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エレメンターズ  作者: 至田真一
集まるエレメンター 後編
16/202

武闘煙少女

 ヴァイルの町を出て四日目の夜。俺達は野宿をして夜を過ごしている。


「なぁジーリュ。次のエレメンターがいる町にはどのぐらいで着くんだ?」

「明日の昼過ぎには着くじゃろう。次で九人目。全員揃うのが待ち遠しいわい」


 エンの質問に答えた後、ジーリュは楽しみそうに言う。

 これまでエレメンターは完全に力を受け継ぎ終えてから集まりだしていた。

 大体、10歳ぐらいで受け継ぎ終えるから、これまでは全員集まるのに10年ちょっとかかったらしい。

 でもジーリュはドラゴンだからとても長生き。10年や20年ぐらい大丈夫な気がするんだけど。

 とにかく、次に会うのは煙のエレメンター。

 文字通り、体を煙に変える力って聞いたけど、あんまり攻撃には向いて無さそう。でも、煙になって相手の攻撃を避けられるんなら結構強いか。


――――――――――――――――――――


 翌朝、朝食を済ませて出発の準備を終え目的地の町を目指した。

 馬車に揺られること数時間。目的の町、ホワーツの町にやって来た。

 町に着くといつも通りに宿に馬車を預けて、いつも通りにエレメンターの場所を聞いた。慣れたなこの流れ。


「ところで宿の人、煙のエレメンターは道場をやってるって言ってたけど」

「先代の煙のエレメンターは体術を使いこなしておったんじゃ。恐らくその経験で開いたんじゃろう」


 現役だった頃の経験を生かしてるって事かな。

 街中を進み、宿の人に教えられた場所に着くと、一軒の建物が建っていた。

 入り口横の看板には『スモーク道場 入門者募集中』と書かれていた。


「スモーク……煙って事は、ここで間違いなさそうだね」

「そうじゃな。では入って見るかのう」


 俺は手を伸ばしてドアを開けようとすると。


「あら? 入門者かしら?」


 後ろから声を掛けられて振り向くと、灰色の髪をした女性が立っていた。


「いや、入門者じゃなくて。俺達、煙のエレメンターを探していて……」

「あら。娘に用?」

「娘?」

「ええ。私はシア。先代煙のエレメンター、モークの妻で、現代煙のエレメンター、ミスクの母です」


 煙のエレメンターの母親か。娘って事は、当代の煙のエレメンターは女の子か。


「娘は夫と一緒に道場にいるわ。ちょっと待ってね」


 シアさんは道場のドアを開けると、中では道着を着た人達が何度も拳を突き出して練習していた。


「モーク。お客さんよ」


 シアさんが声を掛けると、指導していた白い髪の男が振り向くと、俺達の方を見て驚く表情を見せる。


「ジーリュ! ヒレア!」

「久しいのうモーク」

「久しぶりね」


 モークさんは俺達に近づき、ジーリュとヒレアを見て喜ぶ。


「本当に久しぶりだな。ところで、二人が来たということは、あの予言の少年が?」

「うむ。この勇也がそうじゃ」

「あ、はい」

「おお、お前がか。いやー良かった良かった。20年も待った甲斐があった」


 モークさんは俺の背中をバンバンと叩く。


「ところで、エレメントを受け継いだお主の娘は何処じゃ?」

「ああ。ミスクは庭で一人で練習しているはずだ。こっちだ」


 モークさんに案内せれ、道場を出て庭に出ると、道着を着た白いショートヘアーの少女が、立っている丸太を蹴り折っていた。


「おーい、ミスク!」


 モークさんが呼ぶと、練習していた少女が振り向いた。


「何? お父さん」

「エレメンターが来たぞ」

「え?」


 俺達は道場の中に戻り、他の門下生が帰った後、床に座り込んだ。


「紹介しよう。俺の娘で、当代の煙のエレメンター、ミスクだ」

「ミスクよ。よろしく」

「ああ。よろしく」


 ミスクは軽く頭を下げて挨拶をする。


「さて、ミスク。前にも言った通り、お前はエレメンターとして他のエレメンターと共に行動するんだ。分かってるな?」

「分かってるわよ。……でもさぁお父さん。この子達と一緒に行動するために条件があるんだけど」

「条件?」


 ミスクは俺達の方を見ると指を指した。


「私と勝負して勝ったら一緒に行ってあげる」

『は?』


 突然勝負を申し込まれて俺達は呆気に取られる。


「えっとー、何で?」

「他のエレメンターがどのぐらい強いのかっていう、ただの好奇心よ」

「嘘をつくなミスク。どうせ勝負したいだけだろ?」


 モークさんに言われて、ミスクはビクッと体を震わせる。

 この子、ただ力比べしたいだけかよ。

 するとモークさんは呆れ顔でハァーと息を吐く。


「すまないが引き受けてくれないか? こうなると引かないからな」

「はぁ……」


 力比べっていきなり言われても困るな。やっぱ受けた方が良いのかな? 受けないと一緒に来てくれなさそうだし。

 すると突然、ウィドが立ち上がった。


「なら俺が相手してやる」

「ウィド。いいの?」

「このままじゃ先進めねぇだろ? ちゃちゃっと終わらせてやる」

「凄い自信じゃない。じゃあさっさと始めましょ」


 どれだけ戦いたいんだよあの子。

 結局、ウィドとミスクは勝負することになり、モークさんが審判をすることになった。


「ルールは一本勝負。エレメントの使用は禁止。二人ともいいか?」

「おう」

「ええ」

「では……始め!」


 始まるとウィドが殴りかかるが、ミスクは手で受け流し、今度はウィドが蹴るとミスクはしゃがんで片足立ちになったウィドに足払いをして転ばす。


「そこまで」

「痛って―」


 ウィドは頭を押さえて倒れる。


「くっそー!」

「次は誰?」

「次は俺!」


 次の相手にライデンが名乗り出た。

 ……気のせいか、顔が少しニヤけて見える。

 気付いたのか、ミスクも嫌そうな顔をしている。


「始め」


 始まった瞬間、ライデンはミスクの強烈な蹴りで蹴り飛ばされ、壁に激突した。

 倒れたライデンは体を痙攣させている。


「ミスク、やり過ぎじゃないか?」

「だって、顔がいやらしかったから」


 ミスクが言うと、レインとビトが頷いた。

 ライデンは自業自得かな。

 次にエンが相手したが、ミスクの回し蹴りが決まり負けてしまい、アルツは背負い投げを受けて負けてしまった。

 そして、次に俺が相手をすることになった。

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