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エレメンターズ  作者: 至田真一
最後の一本
160/203

狙われた勇也

 川の流れが弱まっている場所まで流されたリューラ、ミスク、レイフ、ヒレアは近くの岸に上がった。


「川から出られたけど、皆と離れちゃったわね」

「流されていく途中、幾つもの穴があったからな。他の皆も何処かに流れ着いたと思うが……一つ問題があるな」


 リューラが懸念しているのは、既にこの洞窟に人造エレメンターが来ていたという事だった。

 ……が、ヒレアにはもう一つ気になる事があった。


「人造エレメンターが来ていた事にも驚いたけど、何故彼等は勇也を狙っていたのかしら?」

「そう言えばそうだったわね。あいつ等、勇也を捕まえようとしてたわね」

「ああ。だが、奴等の話を聞いた限りでは、目的は勇也を捕まえる事自体では無い様だったな」


 人造エレメンターのグラデとズーパの会話で「捕らえることが任務じゃない」と言っていた。

 何が目的なのか考え込むリューラだったが、時間が無い為考えるのを止めた。


「考えても仕方ない。今は奴等よりも先に時の短剣を手に入れなければ」

「そうね。あと、勇也とも早く合流した方が良いわね。誰かと一緒なら良いのだけれど、一人だったら危険だわ」

「じゃあ通話機で皆に知らせましょ」


 ミスクが耳に着けている通話機を使おうとすると、何故か一向に誰とも通話が繋がらない。


「あれ? 変ね、繋がらない」

「もしかしたら川に流されている時に壊れたのかも知れないわね。機械は水に弱いから」

「全く。アイツ防水にしたから大丈夫って言ってたくせに」

「仕方が無い。とにかく進むぞ」


 リューラを先頭に歩き出そうとすると、先ほどから一言も喋らず息を切らしているレイフをヒレアは気にかけていた。


「大丈夫レイフ?」

「はい……大丈夫です」

「でも貴女、最近元気が無い気がするわ。顔色もあんまり良くないし」

「……実は、最近首に何か針で刺された様な痛みを感じて。それからあんまり体調が良くないのです」

「首に?」


 ヒレアはレイフの首を診てみると、首の一ヶ所に小さな針で刺された様な痕があった。


「これかしら? 一体何の痕かしら?」

「最近毎朝痛みを感じるんです。たまに夜中にも起きてしまって」

「何の痕か分からないけど、とりあえず治すわね」


 ヒレアは回復魔法でレイフの首の傷痕を治すと四人は歩き出した。


――――――――――――――――――――


「…………ううっ」


 俺は目を覚まし起き上がると、洞窟内の何処かに流れ着いていた。

 辺りを見渡すと誰もいなくて俺だけだった。


「皆とはぐれた……いや、離されたって言った方が合ってるかな」


 明らかに人造エレメンターは俺を狙ってた。このまま一人でいるのは危険だな。


「皆に連絡を……あれ?」


 通話機を使おうとしたら、耳に着けているはずの通話機が無くなっていた。

 川で流されている間に取れたか?


「頑張って皆と合流するしかないか。でも時の短剣を手に入れないといけないし、どっちを優先するか……」


 頭を悩ませるが、ずっとここにいたら人造エレメンターに見つかりやすくなりそうだし、今は洞窟を進もう。

 運が良ければ誰かと合流できるし、時の短剣のある場所にも行ける。

 分かれ道が多く、どっちに進んでいるのか頭がこんがらがりそうな程複雑な構造の洞窟の中を進んでいる途中、俺はある違和感に気付く。


「生き物の気配が全く無いな。ジーリュはあまりこの洞窟に詳しく無かったみたいだけど、もしかして魔物はいないのか?」


 あまりに静かすぎる洞窟を進み、途中全く分かれ道が出なくなり俺は迷わずに進んだ。


(何だろう? 急に分かれ道が出なくなったぞ。何か気味が悪いほどスムーズに進むな)


 少し不安になりながら洞窟を進むが、その先は行き止まりだった。


(行き止まり……。でもここまであんまり分かれ道は無かったし……)

「しょうがない。分かれ道があった所まで戻ろう」


 来た道を戻ろうと振り向くと、通ってきた方角から足音が聞こえ俺はライトカリバーの持ち手に手を近づけ警戒した。

 足音が近付いてくると、足音の主の姿が見えた。


「勇也!」

「レイン!?」


 駆け寄って来たレインが俺の元に来ると、俺はホッと安堵の息を吐く。


「良かったよレインと逢えて。他の皆は?」

「ううん、いない。いるのは私だけ」

「そっか……。でもレインと逢えたのは不幸中の幸いだ」

「ええ。私も」


 レインが俺の胸に寄り掛かり、俺はレインの背に手を伸ばし触れようとすると、無意識に手が止まった。


(何だろう、この違和感。嬉しいはずなのに、いつもの様にドキドキしない。…………ん?)

「なぁレイン。大海の杖は?」


 持ってるはずの大海の杖が、今レインの手元に無い。

 大事なエレメントアーマーが無いなんておかしすぎる。


「……」

「レイン?」


 ブスッ!


「うっ……!」


 腹に激痛が走り視線を下に向けると、レインがいつの間にか手に持っていたナイフが俺の腹を刺していた。

 レインが俺の腹からナイフを抜くと、俺は血が出てくる腹を押さえて前に倒れる。


「レイ……いや、違う。お前は……誰……だ……」


 血を流し過ぎたのか、俺は気を失ってしまった。

 レインの姿をしたそいつは、気を失っている勇也を見下ろし、怪しい笑みを浮かべながらナイフに付いた勇也の血を舐める。

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