ウェアークの戦い①
ウェアークの町でエレメンターと人造エレメンターが対峙していた頃。
屋敷の地下室の壁が一部盛り上がると、中からグラデが出てきて、地下室に入った。
「壁が石で助かった。ま、石か土じゃなくても木だったらペルセネが入りゃあいいし。さて……クローク様は『隠すとしたら地下だ』って言ってたが、何処だ? 時の短剣」
グラデは地下室を漁り、時の短剣を探す。
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一方、ウェアークの町では、エレメンターと冒険者が、人造エレメンターと武装獣と戦っていた。
当然エレメンターは人造エレメンターと戦い、冒険者は武装獣と戦っていたが、人造エレメンターに多くの冒険者が倒されてしまった為、人数的に不利であった。
「うらぁぁぁ!!」
アルツはアースハンマーを振り回して武装獣を吹き飛ばしていく。
周囲の武装獣を吹き飛ばしたアルツに向かって、紫の液体が飛んでくると、アルツは土の壁を出して防いだ。
紫の液体が当たった箇所からは、紫の煙が出て、嫌な臭いがしアルツは鼻を塞ぐ。
「うげっ!? 何だこの臭い!?」
「毒だ」
アルツは壁の向こうを覗き込むと、毒の人造エレメンター・ベノムがいた。
「お前は……毒の奴だな」
「俺で悪かったな。グラデは今別件でいねぇんだよ」
「いや、別にアイツと戦いって訳じゃねぇからいいんだけど」
「じゃあ、俺で我慢してくれ!」
ベノムが両手に毒の液体を纏わせると、アルツに向かって走る。
(アイツは土の中に潜れるんだよなぁ。これまでの経験から考えると、めっちゃヤバい事しそうだ。早くこいつを引き剥がして見つけねぇと)
不穏な予感を感じながら、アルツはアースハンマーを構える。
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エレメントラインを出したエンのフレイムソードとアスルモスの剣がぶつかり合い鍔競り合いが起こると、両者は剣を握っていないもう片方の手を握り火を纏わせると、相手を殴りお互いに吹き飛んだ。
「痛って~……」
エンは殴られた所を押さえながら立ち上がるのに対し、アスルモスは何事も無かった様にスッと立ち上がる。
「痛みを感じねえってのは、ホント厄介だな。効いてんのか分かんねぇ」
「痛みを感じるってのは大変そうだなぁ」
余裕の表情で言うアスルモスに、エンは歯を食いしばる。
(あの余裕綽々の顔ムカつくなホントに。が……前にジーリュが言ってたな。ホムンクルスは痛みを感じないだけで、ダメージは受けてるって。だから、ダメージを受けてる事に気付かないのもホムンクルスの弱点だって)
「要は、攻撃を当てまくりゃあ良いって事だな」
「あぁ? 何言ってんだオメェ?」
「お前を倒す方法だ!」
エンはフレイムソードを突き出して熱線を放つと、アスルモスは火になって熱線を躱した。
火になったアスルモスは地面を走り、エンの目の前に現れ剣を振り下ろすと、エンはフレイムソードで受け止めた。
「くらえっ!」
エンはアスルモスの剣を受け止めながら、左手から熱線を放つと、アスルモスは再び火になって熱線を躱す。
「ちっ!」
(そうだった。こいつ火になれるんだ。面倒だな)
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ウェアークの上空では、龍の角、翼、尻尾を生やしたエレメントライン状態のリューラとディーテの刀と剣がぶつかり合う金属音が鳴り響いていた。
距離を取ったリューラは、息を切らしているのに対し、ディーテは全く息を切らしていない。
「やはり……こいつ等との戦いでは長期戦は不利だな。体力が減らないのでは、こちらがジリ貧になっていく一方だ」
「体力が無くなった者に止めを刺す……そのようなやり方で勝っても我は嬉しくない。己の剣のぶつかり合い……それこそが我が望む戦いだ」
ディーテが剣先を向けて言うと、リューラはフッと笑う。
「安心しろ。そんな情けない形で私は死ぬつもりは無い。最後まで剣をぶつけようではないか」
「そうだ。それこそ我が望む相手」
リューラとディーテは間を詰めると刀と剣を振り、お互いの武器がぶつかる。
「龍のエレメンターがお前の様な剣士で良かった。そして我も、剣士として生まれて良かった」
ディーテの歯が牙に変わると口が大きく裂け、肌が鱗に変わり、角、翼、尻尾が刺々しく変化した。
(これは、スカイダムで見せた姿!)
ディーテの力が上がりリューラは押されると、リューラは押し負けて地上へ向けて吹き飛ばされ建物に激突した。
「ぐはっ! ……うっ……やはり、あの姿は危険だな。だが……負けるわけにはいかん」
リューラは瓦礫の中から起き上がると、翼を広げて空を飛び、ディーテへ向かった。




