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エレメンターズ  作者: 至田真一
最後の一本
168/202

洞窟の結末

 リューラとミスクから話を聞いたジーリュは、途中で林子とクロエと合流し、急いで洞窟の外へ向かった。

 しばらく洞窟の中を進みようやく外に出ると、既に他の皆が待っていた。


「すまぬ、待たせてしまった。それで、勇也が危険な状態と聞いたが」

「ええ。かなり危険な状態よ」


 ヒレアが痩せ細った勇也を見せると、ジーリュは目を見開き、林子も驚き口元を手で隠す。


「光野君!?」

「これは確かに酷いのう。急いで屋敷に戻るぞ」


 リューラ、エン、ウィドが召喚した青龍、フェニックス、スカイイーグルに乗り、ジーリュ達はウェアークの屋敷へ向かった。


「ヒレアよ。勇也は治せそうか?」

「止血は出来たけど、やっぱり血が足りないわ。医療所で血液を貰うしかないわね。でも足りるかしら?」


 悩むヒレアに、厚が口を開く。


「僕と勇也の血液型は同じだから、足りなかったら僕のを使って」

「そういやぁ、勇也と厚は同じA型だったな」

「それなら楓華ちゃんもA型やで」

「そうだけど、私献血なんて初めてだよ?」

「大丈夫よ。あくまで足りなかった場合だから。とにかく今は、急いで屋敷に戻って勇也の治療よ」


 ヒレアの言葉に皆は頷き、レインは勇也の手を握る。


「ところで、『あの作戦』は成功したんですか?」

「あ、はい。上手く行くか不安でしたが……」


 フィーズの質問に林子は答えると、魔法袋からある物を取り出した。

 それは、黄色に輝く刀身の短剣、時の短剣だった。


「フィーズの考えた『偽物作戦』は上手く行ったぞ。クロースは偽物を本物と思い込み持ち去った。よくやったぞ林子よ」

「はい。バレてしまうかどうか不安でしたが、気付かれなくて良かったです」

「へっ、いい気味だぜ。偽物を間違えて持ってくなんてよぉ」


 ウィドが清々しい気分で笑うと、ジーリュは考え事をしていた。


(時の短剣は手に入れられたが、あやつらのもう一つの目的である勇也の血は手に渡ってしまった。血……まさかな……)


――――――――――――――――――――


「兄貴ー。手に入れて来たぜ、最後の時の短剣」


 クロースと人造エレメンター達が隠れ家に戻って来ると、クロースは時の短剣をクロークに見せる。


「よくやったぞクロース! これで私の力が元に戻る」

「ああ。で、早速元に戻すか?」

「いや、コイツの最終調整を終えてからだ。もう少しで終わるのだ」

「そうか。あ、そうだ。コレも手に入れたぜ」


 クロースが見せたのは、勇也の血が入った瓶だった。


「おお。これがあれば更に『あの力』を再現出来る。完成が楽しみだ」


 クロークが待ち遠しく笑うと、レヴィアータが近寄る。


「クローク様~。実はちょっとヤバイ事が~」

「何だ?」


 クロークが振り向くと、レヴィアータの体の中からボロボロのラペーナが出てきた。


「な、何があった!?」

「実は~、ラペーナ滝の上から落とされちゃって~。それでこうなっちゃいました~」

「す、すみません」

「へっ。大方油断したんだろ。馬鹿な奴だ」


 アスルモスが悪態をつく様に言うと、ラペーナはゆっくりとアスルモスを睨む。


「全く、仕事を増やすな。まぁエレメンターの奴等もすぐには動けんだろ」

「はい。光のエレメンターの坊やは大分痩せ細っているので、すぐには動けないですよ」

「そうか。なら命令があるまで待機していろ」


 クロークは勇也の血が入った瓶を手に持つと、負傷中のラペーナを連れて別の部屋に向かった。


――――――――――――――――――――


「これで大丈夫。後は目を覚ますのを待ちましょう」


 ヒレアは医療所から貰った血液パックを勇也の腕に繋げる。


「足りるかどうか分からないけれど、今はこうするしかないわ」

「勇也……」


 レインは勇也が眠るベッドの横で心配そうに勇也の手を握る。


「勇也が起きたら呼んで」

「ええ」


 ヒレアは部屋を出ると、レインは勇也の手を握りながら勇也の顔を見つめる。


「勇也、早く良くなってね」


 それから、レインは寝ずに勇也の傍にいて目を覚ますのを待った。

 夜になっても寝ずに待ち、翌朝になっても待った。

 更に二日経った頃、屋敷に戻ってからロクに休んでいなかったからか、限界が来て、レインは目を閉じて寝てしまった。

 その数分後、勇也の目が薄っすらと開き、勇也は辺りを見渡した。


「ここは……俺の部屋? レイン……寝てるのか」


 体に力が入らないが、どうにか体を起こすと、部屋のドアが開いて美奈が入ってきた。


「勇!? 起きてたの!?」

「ああ、今起きたんだ。それで……結局どうなったんだ?」

「話は後ね。何か食べ物持ってくるわ」

「ああ……」


 美奈は部屋を出ようとすると、振り返ってレインに目を向ける。


「勇。レインが起きたら慰めてあげて」

「え?」

「レイン、人造エレメンターのせいで心が傷ついてるはずだから」


 美奈はそう言うと勇也に近づいてビシッと指を指す。


「いい? レインを慰められるのはアンタだけなんだからしっかししなさいよ」

「お、おう」

「よろしい」


 勇也はたじろぐと、美奈は部屋を出た。

 美奈の話を聞いた勇也は、眠っているレインの頭を撫でた。

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