ウェアークの戦い③
「ぐあああああああ!!」
ズーパが放った竜巻に、ウィドは地面に叩きつけられた。
「遅いなぁ。まだ遅い。いつになったら突風ぐらいの速さになるんだ?」
「あぁん!?」
風で飛びながら肩をすくめるズーパに、ウィドは睨むと立ち上がった。
「チッ。あいつ等の余裕たっぷりの態度、ホントムカつくぜ」
ウィドは風で飛び上がると、ハリケーンブーメランに風を纏わせて投げるが、ズーパは目にも止まらぬ速さで躱した。
ハリケーンブーメランが手元に戻ると、今度は無数の風の刃を放つ。
しかし、この攻撃も風のバリアに防がれた。
「さっきからそよ風の様な攻撃ばかりでつまらねぇ。もっと風速を上げてくれよ」
「っ! 上等だ、コラァァァ!!」
ウィドは両手に風を纏わせて合わせると、先ほどよりも強力な風の刃を放った。
ズーパは右手を前に突き出し、再び風のバリアを張って防いだ。
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ウィドは声を上げ、力を入れると、上半身にまで伸びていたエレメントラインが膝まで伸び、風の刃の威力が上がった。
ズーパの風のバリアを張っていた右腕が少し下がり、眉間にしわが寄ると、風の刃が一つバリアを突き破り、ズーパの右腕を切り落とした。
「ぐっ……!」
切り落とされた右腕が地面に落ち、ズーパは右腕を押さえると、ウィドは笑う。
「おいおい、右腕どうしたぁ?」
「……! 舐めやがって!!」
ウィドの挑発的な言動に、ズーパは歯を食いしばると、左手を上に伸ばし、巨大な風の玉を生み出しウィドに向かって放つと、ウィドは風を纏わせたハリケーンブーメランを投げ互いの攻撃がぶつかり合うと、風の玉が弾けて両者は吹き飛んだ。
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ミスクは脚を煙に変えてテスカに向かって蹴りを放つが、テスカは煙になって受け流す。
今度はテスカが両手を煙に変えて拳を突き出すと、ミスクは脚を煙に変えて飛び上がるが、煙になった脚をテスカは掴んで地面に叩きつけ、拳をミスクの顔に当て殴り飛ばす。
「うう……どうやって攻撃を当てれば」
「考えるだけ無駄。あんたの攻撃はあたしには通じない。けど逆にあたしの攻撃はあんたに通じる。その時点であんたに勝ち目は無い」
テスカの煙になった手が紫色に変わると、ミスクは目を見開く。
「この煙は……!」
「そう。毒の煙。もう一度苦しめてやる!」
毒の煙の手が伸びてきて、ミスクは避け続けていく。
何度も避けられ、テスカは苛立ち始めると、煙の色が紫から赤に変わった。
「赤? 今度は何?」
「気になるのなら……受けてみれば!」
テスカは赤い煙になった手を伸ばし、ミスクは躱すと、テスカの右手がミスクの右腕を掴んだ。
「あああああああっ!!」
掴まれた箇所から熱さを感じ、ミスクはテスカの手を振り払った。
腕を見ると、手の形の火傷が出来ていた。
「まさか、赤い煙は……」
「そう。赤い煙は炎の煙、火煙。全身火傷にしてあげる!」
テスカは顔以外を赤い煙に変えると、無数の手を伸ばす。
迫りくる火煙の手をミスクは避け続けるが、数が多く、一つの手が右脚を掴んだ。
「うあっ!!」
ミスクは振り払うと、煙になって路地裏に向かって飛ぶとテスカは追いかける。
「はぁ……はぁ……」
火傷の痛みに耐えながら、ミスクはテスカへの対処法を考える。
(あいつに攻撃を当てるにはどうすれば……。せめて、私も煙を掴めれば)
ミスクは両手を煙に変えて手を合わせようとする。
手の感触は残っているが、触れている感触は無い。
今度はもう少し力を入れて掴もうとした。
すると、一瞬触れた感触がした。
(今のは……)
今の感じでもう一度やろうとすると、追いついたテスカがミスクを背中から押さえつけ、ミスクの顔に向かって赤い煙の手を伸ばす。
「その顔、火傷塗れにしたやる!」
(っ! 一か八か!)
ミスクは顔を煙に変えてテスカの手を避けると、テスカに向けて拳を放つ。
当たる訳が無いと、テスカは余裕の表情を見せると、ミスクのエレメントラインが両腕に伸び、拳がテスカの顔に命中した。
「なっ!?」
「当たった!」
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「ふんぬっ!!」
額を鉄化させたスチアはマーフェの頭に頭突きをするが、マーフェの硬さに弾かれ額を押さえる。
「痛でぇぇぇ」
「オマエ、マダモロイ。オレノホウガ、カタイ」
スチアは歯を食いしばると、額を押さえていた手を放し、メタルグローブをガントレットにし、マーフェを殴る。
「んだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
スチアは何度も殴り続けるが、マーフェはビクともしない。
殴られ続けながらマーフェは拳を作り振りかざすと、スチアの腹に向かって拳を突き出し、スチアは咄嗟に腹を鉄化させたが、吹き飛ばされて建物を貫通した。
「だはっ!」
スチアは吐血し腹を押さえる。
何とか体を起こし、顔を上げると、マーフェがゆっくり近づいてきていた。
「もっと……もっと硬くならないと駄目だべ」
スチアはふらつきながらも立ち上がると、右拳に力を込めた。
「もっと……もっと硬く」
スチアは全身を鉄化させ拳を更に握る。
右の拳に全身の力を集中させていくと、全身の鉄化が解けていった。
正確には、全身の鉄が右手に集束されていき、拳に力が集まっていた。
それに合わせて、スチアのエレメントラインも少しづつ伸びていき、腹から出始めた紋様は、今は両腕と両膝にまで伸びた。
右手に力が集まると、右手が重くなったが、硬度がこれまでに無い程まで上がっていた。
「行くだぁぁぁ!」
スチアは力が集束された右拳を振りかぶりマーフェに向かって走った。
マーフェは腹で受け止めようと、腹を前に突き出した。
目の前まで来たスチアは、マーフェが突き出した腹に向かって右拳を当てた。
「ウッ!?」
マーフェの腹からビキッと音が鳴り、腹を押さえながら後ずさりした。
「アレ? ナンデキイタ? オレノホウガカタイノ二」
「オラの鉄は、まだまだ硬くなるだ!」




