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エレメンターズ  作者: 至田真一
ウェアークでの激突
174/203

ウェアークの戦い④

「はいっと」


 ペルセネの右手が木質化すると、無数の木の棘を放った。

 レイフは無数の蔦を生やして蔦の壁を作って防ごうとするが、木の棘の方が硬く、蔦の壁を貫きレイフの左肩に刺さる。


「うっ……!」


 レイフは地面に倒れると、肩に刺さった木の棘を抜く。

 肩から流れる血を見て、ペルセネは口元に手を当ててうっとりした表情になる。


「あぁ……相変わらず美味しそうな血」

「本当に不気味な人ですね」


 舌なめずりをするペルセネを見てレイフは引くと、ペルセネは周りを見渡す。


「それにしても、随分木が少ないわね、この町。建物も木製じゃないし」

「植物が少ない事には同意しますが、今は有難いです。貴女は木の中に入れますから」


 木の中に入って移動出来るペルセネを危惧しているレイフ。

 だがペルセネは、余裕の表情をしていた。


「無いのなら、作れば良いのよ」

「え?」


 ペルセネが地面を蹴ると、周囲に巨大な木の根が生え、木の根のレイフとペルセネの周りを覆った。


「そんな!? これでは……!」


 自分を覆う木の根の壁に目を奪われていると、いつの間にかペルセネの姿が見えなくなっていた。

 レイフは目を見開いて焦りだすと、後方から木の根が伸びてきてレイフの両腕両脚に絡みつき、木の壁に引き寄せる。


「きゃっ!」


 引き寄せられ背中が木の壁にぶつかると、木の壁からペルセネが出てきた。


「うふふ。捕まーえた。あ~勿体ない。こんなに血流しちゃって」


 ペルセネは血が流れているレイフの左肩を眺めると、顔を近づけて血を舐め取る。


「あぁぁぁ……やっぱり美味! あなた以上に美味しい血は無いわ! もっと頂戴!」


 ペルセネの体から六本の木の根が生えると、先端が開いて牙が生えた口になると、レイフの両腕に噛みついた。


「あああっ!」


 続けて両脚、首に噛みつくと、残りの一本はワンピースの中に潜り込み腹に噛みついた。

 噛みついた木の根は、レイフの血を吸い上げていった。


「あ、ああ。ああああっ……!」

「一気には吸わないわ。この美味を長く味わいたいから」


 更に木の根を伸ばし、レイフの体中に噛みつかせる。

 全身に痛みが走り力が抜けてくると、手に持っていた神木の杖が手から落ちた。


「痛いでしょー。でも、まだこんなものじゃないわよ」

「え……?」


 ペルセネの怪しい笑みを見てレイフは背筋が凍ると、噛みついた木の根の牙から小さな根が伸びてきて、レイフの体に纏わりつく様に絡みついてきた。


「ひっ!?」

「この根が貴女の全身を侵蝕した時、貴女は木になるのよ」


 その言葉にレイフは顔を青ざめ震え出す。


「安心して。貴女が木になったら日当たりの良い所に植えてあげる。綺麗な水を上げて育てて、一定に育ったら私の栄養になるの。そしてまた栄養を蓄えさせてまた私が吸うの。そうして貴女は、私の永遠の栄養源になるのよぉ」


 想像しただけで震えが止まらず、レイフは更に顔を青ざめる。

 全身の力が抜け体が痩せ細っていくと、根が体の殆どに纏わりつき呼吸が弱くなっていく。


(ああ……もう……力が……)


 頭の中が真っ白になり、体が根に覆われると顔を覆い始め、口の中に入ろうとしていた。


(…………まだ)


 エレメントラインが消えだし、視界がぼやける程まで弱ると、レイフは意地で拳を作り体に力を入れる。


「まだ……死にたく……ありません!」


 レイフが声を上げると、エレメントラインが伸び、全身に纏わりついていた根がヒビ割れて砕け落ち、噛みついていた根も離れた。


「なっ!?」


 ペルセネは驚くと、レイフは神木の杖を拾った。

 杖を掲げると、先端から木の葉が出てレイフの周りを纏うと、痩せ細った体が元に戻った。


「あらヤダ。折角良い所まで行ったのに」

「貴女の悪趣味に付き合う気はありません」


――――――――――――――――――――


 街中で大きな水しぶきが上がると、水しぶきの中からレインが飛び出した。

 レインは水しぶきの向こう側に目を向けると、レヴィアータが歩いてきた。


「今度こそ逃がさないわよ~。もっと楽しませてもらいたいんだから~」


 レヴィアータは指を水の触手に変えて伸ばすと、レインは大海の杖を振って水の幕で防いだ。


「水が無いからちょっと不便ね~。……あっ」

「ん?」


 レヴィアータの視線の先を見ると、そこには噴水があった。

 水になって噴水へ向かおうとするレヴィアータを、レインは水の弾丸を放って妨げた。


「行かせる訳ないでしょ!」

「だよね~。どうしましょ?」


 レヴィアータは口を尖らせて顎に手を当てて考える。


「……あ」


 何かに気付いたレヴィアータは微笑むと、手を水の槍に変え、地面に深く突き刺した。

 すると、突き刺した地面から大量の水が噴き出した。


「っ! しまった、水道!」


 町の地下にある水道管から水を出し、足元に水が溜まっていった。

 レヴィアータは水になって足元の水に紛れ込む。

 レインは歯を食いしばって注意を払うと、周りから水の触手が伸びてきてレインは躱す。


「危なかった……」

「何処が?」


 背後からレヴィアータの声が聞こえて振り向こうとすると、脚に水の触手が絡みついてきて持ち上げられる。

 レヴィアータは捕まえたレインを見上げると、両腕にも巻き付かせ、足を自分の体に近づける。

 レインの足がレヴィアータの腹に触れると、足がレヴィアータの体の中に沈み込んだ。


「ひゃっ!?」

「私の体の中に入れてあげる。帰ってからゆっくり楽しむ為に」


 レインの体が徐々にレヴィアータの体の中に入っていき、下半身が沈みこんだ。

 レヴィアータの体から水の触手が伸びてレインを体の中に引き込ませると、等々顔まで沈み込み、伸ばした右手だけとなった。


「ふふ。いらっしゃ~――」


 レインの右手が飲み込まれる直前、突如レヴィアータの首が斬り落とされた。


「あれ?」


 呆気に取られたレヴィアータの首が地面に落ちると、首を斬り落とした張本人はレインの手を掴み引っ張り出した。


「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「きゃあ!」


 救出されたレインは、引っ張り出してくれた人物の上に乗る様に倒れると目を合わせた。


「ゆ、勇也!?」

「ううっ、大丈夫か? レイン」

「え、ええ。勇也の方こそ大丈夫? まだ体の調子が戻ってないんじゃ……」

「大丈夫だよ、これぐらい」


 レインは勇也の上から下りて勇也は立ち上がろうとすると、ふらついたのでレインが支えた。


「はは……まだ駄目っぽい」

「無理しないで」


 勇也とレインは目が合うと、昨夜の事を思い出し頬を赤らめる。


「あらあら~。見せつけるわね~」


 首の断面から水が伸びると、レヴィアータの首がくっ付いた。


「後ろから女の首を斬るってどういう事?」

「彼女のピンチに駆けつけない奴がいる訳無いだろ」


 勇也はライトカリバーを杖代わりにして何とか立つと、レインと共にレヴィアータと対峙する。

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