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エレメンターズ  作者: 至田真一
最後の一本
169/203

二人の夜

「さて、こんな所だな」


 人造人間を造るカプセルの前で操作を終えたクロークは、近くの台の上に置いてある四本の時の短剣を手に持つ。


「お、兄貴。ついに時のエレメントを復活させるのか?」

「勿論だ。『コイツ』の完成もあとは時間だけ。ラペーナも時間が経てば回復する。やれることはやったからな。あとはこれだけだ!」


 クロークは時の短剣を持って別の部屋に行くとクロースもついて行った。

 別の部屋に着くと、そこには大きな一つの台に、四つの小さな台が付いた機械が置かれていた。


「兄貴。何だコレ?」

「この機械に時の短剣をセットすれば、分かれてしまった時のエレメントを一つに戻す事が出来る」

「おお、凄ぇじゃねぇか」

「はははは。エレメンター共め。今度こそ貴様等を叩き潰してやる」


 クロークは時の短剣を小さな台に立てる様にセットすると、操作盤の元へ行く。


「さぁ復活せよ……私の力、時のエレメントよ!!」


 クロークは操作盤のボタンを押すと、時の短剣がセットされた台が光り、クロースは「おぉー」と声を出す。


「さぁ戻って来い。私のエレメントアーマー、時の(つるぎ)よ!!」


 祝福する様にクロークは両腕を広げ、台が更に光り出す。

 ……が、徐々に台から発せられた光が弱まり、光が完全に消えた。


「……何も起きねぇぞ?」

「ば、バカな!?」


 困惑するクロークは、もう一度ボタンを押す。

 再び台が光るが、また光が弱まり消えていった。


「おいおい兄貴~。失敗じゃねぇのか?」

「何だと!? まさか、何処か設計を間違えたか? それとも計算ミスか?」


 クロークは操作盤で異常が無いか見たり、機械を隅々まで見ていると、「ん?」と目を細め、洞窟で手に入れた最後の時の短剣を台から外しまじまじと見る。


「どうした兄貴?」


 クロースが首を傾げる中、クロークは黄色い刀身の時の短剣を手に持ちながら他の時の短剣と見比べていると、突然目を見開き歯を食いしばる。


「これは……偽物だ」

「は?」

「これは時の短剣ではない! そっくりに作られた偽物だ!」

「はぁっ!?」


 クロースはクロークの元へ行き、共に時の短剣を見る。


「ほ、本当かよ兄貴!? これが偽物って!?」

「ああ、間違いない! これでも私は時のエレメンター。他の三本からは僅かに時のエレメントを感じるが、これからは何も感じない!」

「そういう事か。最後の時の短剣のはずなのに、通りでアイツ等必死に取り返そうとしなかった訳だ」

「おのれぇ!!」


 クロークは偽の時の短剣を地面に叩きつけると、踏み潰して刀身を砕いた。


「やってくれたな奴等めぇ! クロース! 人造エレメンター達を集めろ!!」


――――――――――――――――――――


「んん……」

「起きたか」


 日が沈み、日付が変わる寸前の時間、目を覚ましたレインが瞼を擦ると、俺と目が合った。


「勇也。起きてたの?」

「ああ」

「良かった。……あ、お腹空いてない?」

「大丈夫。美奈が持ってきてくれたから」

「そう。何処か悪い所があったら言ってね」


 微笑みながら言うレインを見ていると、俺は美奈から言われた事を思い出す。


「……なぁレイン」

「ん?」

「その……美奈から聞いたんだけど……人造エレメンターに酷い事をされたって」

「あ……」


 レインは目を逸らすと自分の腕を強く握る。


「だ、大丈夫よ。私は……大丈夫」

「大丈夫じゃないよな?」

「……」


 黙り込んだレインは目線を下げ小さく震え出す。


「……うん。本当は今も思い出すと震えが止まらない。勇也が蔑む様にするって言われて……」

「っ!?」


 それを聞いた俺は目を見開き、レインを元気づける方法を考えた。

 ……正直、心が傷ついている人を励ますのは難しい。

 でもレインは……俺の……。


「レイン」


 俺が呼ぶとレインは顔を上げ、俺は顔を近づけると唇を合わせた。

 突然の事に流石のレインは目を大きく開かせる。

 しばらく唇を合わせ続けると、俺の方から離れた。


「これが俺の答えだよ。何があっても絶対に君を蔑んだり嫌いにならない。俺の大事な恋人だから。俺なんかにはもったいないぐらい」

「勇也……」


 レインの目から涙が流れると、今度はレインから唇を合わせ、舌を入れてきた。

 俺は躊躇いなく受け入れると、しばらくしてレインから離れ、ベッドの上に乗ると俺の上に(またが)った。


「ねぇ、勇也……」

「ああ……」


――――――――――――――――――――


 カーテンの隙間から日差しが差し込み、俺は目を覚ました。

 隣にはいつも通りレインが寝ていた。

 ……けど、いつもと違う点があった。

 俺は布団を捲って確認すると、布団を閉じる。

 昨夜の事を思い出し、俺は顔が熱くなる。


「おはよう、勇也」

「あ、ああ。おはよう」


 起きたレインは今の俺達の現状を把握すると、顔を赤くしていく。


「へへっ」

「はは……」


 お互い裸の俺達はつい笑ってしまった。

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