表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンターズ  作者: 至田真一
戻った日常
134/203

警護依頼

「護衛依頼?」


 ある日の昼食前、庭から戻ったヒレアが手に持った一枚の手紙を見せて俺達に言う。


「正確には警護依頼ね。依頼主はトラレという町の領主、ステイルさんよ」

「トラレか……」


 町の名前を聞いたジーリュが思いふけた様な顔になる。


「どうしたんだジーリュ?」

「いや、何でもない。では向かうか?」

「そうだね。じゃあ早速――」

「その前に昼飯食わねぇか? オイラ腹減ってんだ」

「そう言えば昼食にしようとしていたんじゃったな。では食べてから行くとするか」


 俺達は昼食を済ませると、準備をして召喚獣に乗ってトラレへ向かった。


――――――――――――――――――――


「数日前、屋敷に怪盗シャドーから予告状が届いたんだ」


 依頼主のトラレの領主、ステイルさんから俺達は依頼内容の詳細を聞いた。


「怪盗シャドー……聞いたことあるのう。素早い身のこなしで影すら踏ませず宝を盗む凄腕の怪盗。その盗み姿から影……シャドーと名付けられた」

「ああ。その怪盗シャドーから予告状が届き、先代領主である父の誕生パーティーに我が家の家宝を盗みに参る、と」

「誕生パーティーの日に盗みに来るなんて大胆だな」

「シャドーは貴族の屋敷に盗みに来る時は、今回の様に催しがある日に盗みに来ることが多い」


 人が多い日にわざわざ盗みに来るなんて、よっぽど自身があるんだな。


「それで、誕生パーティーはいつなんですか?」

「……明日なんだ」

「随分早いのう。準備を急がねばな」

「そうだな。ステイルさん。怪盗は必ず捕まえます」

「ああ。よろしく頼む」


 俺達は警護の準備の為に部屋を出た。


「あれ? ジーリュ出ないのか?」

「少し話をする。先に行ってくれ」

「分かった」


 俺は返事をするとドアを閉めた。


――――――――――――――――――――


「しかし、家宝……『アレ』を狙うとは、怪盗は何なのか知っておるのか?」

「分からない。アレの事を知っているのは、屋敷内では私と父だけだ。働いている者には誰一人教えていないのだが、何処から漏れたんだ?」


 ステイルは顎に手を当てて頭を悩ます。


「ともかく、絶対に盗まれないようにしなければならん。アレを使いこなせる者はもうおらんが、世に出回ってはいかんからな」

「アレは私の部屋の金庫に厳重に保管している。魔法耐性の高い金属で作られているから簡単には壊れんし、鍵も私が肌身離さず持っている。開けられる事はまず無いだろう」

「じゃが油断は禁物じゃ。ワシ等が必ず怪盗を捕らえる」

「よろしく頼む」


――――――――――――――――――――


 翌日の夜。

 誕生パーティーの開始が近づき、招待された貴族が集まっていく中、俺達は会場である大広間にそれぞれ配置に着いた。

 煙になったミスクと鼠に変身したビトは天井から会場を見下ろし、他の俺達は四組に分かれて四方の壁際にそれぞれ警備の兵士と共に警護に当たった。


「もうシャドーってこの屋敷に侵入してるかな?」

「恐らくもういるじゃろう。奴は変装が得意と聞く。怪しい動きをしている者がいたら注意するんじゃ」


 変装が得意って言われても、会場にいる人全員から見つけるなんて難しいぞ。

 一応、家宝がある領主の部屋へ続く廊下の入り口には兵士がいるけど、そこを堂々と通ろうとするわけ無いし、地道に怪しい人を見つけるしかないか。

 パーティー開始の時間になると、ステイルさんが会場の真ん中に現れた。


「パーティーに集まってくれた諸君。これより我が父の誕生パーティーを始める。それでは本パーティーの主役である父より、開始の挨拶を」


 ステイルさんに似た老人がやった来ると、開始の挨拶を言う。


「皆、今日は私の誕生パーティーに集まってくれてありがとう。今宵は存分に楽しんでくれ」


 会場で拍手が鳴り響くと、招待客は会場の料理を口にしたり話をし始めたりした。

 貴族のパーティーってよく分からないけど、俺達の仕事は怪盗を見つけることだ。怪しそうな人を見つけないと。


――――――――――――――――――――


「……一向に現れないな。怪盗」


 あれから一時間以上経ったが、怪しい人物を見つけたなんて報告が一切ない。

 まだ来てないのか、本当に来るのか疑ってしまう。


「全然現れないわね」

「そうだね。諦めたのならそれで良いんだけど……」


 そう思った次の瞬間、天井のシャンデリアの明かりが突然消え、大広間が暗くなった。


「何だ!?」


 会場の人達が騒ぎ出すと、耳に着けてる通話機からビトの声が聞こえた。


『皆! さっき兵士の一人がナイフを投げるのが見えた!』

「えっと、何処? 何処の兵士?」

『勇也達の近く!』

「え? 俺等の近……あ」


 周りを見渡していたら、一人の兵士が忍び足で領主のへの方角へ行くのが見え、その兵士は俺の視線に気付いたのかこっちを見た。


「お前か!」

「おっと」


 取り押さえようとすると、兵士は鎧を脱ぎ捨て壁の上に捕まる。


「お前がシャドーか!?」

「如何にも。怪盗シャドー、予告通り家宝を頂きに参上」

「待てー!」


 鳥になったビトと煙になって飛ぶミスクが向かうと、シャドーは一本の杖を取り出しかざすと、杖から緑色の光が放たれた。


「うっ! ……ん?」

(何だろう? 力が抜けた様な……)

「「うわぁぁぁ!?」」


 悲鳴が聞こえると、ビトとミスクが俺達の目の前に落ちてきた。


「大丈夫か二人共!?」

「う、うん。でも何故か急に変身が解けたんだ」

「私も」

「エレメントの力が消えたって事?」


 レインの言葉を聞いたジーリュが、シャドーの持つ杖に目を向けると目を見開く。


「あれは、封力の杖!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ