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エレメンターズ  作者: 至田真一
最後の一本
166/203

洞窟の戦い⑥

 結界で人造エレメンターの足止めに成功したリューラ、ミスク、レイフ、ヒレアは洞窟の中を走り進んでいた。


「アイツ等を足止め出来たのは良いけど、時の短剣は何処にあるのかしら?」

「これほど複雑な洞窟なら、クロース達も迷うはず。こちらとしては、林子だけでも時の短剣の元まで行ってほしいわ。『アレ』を持っているのは林子だけだもの」


 当てもなく洞窟を走り続けるリューラ達は、三方向に分かれた分かれ道に差し掛かった。


「どれを進めば良いのでしょう……?」

「あまり悩んでいる時間は無いが……っ!?」


 リューラが一番左の道に目を向けると、腰の刀に手を掛ける。


「どうしたの?」

「誰か来る」


 リューラの言葉にミスク達は身構えると、次第に足音が聞こえてきた。

 足音がどんどん大きくなっていくと、その姿が見えた。


「あれ? リューラ!?」

「なんだ……レインと美奈か」


 足音の主がレインと美奈だと知ったリューラ達は警戒を解いた。


「そうだ。合流出来たのは嬉しいけどそれどころじゃ無いの! 勇也が……!」

「勇也がどうかしたの?」


 レインはリューラ達に勇也が捕まってしまった事を話した。


「そう言えば、確かに勇也を狙っていたわね」

「もぉ~。男って何でこんなに世話が焼けるのかしら」

「でしたら、早く進みましょう。(わたくし)嫌な予感がします」


 レイン達は先を進もうと、残る二つの道に目を向ける。


「さて。そういう事なら、早くどっちに進むか決めま……ん?」


 何かを見つけたミスクが一番右の道へ行くとしゃがんで地面を見る。


「ねぇ皆。これって血じゃない?」


 ミスクが指さした先には、赤い血が地面に付いていた。


「ええ。この道の先に続いてるわね」


 一番右の道の奥まで続いている血の跡をレイン達は目で追う。


――――――――――――――――――――


「あ~~~退屈。誰か来ないかしら?」


 木の根で作ったハンモックに横になるペルセネは退屈そうに揺られていた。


「もうこの坊やも声出さなくなったし、もう十分かしらね?」


 ペルセネが目を向けた先には、未だに木の根に血を吸われ続けている勇也がいるが、既にその体は痩せ細り、肌にも血の気が無いほど青白くなっていた。

 最初は苦痛で声を上げていたが、今はもう声を上げる気力すら無くなっていた。


「瓶にはたんまり血が入ってるし、もう良いかしら? でも少しでも多く血を入れておけって言われてるし、もう少し待ちましょ。まっ、どうせエレメンターは用済みだし、死んでも別にいっか」


 ペルセネは呑気に木のハンモックに揺られていると、そこに飛び込んできた人影が、瓶の中に血を入れている花を斬り落とした。


「ふえっ!? な、何!?」


 ペルセネが慌てて木のハンモックから下りると、飛び込んできたリューラが刀で勇也を磔にしている木の根を斬った。


「勇也!!」


 駆けつけたレインが地面に倒れた勇也を抱えると、ヒレアが回復魔法で勇也の傷を治した。


「あ~、ここまで来ちゃった~。まぁ目的は達成したしいっか」


 ペルセネは勇也の血が入った瓶を回収すると、蓋をして体の中に仕舞い、地面から伸びた木の根に覆われ地面の中に潜った。


「逃げられたか」

「今は放って置きましょう。それより勇也が……」


 リューラとミスクは、痩せ細った勇也の元に集まるレイン達の元へ向かった。


「勇也、しっかりして! 勇也!」

「なんて酷い有様……」

「傷は治せるけど、流石に失った血までは治せないわ」

「敵の狙いは勇也の血か。一体何故?」


 リューラが首を傾げる一方、レインは掌に水を出し勇也に飲ませようとするが、勇也の口から水がこぼれてしまう。


「もう自分で飲む力も残ってないみたい」

「そんな……」


 呼吸も薄く、弱っていく勇也を見たレインは、再び水を出すと今度は自分の口の中に入れ、口移しで勇也に飲ませた。


「……あー。美奈、大丈夫?」

「何が?」

「あれ?」


 予想外の反応にミスクが戸惑うと、レインはもう一度口移しで勇也に水を飲ませる。


「…………ぁぁ……」

「勇也!?」


 僅かに勇也の声が聞こえレインは呼びかけると、勇也の目が薄っすらと開いた。


「レ、イ……」


 か細い声でレインの名前を呼ぶと、勇也は目を閉じた。


「少しは意識を取り戻したと思うけど、どの道このままだと危険だわ」

「なら、ヒレアとレイン、レイフと美奈は勇也を連れて先に洞窟を出てくれ。私とミスクはこのまま時の短剣を探す」

「ええ。任せるわ」


 レインとヒレアは勇也に肩を貸すと、レイフと美奈と一緒に来た道を戻り、リューラとミスクは先ほどの分かれ道の残った道を進む。


――――――――――――――――――――


「随分走りますけど、はぁ……まだでしょうか?」

「分からぬ。ワシもこの洞窟は詳しく無いからのう。今はひたすら進むしかない」


 ジーリュ、林子、クロエは時の短剣を求めてひたすら洞窟の中を進み続けていた。

 すると、クロエは前方に何かを見つけた。


「前方に巨大な扉を確認しました」

「扉じゃと?」


 少し進むと、クロエの言う通り、前方に巨大な鉄の扉が立ち塞がっていた。


「怪しいのう。恐らく、時の短剣はこの中じゃ」

「とても大きい扉ですが、頑張って開けましょう」


 林子は扉に手を当て力一杯押す。

 しかし、扉は全く微動だにしない。


「駄目です。全く開きそうにありません」

「うむ。流石に林子では力不足じゃ。さて、どう開けるか」


 ジーリュが扉を眺めながら考えていると、扉を解析していたクロエが口を開いた。


「ジーリュ様、林子様。この扉はダミーです」

「ダミー? つまり偽物と言う事か?」

「はい。こちらの扉をどれほど押そうが引こうが決して開きません。奥へ行くには……」


 クロエが扉の横に移動すると、他より少し出っ張った岩肌を両手で触れると、なんと岩肌が持ち上がり奥へ続く穴が現れた。


「成程。扉では無くこの穴から入るのか」

「やりましたね。早く入りましょう」

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