことに気付く。
「ちっ。まぁ仕方ない。また造ればいい。今は、時の剣の復活だ」
クロークは最後の時の短剣を持って、例の装置がある部屋に行くと、最後の台に時の短剣をセットする。
「さぁ蘇れ。我が時のエレメントよ!!」
操作盤のボタンを押すと、四本の時の短剣が光った。
時の短剣が崩れて台の中に吸い込まれると、繋がっている一つの大きな台に、一本の剣が形作られた。
「ついに蘇るぞ、我が愛しのエレメントが」
「やったな兄貴。そういやぁ、造ってたあの人造エレメンターはどうしたんだ?」
「今造ってる最中だ。時間が掛かるがな」
「にしても、とんでもねぇもんを造るなぁ、兄貴は」




