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エレメンターズ  作者: 至田真一
集まるエレメンター 後編
17/202

九人目のエレメンター

「ぐあっ!!」


 背負い投げを食らい、俺は背中から床に叩きつけられた。


「そこまで」

「ふぅー。じゃあ、次は誰?」


 ミスクは残った三人に目を向けた。


「僕は遠慮しておきます。恐らく敵わないでしょうし」

「私もいいかなー」

「僕もヤダね。あんなにコテンパンにされてるのを見たら」


 ハッキリと言ったビトの言葉に、ミスクに負けてしまった俺達はショックを受ける。


「しかし、お主の娘はかなりの腕じゃな」

「エレメントが完全に受け継がれる前から鍛えてるからな。皆が負けてしまったのは無理もないだろう」

「でもどうするの? あの子、勝ったらついて行くなんて言ってたけど」

「ん~」


 モークさんはミスクに近寄り話しかける。


「ミスク。誰も勝てなかったが、一緒に行く気は無いか?」

「無いわ。言ったでしょ? 勝ったら一緒に行くって。一人でも勝てたら別にいいわ」

「クソっ! オイ! もう一回勝負しろ!!」


 ウィドが少し怒りながら立ち上がり再試合を申し込んだ。


「落ち着けよ。もう一回挑んで勝てるとは限らねぇだろ」

「はい。先程までの試合を分析して、現在皆さんが勝てる確率は10パーセント以下です」


 クロエがそんな分析結果を言い出した。

 10パーセント以下かぁ……低いな。

 でも、勝たないと一緒に来てくれないし……。


「モークさん。俺に武術を教えてくれませんか?」

「ん? まぁ、構わないが」

「おっさん! 俺にも教えてくれ!」

「俺も!」


 俺がモークさんに頼むと、ウィドとエンも頼み込んだ。


「負けて悔しかったんじゃな」

「ったりめーだろ!」

「……折角じゃ。お主達も教えてもらったらどうじゃ?」

「皆って、僕達も?」


 ビトが嫌そうな顔で自分を指差すと、ジーリュが「そうじゃ」と答えた。


「これから戦う事が多くなるじゃろう。そのためにも、少しは鍛えた方が良いじゃろう」


 ジーリュの言葉に皆も納得し、俺達はモークさんの道場で鍛えてもらうことになった。


――――――――――――――――――――


 午後になると、俺達は道着に着替えて早速稽古を始めた。

 何度も拳を突き出したり、布を巻いた木の棒に蹴りを当て続けたりと、形は違うが、剣道部だった俺はこういう稽古に少し懐かしさを感じる。

 負けず嫌いなのか、エンとウィドはミスクに絶対勝とうと気合が入っている。対照的に、ビトは嫌々と言った感じでやっている。

 ついでに興味があるからと言って、クロエも参加している。

 何年も稽古しているミスクに追いつくのには時間が掛かると思うけど、せめて一本取れるまでには頑張らないと。


――――――――――――――――――――


 稽古を始めて一週間。

 モークさんの指導のお陰で、力と体力は付いてきたが、未だにミスクには勝てていない。

 三日前に一度挑んでみたが、以前より粘れただけで勝てなかった。

 エンとウィドは毎日挑んでいるが、当然全敗だ。あの二人結構負けず嫌いだな。


「ねーどうするの? もう一週間もここにいるけど、いつになったら次に進めるの?」

「しょうが無いだろ。勝負に勝たないとついてこないってミスクが言うんだから」


 文句を言うビトに俺はそう言うけど、ビトの言うことも分かる。

 まだエレメンターはミスクを除いて三人いる。もう少しだし、ジーリュとヒレアも全員集まるのを楽しみにしてるし。


「と言っても、どうやって勝つか……」


 10年近く武術を習っているミスクに対して、俺達は一週間程度。

 普通に勝負したら勝てないけど、一発入れば勝ちなんだ。どうにかして隙を見つけるしかないか。

 でも隙なんて……待てよ、そう言えば……。


――――――――――――――――――――


「随分自信ありそうだけど、何か策でもあるの?」


 目の前に立っているミスクは俺にそう訊ねる。


「さぁね。策と言えるかは分からないけど、考えならある」


 一か八かだ。この勝負で決める。


「それでは、始め!」


 試合が始まると、俺とミスクはすぐに攻撃せず、お互い様子見が続くと、ほぼ同時に近づき、最初のミスクの蹴りを腕でガードした。

 俺は右拳を突き出すと、ミスクは掴んで投げ飛ばす。俺は受け身を取って転がり直撃を免れた。

 やっぱり強いな。あれが来るまで耐えられるか? すぐに来てほしいけど。

 そう思った次の瞬間、ミスクの右腕が少し後ろに下がった。


(来た!)


 ミスクは近づき俺の胸倉に手を伸ばすと、俺は思いっきり後ろに飛び退いて避け、ミスクは少しバランスを崩し驚いた表情になる。

 その隙をつき、俺はミスクのお腹に向けて拳を突き出した。すると。


「え?」


 当たったはずなのに、何故か俺の拳がミスクの体をすり抜けた気がした。

 よく分からないけど、当たってないならまだ勝負は続いて――。


「そこまで」

「あれ?」


 モークさんの試合終了の声が聞こえて、俺は呆気に取られる。

 まだ二人とも一本も取ってないはずだけど。


「ミスクのエレメントの使用により、この試合、勇也の勝利と見なす」

「あ」


 そうだった。エレメントの使用禁止だった。

 さっきすり抜けたのは、ミスクが煙になったからなのか。


「あーっ! もうっ何やってんのよ私!!」


 ミスクは自分の頭を押さえて天井を見上げて叫ぶと、モークさんがミスクに近づく。


「体は強くなっても、心がまだ未熟だったようだな」

「う~」

「とにかく、お前の負けだ。約束通り……」

「ええ」


 ミスクは俺達の方を見て近づく。


「勝負は私の負け。約束通りついて行くわ」

「あ、ああ。よろしく」


 何はともあれ、煙のエレメンター・ミスクが仲間になり、これで九人目。残りのエレメンターは三人だ。

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