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エレメンターズ  作者: 至田真一
空の激闘
145/203

侵入する悪意

「はぁぁぁっ!!」


 いつも以上に特訓に力が入るリューラが振り下ろした木刀を、俺は木剣で受け止めた。


(これまでに無いほど気合入ってるな。まぁ……無理も無いか)


 屋敷の庭では、他の皆も特訓に力が入っている。

 だからって俺もこれまで通りって訳じゃない。

 気持ちは皆と同じだ。次こそは人造エレメンターに勝ちたい。


「はぁ……。少し休憩するか」

「ああ、分かった」


 少し息を切らしているリューラは木の下へ行って座り込むと、俺は芝生の上に座った。


「お疲れ、勇也」


 隣に座ったレインが水の入ったコップを渡した。


「ありがとうレイン」


 水の入ったコップを受け取ると、レインの顔に汗が流れているのが見えた。

 きっとレインも特訓頑張ったんだな。


「レインは大丈夫なのか? 疲れてる様に見えるけど」

「正直疲れてるわ。でも、また負けるのは嫌だ」


 やっぱり、レインも悔しかったんだな。


「皆、気合が入ってるのう」

「ジーリュ」


 屋敷の中からジーリュが出てきて、皆の特訓の様子を見ていた。


「人造エレメンターに歯が立たなかったんだ。気合も入るよ」

「うむ。確かに、あの強さは脅威じゃ。皆には強くなってもらわんとな」

「でも、どうやって戦えば良いのかしら? こっちの攻撃は全く効かないし、エレメントの力も向こうが上だった。しかも再生したりするし」


 人造エレメンターの攻略法。それが確かに分からない。

 エレメントによると思うけど、手足を切っても再生するから、普通に戦うんじゃ駄目だよな。


「むぅ~。恐らくエレメントの強さにあまり大きな差は無いと思うんじゃ。強いと感じるのは、あやつ等がホムンクルスだからじゃろう」

「どういう事?」

「お主達のエレメントは使うたびに体力を消費するが、無限の体力を持つホムンクルスはどれほどエレメントを使っても疲れない。つまり、お主達と違って常に全力でエレメントを使えるという事じゃ」


 確かに俺達はエレメントの力を使う程疲労するけど、それが無いんじゃ俺達より長く戦えるし、エレメントも全力で使えるのは厄介だ。


「じゃあどうすれば良いんだ?」

「そうじゃな……。せめてエレメントラインを今よりもっと伸ばせば、少しは戦力差が埋まるかも知れん。最低でも膝までには」

「エレメントラインを伸ばすか……」


 一応最初に発現した俺が一番伸びているけど、それでも腰より上なんだよな。

 膝までとなると、まだ時間が掛かりそうだ。


「ただいま」

「ああ、お帰り」


 町の図書館に行っていたヒレア、クロエ、小森先生が帰って来た。


「どうじゃった? 何か分かったか?」

「すみません。何も分かりませんでした」

「うむ……やはり一筋縄では見つからぬか」


 三人が図書館に行ったのは、時の短剣がある場所を掴むためだ。

 でも苦戦してるみたいだ。屋敷に戻って二日経ったのに全く進展が無い。


「申し訳ありません。私の解析能力がありながら」

「いや、クロエが責任を感じる事は無いよ」


 まぁでも、クローク達より先に見つけないといけないから、のんびりはしていられないよな。


「日が暮れ始めましたし、夕飯の準備をしましょう」

「そうですね。私も手伝います」

「お願いします、クロエさん」


 先生とクロエは夕飯の準備をするために屋敷に入った。


「よし。俺も特訓再開するか」

「私も」


 俺とレインは立ち上がって特訓を再開した。


――――――――――――――――――――


「さぁ、夕飯の準備です」


 林子は袖を捲ると、野菜が入った籠を待った。


「気合が入ってますね、林子様」

「勿論です。皆さんはこれからも大変なんですから、美味しい料理で栄養を付けなくては」


 林子は野菜を洗うために蛇口の栓を捻る。


「……あれ?」

「どうしました?」

「いえ、蛇口から水が出なくて……あ、出ました」


 栓を開いてから遅れて水が出たことに林子は少し戸惑ったが、野菜を洗って夕飯の準備を進めた。


――――――――――――――――――――


 夕飯を済ませ、皆が寝静まった深夜。

 栓が閉まっているはずのキッチンの蛇口から水が出ると、水はまるで液体状の生き物、スライムの様に動き床に下りると、水は人の形になっていく。


「危うくバレるかもって思ったけど、侵入成功。あ~、狭い水道の中にいたから、体が凝りそ~」


 レヴィアータは体を伸ばして屈伸すると、肩を押さえて腕を回す。


「コイツ等が集めた時の短剣の情報を手に入れて来いって言われたけど、こんな時間じゃ無理ね~。……暇だから散歩しましょ~」


 レヴィアータはドアを開けようとドアノブに触れようとすると手を止めた。


「寝てると思うけど~、念のため~」


 レヴィアータは水になると、ドアの隙間から廊下に出た。

 廊下を進んでいると、トイレのドアが開き、レヴィアータは壁を伝って素早く天井に上る。


「ふあぁ~」


 欠伸をしながらトイレから楓華が出ると、自分の部屋へ向かった。


「ん? 何で床濡れてるの? え、漏らしてないよね私!?」


 楓華は慌てるが、大丈夫だと安心すると自分の部屋に戻った。

 レヴィアータは床に下りて顔だけを実体化させ再び廊下を進もうとすると、ある部屋に目を向けた。


(この気配……)


 レヴィアータはドアの隙間からその部屋の中に入ると、同じベッドで寝ている勇也とレインを見つけた。


「あらあら。あの子と坊やが恋人同士ってクローク様が言っていたけど、一緒に寝るなんて仲が良いわね~」


 小さな声で喋るレヴィアータはベッドに近づくと、レインをジッと眺める。


(ああ……なんて……)

「なんて凌辱し甲斐のある体……」


 レヴィアータの口元が上がりニヤつくと、右手を実体化させ、指を水の触手にして寝ているレインに向かってゆっくり伸ばす。


(ああ……初めて見た時から、辱め甲斐のある子だと思ったわ~。いい顔を見せてね~)


 水の触手がレインに近づき触れようとした。

 すると、レインが「んん……」と体を横に向け勇也の腕に抱き付くと、レヴィアータはハッと水の触手を止め戻した。


「危ない危ない。理性を失いかけたわ。今見つかったらいけないものね~」


 レヴィアータは水になってドアの隙間から部屋を出た。

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